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『闇を裂く絆』1

前回までのあらすじ(第3話)〜語り手:犬神愛衣より〜



日向高等学校・2年生のクラスに、ある日突然あらわれた――

銀髪の転校生、天野ヒカリさん。


穏やかな笑みの奥に、どこか近寄りがたい“神秘”をまとった彼女に、

チハルちゃんは少しずつ惹かれていきます。

ふたりの間に生まれたのは、意外な共通点と、ふわりとした“気配”のようなもの。


そんなある日――チハルちゃんは、人の言葉を話す白い犬、シロと出会います。

彼は突然、彼女にこう告げました。


「お前には、試練を乗り越える使命がある」


その瞬間から、チハルちゃんの中で、なにかが音を立てて動き始めたのです。

しっぽが、ぶん……と震えるほどの、運命のはじまり。


そして――ヒカリさんと手を取り合った瞬間に走った、胸の奥のざわめき。

それはきっと、これから待ち受ける“試練”の、ほんの入り口だったのです。


でも……

その意味を、チハルちゃんはまだ知りません。


さぁ――ここから先、彼女を導くのは、“想い”と“記憶”と、そして……試練。

静かに、でも確かに、物語の歯車は回りはじめています。

朝の通学路を歩いてるとき、ふと通学カバンを見下ろしたら、

ポケットのところで、ユキちゃんが ちょこんと揺れてた。

(……今日も一緒だね、みっちゃん)


チャームの横で揺れてる、小さな白い犬のキーホルダー。

その姿に、胸がふわっとあたたかくなる。


「……おはよう、ユキちゃん♪」

思わず、小声でそう呟いちゃった。


中学生の頃、みっちゃんとおそろいで買った、あの思い出の子。

なんとなく、持ってると落ち着くんだよね……。


カバンをぎゅっと握りしめて、私は坂道を登り続けた。


(よーしっ! 今日も気合入れて駆け上がるぞーっ♪)


私はくるっと勢いよく回ってから、元気いっぱいにダッシュ!

お気に入りの朝が、今日も始まる――そんな気がした。


日向高等学校は山の麓にある高台に建っていて、通学するにはこの急な坂道を登らなきゃいけないの。確かに、町を一望できる絶景スポットだけど……正直、毎朝その景色を楽しむ余裕なんてゼロっ!


(ふぅっ……これくらい、なんとかなるっ!)


後ろのほうでは、すでにハァハァ言ってる生徒たちの声が聞こえる。でも私は爽やかにゴールイン!


校門をくぐると、白くてキラキラした校舎が青空に映えていて、その隣には……ちょっと怖~い雰囲気を放つ旧校舎がひっそりと佇んでた。


「旧校舎か……な、なんか出そうな感じよね……。」


思わず肩がビクッとなる。いやいや、怖がってないもん!ただの古い建物だしっ!……って、自分に言い聞かせる。


まるでホラー映画の主人公になったみたいで、ちょっとドキドキ。


ふとスマホをポケットから取り出して、昨日の夕方、日向公園の展望台で撮った写真を開くと——


シロの写真がばっちり写ってた。その一枚を見た瞬間、

昨日の衝撃がぶわ〜っと蘇る!


シロが喋った!? あり得ない、でも確かに聞いた! あの声、あの台詞……!


『犬神千陽……フッ、まだ貴様は気づいていないのか。我は常に貴様のそばにいたのだ。』


「……っ!!?」


わたし、思わず息をのんじゃった。


あれは……本当に夢? 幻? いやいやいや、普通のワンちゃんが喋るとか……ないよね!?


「いやいやいや、やっぱり夢だったんじゃ……でも、ヒカリも普通に受け入れてたし……」


気になってつい、スマホの検索バーに指を置く。


【検索:犬 喋る】(ポチッ)


──結果。


「あなたのワンちゃんもおしゃべりできる!? 話せるペットアプリ!」

「犬と会話する方法! しっぽの動きを理解しよう!」

「もしも犬が喋ったら?」(オカルト系サイト)


(いや、そうじゃないのよぉぉ!!!)


