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犬神物語 〜転生少女と不思議な絆〜  作者: 犬神 匠
第八話 渡島編 前編
52/84

『白と黒の贈り物』5

先輩たちとのフェルト体験――とっても楽しかった~っ。

作ってるときは夢中だったけど、

気づけば、胸の中がぽかぽかしてて。

……わたし、ずっとこの時間が続けばいいのになぁって思ってました。


クラフト体験コーナーを出ると、

空気がすこしだけ、しっとりしていました。


モールの照明も、ほんのりオレンジがかっていて、

人の流れも、ゆるやかに“帰る時間”の雰囲気に変わってて――


……そんなとき。


「ねぇねぇ〜〜、そろそろお腹すいてない?ご飯食べて帰らない?」


って、河田亜沙美先輩の声が聞こえた瞬間――

わたしの中の何かが、カチッってスイッチ入りました。


「食べますっ!!!」

……って、勢いよく言ってしまってました。


我ながら、ちょっとびっくり。でも、もう止まりません!


みんなが「えっ?」ってわたしを見てきたけど、

わたしは拳をぎゅっと握って、正直な気持ちを叫びます。


「だって……今日、いっぱい歩きましたし、いっぱい作りましたし……

エネルギー、もうすっからかんなんです〜〜!!」


……って言ったタイミングで、

お腹が「ぐぅ〜〜っ」て鳴りました。

あ、ナイス……タイミング。


「即答すぎじゃない!?」

「美咲ちゃん、反射で返事してない!?」


「えへへっ……本能です♪」


ほんとは、ちー先輩と もうちょっと一緒にいたくて……

って、そんなことは、ここでは言いません。


ちー先輩が「ふふっ」って笑ってくれただけで、

今日も最高な一日だったなって、思えるから。


「それじゃあ、フードコート行こっか」

って、越智隆之先輩が落ち着いた声で言ってくれて、

みんなで わいわい移動。


……この時間が、もっと続けばいいなぁって。

そんなことを思いながら、わたしはお腹を優しくさすってました。


フードコートに着くと、いろんなお店から漂ってくるにおいが、

お腹に直接、語りかけてきました。


(たべろ……たべろ……ぜんぶたべろ……)


……なんて言ってないけど、わたしには聞こえました。


「ちー先輩、わたしちょっと見てきますね〜っ!」


って、わたしはトレイを手に、軽やかに出撃!


──数分後。


わたしのトレイは、

ちょっと大きめの“おぼん”じゃ収まりきらなくなってました。


ラーメン。

焼きそば。

牛丼(大盛り)。

からあげ定食(ごはんは普通)。

ポテトL。

ピザ(1/4サイズ)。

たこ焼き。

プリンアラモード、アイス×2、黒糖タピオカラテ。

あと、ヘルシーの気持ちを込めて――わかめスープ。


「美咲ちゃん、それ……何人分?」

って、河田先輩がちょっと笑ってて、


「いやいやいやいやいや!!」

って、ちー先輩はお盆を見比べて絶叫してました。


「ちー先輩は……お豆腐ハンバーグと、雑穀米と、サラダ……?」

「比べないで!?こっちは“地球にやさしい”バランスごはんなの!!」


「わたしも、バランス重視です〜♪」

「……“量のバランス”おかしいからね!?」


みんなが口々に言ってくれて――

でも、わたしの食欲は、もう止まらない。


「いっただきま〜すっ♡」


わたしは順調に食べ進めていきました。


ラーメン、焼きそば、牛丼、完了。

からあげ定食、ほぼ消滅。

プリンアラモードのフルーツ部分、いい感じに口直し。

ポテト、ラスト5本!


「ねぇ……ちょっとだけ、一口もらおっかな……」


って、ちー先輩が、わたしのたこ焼きを指さしました。


「もちろんですっ♡はい、あ〜〜んって……あっ、やっぱお皿で!」


「いやいや、なんであ〜んの流れだったの今!?///」


ちー先輩は、ちょっと赤くなりながらたこ焼きを一つ取って、

おそるおそる口に運びました。


「……う、うまっ!?なにこれ、外サク中とろっ……ずるいっ!?」


「ふふっ、あげてよかったです〜♪」


そんな わたしたちのやりとりを見ていた河田先輩が、

スプーンを持った手を止めて、静かに言いました。


「……美咲ちゃん、あんた本気で“胃袋が別次元”すぎるからね……?」


「……胃の処理速度、どうなってるんだ。物理法則を無視してる」

って、越智先輩が冷静に分析しながら、ぼそっと追加。


その言葉に続いて――

今度は、ふっと笑ってから、ちょっとだけどや顔で言い放つ声。


「そういえばさ、美咲ちゃん――この前、学食でカレーおかわりしたんですよ~って、めっちゃ嬉しそうに報告してくれたの!

