『命の輝き』4
「中学入学、おめでとう!」
ママが にこにこしながら、私の肩をぽんっと叩いた。
その日の夜、ちょっとした特別イベントが決定! なんと、家族みんなでお祝いのお寿司を食べに行くことに!
「今日は、おじいちゃんが来るよ。それに、みっちゃんの家族も一緒にお寿司食べに行くからね!」
「えっ、みっちゃんの家族も!?」
なんか意外でびっくり。でもちょっとワクワクする。
「そうよ。せっかくだし、みんなでお祝いしましょうってことになったの。」
みっちゃんとは幼稚園のころからずーっと仲良しで、お互いの家族同士も顔なじみだけど、こんなふうに がっつり一緒にお祝いするのは、なんか新鮮!
夜になって、みんなで近くの回転寿司へ! おじいちゃんは「中学生かぁ、大きくなったなぁ〜」って何回も言いながら、にこにこ私を見てた。
私は おじいちゃんがだ〜いすき! 小さい頃からたくさんお話してくれたり、遊んでくれたり、おじいちゃんが来ると、なんだか特別な気分になるの。
「ちーちゃん、お寿司なにが好き?」
みっちゃんが隣でお皿を取りながら聞いてくる。
「マグロかな〜。みっちゃんは?」
「私はエビ! でも今日は いっぱい食べるよ!」
「わたしも〜!」
「ぼくはたまご!」
元気に声をあげたのは、向かいに座ってた弟のさとし。小学三年生になったばっかりで、最近とにかく“食べるの大好き!”期に突入中!
「さとしくん、たまご好きなんだ?」
「うん! 甘くておいしいし、何個でもいけるよ!」
「それなら、もっともっと食べなきゃね!」
「あとね、ぼくピアノもすき! こないだ、新しい曲ひけるようになったんだ〜!」
「へぇ〜! すごいねっ!」
さとしが自慢げに胸を張ったその横で、おじいちゃんがにこにこ。
「そっか、おじいちゃん、さとしのピアノ楽しみにしてるね。」
「うんっ!」
おじいちゃんが目を細めながら微笑むと、さとしは嬉しそうに頷いた。
みんなでわいわい笑いながらお寿司を堪能! おじいちゃんが「好きなもの どんどん取っていいぞ」って言ってくれたから、私も遠慮なくマグロを2皿目!
おなかも心も ぽっかぽかで、なんだか幸せな気持ち。
こうやって、大切な人たちと笑い合える時間って、やっぱりいいなぁ……。
そんな ほっこりした余韻を胸に、私は その夜ぐっすり眠った。
***
そして次の日の放課後、みっちゃんと一緒に ちょっと寄り道することに♪
「雑貨屋さん見に行かない?」
「いいね〜!」
その雑貨屋さんには、なんと犬グッズがずら〜っと並んでて、ふたりして大興奮!
「見て、このキーホルダー、ユキに似てない!?」
みっちゃんが白いワンちゃんのキーホルダーを手に取ったの。
「ほんとだ〜! かわいい〜!」
「おそろいで買おっか?」
「うんっ、買う〜!!」
ふたりでおそろいのユキそっくりキーホルダーをお買い上げ!
「これで、いつでもユキと一緒にいる気分だね♪」
みっちゃんの言葉に、私もつい笑顔に。キーホルダーをぎゅっとにぎりしめながら、心の中で思った。
(中学生になっても、みっちゃんと私は、ずーっと一緒なんだなぁ……)
***
みっちゃんは、初めて会ったころからず〜っとサッカーが大好き!
パパがサッカー大好きで、家でもサッカーの話ばっかりだし、観戦にも連れて行ってもらってて……気づけば本人もすっかりサッカーっ子に!
休み時間も放課後も、いつもボールを蹴ってたなぁ〜。
『プロのサッカー選手になりたいんだ!』
ってキラッキラした目で言ってた みっちゃん、めっちゃかっこよかった!
私はというと——
あの日、迷子になったときに受け取ったあのボールがきっかけで、なんとな〜くテニスに興味が出てきて。
ボールを打つのって楽しいなって思って、気づいたらラケット持ってコート行くのが日課になってた♪
『ちーちゃんは、プロのテニス選手になったりするの?』
って聞かれたことがあって——
『なれるかわかんないけど……でも、テニスはすごく好き!』
って、素直にこたえたの、今でも覚えてる。
スポーツは違うけど、夢を持って、お互い応援しあって、なんだか戦友(?)みたいな感覚だったなぁ。
「ちーちゃんもサッカーやってみる?」
ある日、みっちゃんがそう言ってくれた。
「えっ、わたし? できるかな〜?」
「大丈夫! ボール蹴るだけでも楽しいから!」
おそるおそるボールを蹴ってみたら、びっくりするくらい楽しくて!
「ちーちゃん、意外とやるじゃん!」
って、みっちゃんが笑ってくれて、なんかうれしくなっちゃった。
「なんか、ボール追いかけるの楽しいかも……」
二人で何度も何度もボールを蹴って、笑って、転んで、また笑って——そんな時間が宝物だった。
「またやろうね!」
「うん!」
そのとき みっちゃんが言ったんだ。
『ちーちゃんのテニスの試合、応援しに行くからね!』
「ほんとに!? めっちゃうれしいっ!!」
うれしすぎて、顔が勝手にニッコニコ! みっちゃんの言葉のおかげで、
「よーし、絶対勝つぞー!」って気合も爆上がり!
そして迎えた試合当日——
「ちーちゃん、がんばれー!!」
みっちゃんの声が聞こえた瞬間、背中にパワーがびびびっと走った。
試合に勝てたのは、あの声のおかげだって、今でも思ってる。
「みっちゃんが応援してくれたから、頑張れたよ!」
「当然でしょ! ちーちゃんは絶対勝つって思ってたもん!」
夢中で笑って、全力で走って、ただただ楽しかったあの頃。
……でも、そんな毎日が、少しずつ変わっていくなんて、思いもしなかった。
——あの時までは。