スマホ閉じて、ぶんぶん頭を振る。


もう、気にしない気にしないっ! たまたまそう聞こえただけ! そうに違いない!


私は深呼吸して、なんとか平常心を取り戻した。


ちょうどそのとき、後ろから元気いっぱいな声が届いてきた。


「犬神先輩、おはようございます!」


振り向くと、美咲ちゃんがぴょこっと走ってきて、元気に手を振ってた。その隣には、いつも凛として上品な玲奈先輩っ!


「美咲ちゃん、玲奈先輩、おはようございますっ! 」


私も笑顔で手をひらひら振り返した。


「おはようございます、犬神さん。」


玲奈先輩は相変わらず優雅で落ち着いた笑顔。うぅ、見習いたい……!


「今日も朝から元気いっぱいだねっ、美咲~♪」


って軽く笑いながら言うと、玲奈先輩が肩をすくめてくすっと微笑む。


美咲は慌てたようにほっぺを赤らめて、


「えへへ、嬉しくてつい元気が出ちゃいました!」


ってぴょこっと頭を下げた。


「ふふ、大丈夫だよ。美咲の元気で、私までパワーもらえたしっ☆」


わたしの言葉に、美咲はまたにっこり! 朝の日差しがキラキラしてて、三人の周りだけふわっとあったかい空気が流れてた。


──と、そのとき


「そうだ、犬神先輩! 最近、学校の七不思議の話がすごいことになってて……しかも、犬神神社でも“白い影”の目撃情報が出てるらしいんですよ!」


「白い影?」


「はいっ! 夜の神社で、何か白いのが動き回ってるって……! ぜ、絶対これ幽霊じゃないですか!?」


私はちょっとだけ真剣な表情になって考え込む。


「幽霊……ね。でも実はさ、ゲンキと散歩してたとき、後ろから誰かに見られてる気がして……それに……神社で白い影も、見たような気が……」


その話を聞いた玲奈先輩が、すっと落ち着いた声で話し出す。


「美咲の言っていることも、あながち冗談ではありませんわね。最近、七不思議の噂が妙に現実味を帯びてきておりますし、神社での目撃談も増えているようですわ。」


そして、さらりと髪をかき上げながら続ける玲奈先輩。


「七不思議のひとつに、“夜の旧校舎で誰もいないのに足音が響く”というものがございます。実際に聞いた生徒もいたようで……そのとき、誰かに見られているような気配がしたとか。ふふ、怖いですわね。」


美咲が「ひぃっ……」と肩をすくめるのを見て、私はちょっと苦笑い。


「そして犬神神社の件も……ただの噂では片づけられないのかもしれません。何人か、夜の境内で“音”を聞いたと言っておりますわ。」


(う〜ん……お父さんが管理してる神社で、変な噂が広まるのってやっぱり気になるなぁ……)


私は腕を組んで、むむむっと考え込む。


(よし、学校が終わったら、ちょっと様子を見に行ってみよっかな。)


そして教室に入ると、すでに何人かのクラスメイトが席に着いてた。元気な挨拶が飛び交ってて、いつもの朝の教室って感じ。


「チハル! さっきの話、めっちゃ気になるんだけど! 神社の幽霊のこと、絶対何かあるでしょ!?」


亜沙美がババッと駆け寄ってきて、テンション高めに話しかけてきた。


「そんなに怖がるなよ。幽霊がいるって確定したわけじゃないし、ただの噂かもしれないだろ?」


っと、淡々とした声が後ろから。


隆之だった。腕を組んで、いつものクールな感じで話してくる。


「とはいえ、あまり軽視するのも良くないな。こういった怪談には、何かしらの“元”がある。錯覚か、心理的な作用か、それとも実際の異変か……いずれにせよ、慎重に調べる必要があるな。」


……はい、隆之、相変わらず理屈っぽいな〜!

って、ちょっと笑いながら思っちゃった。

でも、そこが面白いんだけどねっ。

なんだか、ちょっと楽しくなってきたかも!