あ〜、この子ほんとに食べるの好きなんだな〜って思ってたけど……

今日ので、もう確信したわ…。」


「完全なる、食のチャンピオン。うちのチームのエネルギー担当」

「……もはや兵站部隊」


「ほ、褒められてますか……それ……?」


でも、嬉しい。

みんなと一緒に食べて笑えるこの時間、ほんとに嬉しい。


だから――

つい、言ってしまいました。


「……あ、そうだ。スイーツラウンドは別腹ですので、あとで第二弾行ってきますね〜♪」


「まだ食べるのぉぉぉぉ〜〜〜〜っ!?!?!?!?!?!?」


ちー先輩がスプーンを取り落としかけて、

河田先輩と越智先輩は同時に固まってた――そのとき。


「……ねぇ、ちょっと待って……」

って、河田先輩がぽつりとつぶやいた。


「なに?このインパクト?いや……そうじゃなくて――」


「“学校で噂の爆食女王”って……まさか……っ!」


越智先輩がピクッと反応して、わたしの料理をじーっと見つめる。


「……お昼に学食で、“日替わりプレミアム5品セット(チキン南蛮・しょうが焼き・だし巻き玉子・サラダ・冷奴)+肉うどん+ミニカレー+ライス特盛+ポテト”を完食した一年生がいたって噂、知ってるか……?

しかも、プリン3個と杏仁豆腐とメロンソーダで〆たらしい……

それだけでも驚きなのに、食べ終わった直後に購買へダッシュして――

“焼きそばパン、カレーパン、コロッケパン、たまごサンド、明太フランス、チョコドーナツ、からあげ棒、フライドチキン”を抱えて戻ってきた。


それを見てた先輩が、「お前それ全部食べんのか?」って聞いたら――


『え、これはおやつですけど?』って、ニコッて笑ったらしい……


昼休み終了5分前、すべてのトレイが空になってて、

購買の店員さんが『……彼女、また来るわね』ってつぶやいたって話だ……」


「うそでしょ……都市伝説かと思ってたのに、まさか現実だったなんて……!」


「もはや学食神話だよ!? なんで一言も残していかなかったのその日っ!!」


「その正体が……美咲ちゃんだったなんて〜〜〜っ!?!?」


「え、えっ!?そんなに食べてた……でしたっけ!?

あっ、でも……甘いのとしょっぱいのって交互にいけるから、案外スイスイいけちゃって……」


「いや、スイスイって言う量じゃないよね!?!?!?!?」


「ちょっとあんた、本人が一番びっくりしてるじゃんっ!!」

って、河田先輩のツッコミ炸裂!!


「いや、でも……たしかにこのラインナップ、もはや称号持ち……」

「……胃袋の女神。もしくは伝説の満腹戦士」

「……うちのパーティーに絶対必要な回復役(カロリー的に)」


「ちょっ……そんなに持ち上げられると、ちょっと恥ずかしいです〜〜〜っ!」


……でも内心では、にやけそうなくらい、うれしかった♡


わたしは、にこっ♪


それに――

今日がこんなに楽しかったなら、

もうちょっとだけ、続けたっていいよね?


「ふふっ。これくらいじゃ終われませんからっ♡」


わたしが残りのピザ(1/4サイズ)を食べて、ちー先輩がたこ焼きを半分こして――

河田先輩がつっこんで、越智先輩が静かに呟いて。


わいわい、にぎやかなテーブルの輪の中で――

ふと、天野ヒカリ先輩の方を見た。


ちゃんと笑ってるけど、

でもなんだろう……あの目。


少しだけ、遠くを見てるみたいで。


……胸の奥が、ちょっとだけひゅってなった。


「天野先輩……スープ、冷めちゃいますよ?」


声をかけると、天野先輩は小さくうなずいて、

ふっと微笑んだ。


でもその笑顔が――

どこか、少しだけ寂しく見えたのは、気のせい……かな?


(……気のせい、だといいな)


そう思いながら、

わたしは残ってた黒糖タピオカラテをストローでくるくる混ぜた。


みんなで笑って、食べて、はしゃいで。

今日の一日、ほんとうに――


「まるで、宝箱みたいな時間でしたっ♪」


わたしはそうつぶやいて、

こっそり、ちー先輩の笑顔をずっと見つめてしまいました。


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