『交わる記憶、覚醒の契り』3
家に帰ると、玄関まで迎えにきたゲンキが元気よく尻尾を振ってた!
「ただいま、ゲンキっ!」
「ワンっ!」って一声鳴いたゲンキは、私の足元をぐるぐると回って大歓迎モード! くすぐったくなるくらいの嬉しさに、思わず笑いながらしゃがみこんで、ゲンキの頭をなでなで。
「ちょっと待ってね~、お散歩行く前に、ちょこっとだけお部屋で作業してくるから!」
ゲンキは「え~」って顔でちょこんと座り込んだ。お利口さん!
私は自分の部屋に戻って、机の上のノートパソコンをパカッと開いた。
画面には、今まさに編集中の動画ファイル!
「さてさて、どこまでやってたっけ…?」
クリックしながら前のデータをチェックしてたら、ふと思い出しちゃった。あの冬の日のこと——。
高校に入る前、日向町に引っ越してきて、環境に慣れるのが大変だった春。そんな私に、両親がサプライズでプレゼントしてくれたのが、このパソコン!
「千陽、前からパソコンに興味あったでしょ?これでいろいろ挑戦してたらどう?」って、ママがにっこり笑って言ったんだ。
もう嬉しすぎて、思わずピョンピョン跳ねたくなっちゃった。
私はそれから、すぐにパソコンの使い方を調べ始めて、気がつけば健康系の動画を作ってみたいな~って気持ちになってた。
食べ物のこととか、ストレッチとか、睡眠のこととか、もともと大好きだったから、それを誰かの役に立てられたらいいなって♪
最初のうちは、スマホで簡単に撮ってたけど——。
「う~ん……字幕、ここで出すのがいいかな? でもちょっと早すぎ?」
そんな感じで、編集ってめっちゃむずかしいっ。って思いながら、何度もやり直しして、やっとできた一本目……!
投稿しても、全然再生数伸びなかったし、コメントもゼロ…。
「うぅ…やっぱり動画作りって、甘くないなぁ…」
だけど、やめたくなかった。
誰か一人にでも伝わったら、それだけで嬉しいから!
「ふぅ…あの頃に比べたら、私も少しは成長したかも♪」
画面に映る新しい編集動画を見つめながら、ちょっとだけ自分を褒めてみたりして!
「よーし、もうちょい手直ししたら、ゲンキとお散歩だっ!」
ゲンキはドアの前でお座りして、しっぽパタパタ。かわいすぎ~!
夕焼けが空をぽわっとオレンジ色に染めるころ、私はゲンキを連れてお散歩に出発っ!
「さぁゲンキ、今日はちょっとだけ遠出しよっか!」
「ワンっ!」
今日の目的地は、ちょっと足を伸ばして天照寺!
静かで風も気持ちよくって、鳥のさえずりがチュンチュン♪
ゲンキもごきげんで歩きながら、ときどき私の方を振り返って、しっぽフリフリ~!
お寺の境内に入ると、縁側でおしゃべりしてるおなじみの三人組が!
「おや、千陽ちゃんじゃないか」
にっこり手を振ってくれたのは新居田さん! お手製の野菜いっぱい入った袋を手にして、いつもの優しい笑顔!
「こんばんは、新居田さん!」
「おやおや、今日も元気そうじゃな~」
隣には、大泉住職(和尚さん)と、サッカーと歴史大好きな森本さん! 三人とも湯飲み片手にまったりトーク中っぽい。
「何のお話してるんですか~?」
ってウキウキで近づくと、森本さんがぐいっと身を乗り出してきて——
「いやな、犬神神社で幽霊を見たって噂が出てるんだよ」
「えぇっ!? 幽霊!?」
もう、びっくりしすぎて飛び上がりそうになった!
大泉さんが「まぁまぁ、落ち着きなされ」と言いながら、静かにお茶をすすりつつ説明してくれた。
「夜中に神社の前を通った人が、白い影を見たと言っておってな」
「し、白い影って……え、えぇ~!? 本当に幽霊だったりして…?」
私がじりっと前のめりになったら、新居田さんが「光の加減じゃろ~」って、顎に手をあてて考え中。
「でも、犬神神社は昔から不思議な話が多いからな~」って、森本さんがニヤリ!
「や、やだな~……こわい話って、聞いたら気になっちゃうんですよぉ……」
(でも……そういえば私も、昨日の夜、白い影を見たような……?)
ゾクッ……。
「う、うぅぅ~やっぱり夜の神社って怖いかも……」
「おいおい、千陽ちゃんまで信じるんじゃないよ~?」って森本さんが笑ってくるけど、私、思わずむくれちゃった!
「ち、違いますよ! でも……やっぱりちょっと気になるんですっ!」
そんな風に盛り上がってたら——
「幽霊じゃなくて、ただの勘違いじゃない?」
えっ?
振り向くと、そこにはヒカリが静かに立っていた!
「ヒカリっ!」
「こんばんは、犬神さん」
「え、ヒカリもここに来るの?」
「うん。私、ここのお寺に住ませてもらってるの」
「えええーっ!? お寺に!? 住んでるの!?」
「うん、大泉住職にお世話になってるの」
って話してたら、ヒカリの足元に……ふわっと白い影……!?
「ワン」
「シローっ!」
ゲンキがピクッとして、身構えたかと思ったら、シロが落ち着いた様子で尻尾をフリリ。
私が「大丈夫だよ、ゲンキ。シロと挨拶してみよっか?」ってリードをゆるめると、ゲンキはそろ~りとシロの方へ。
「……ワン」
「クゥン」
鼻をちょんっと近づけて、ふたりともなんだか納得したように並んで座ってる! わぁ、すっかり仲良しモード!?
「ふふっ、なんだかすぐに仲良くなれそうだね」
ヒカリがやさしく微笑んだ。
そんなふたりの様子を見ながら、私も思い出した! 昼休みに話したこと!
「ねぇヒカリっ、そうだっ!またあの展望台に行ってみない?」
「展望台?」
ヒカリがちょこんと首をかしげて、私は顔ぱぁっと輝かせちゃった。
「うんっ、この前ふたりで会った、日向公園の展望台!
あそこ、本当に好きな場所なんだ~。
ゲンキとも何度も行ってて……
この前ヒカリとあそこで会ったときのこと、なんかずっと心に残っててさ」
ちょっと照れくさいけど、でもちゃんと伝えたかった。
「今日の空もきっと、きれいだと思うんだ。だから……また一緒に、行けたらいいなって♪」
ヒカリはふわっと目を細めて、それから——
「うん。いいね。また行ってみよう」
って、やさしくうなずいてくれた。
やったぁ~っ! 次の展望台デート(?)決定っ!!