「もう〜! 隆之はなんでも理屈で片づけようとするんだから! こういうのは、直感でビビッと楽しむものなのっ!」


亜沙美がムキになって言い返すと、隆之がちょっとだけ驚いた顔に。


「楽しむ……? 怖がってたのに?」


「こ、怖がってなんかないしーっ!」


私は、クスっと思わず笑っちゃった。二人とも本当仲良しなんだから〜。


「まぁまぁ、二人とも。落ち着いて落ち着いて! 私もちょっと気になってるし、今日放課後、神社に行ってみるつもりだよ〜。」


「……チハル、ほんとに大丈夫? 変なことになったらすぐ知らせてよねっ!」


「ふむ……慎重にな。俺は遠慮しておくが、報告は頼む。」


二人の言葉に、ちょっとほっこりしながら私はうなずいた。


私はチラッと窓際を見る。


そこにはヒカリがいて、静かに外を見つめていた。私の視線に気づいたのか、ふっとやさしく微笑んでくれた。


「犬神神社……きっと、何か意味があるのかもしれないわね。」


その言葉には、不思議な響きがあった。うん、やっぱり気になる——。


「そういえば、チハル。今度、常盤町に行くって言ってたよな?」


隆之がふと話題チェンジ。


「え? なんで知ってるの!?」


「……亜沙美から聞いた。」


「そうなんだ〜、情報早いなぁ〜……。うん、動物愛護センターに行こうと思ってるの。保護された犬や猫たちがどんなふうに暮らしてるのか見てみたくって。あと、今の自分にできること、少しでも見つけたいなって思って……。」


ちょっとだけ照れくさくなって、私は目線をそらした。


「でも、そのあとに……ちょっと寄りたい場所があるんだ。」


その場所がどんなところか、すぐには言い出せなくて、少し言葉に詰まった。

でも、すぐに気を取り直して、話すタイミングを待つことにした。


そのとき――

教室に、社会科担当で担任の白石先生が入ってきて、

みんなの注目が前に集まった。


「みんな、来週の防災訓練、ちゃんと参加するように。実は100年前、この神媛県かひめけんの地域で大きな災害があったんだが、日向町だけは無傷だったという記録がある。過去に油断せず、真剣に取り組むように。」


教室がざわつき始めた。


「なんか不思議だよね〜」

「ほんとにそんな記録あるのかな?」


私は白石先生の言葉を胸に留めながら、静かに考えた。

(……日向町だけ無傷?)

その言葉が、胸の奥でポツンと浮かんで、じわじわ広がっていく感じ。

まるで、何か特別な力でも働いていたかのように感じた。

こんなにのどかで、のんびりした町なのに――本当に、そんな大きな災害があったの?

それとも、奇跡みたいな偶然? それとも……。


それともう一つ気になることが…犬神神社での白い影の噂のことだ。

うわさ話を聞いた時から、ずーっと、胸のどこかに小さく刺さったまま。

「あの影、何だったんだろう…?」

考えるたび、ちょっとゾクッとする。でも同時に、気になって気になって仕方ない。

怖いような、でもどこか不思議で、何か重要なことが隠されている気がした。

考えれば考えるほど、もやもやが晴れなくて……つい、小さくため息。


でもね、それでも。

きっと、その答えを見つけなきゃいけない。ううん、見つけたいって、私の中の“何か”が言ってる気がするんだ。


(犬神神社、やっぱり何かある——)


そう思ったら、胸の奥がきゅっとなる。

不安とワクワクが入り混じってて、自分でもよくわかんないけど……でも、逃げたくない。

ううん、逃げたくないっていうか、逃げたら絶対後悔しちゃうって、そんな気がした。


そして私は決めた。


放課後、ゲンキと一緒に犬神神社へ行ってみようっ!

……ちょっと怖い。でも、だからこそ行かなきゃ!

強がってるつもりなんかないけど、内心はドキドキで手のひらがじんわり汗ばんでる。

でも、いいんだ。怖がっても、進まなきゃ何も変わらない。

少し怖い気持ちがあったけど、でも楽しみな気持ちのほうが勝ってる。

きっと何か大事なことを見つけられるはずだし、そうだよ、怖がっても何も始まらないんだから!

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