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楽しんだもん勝ち

「見てください! センパイ、マンボウですよ! マンボウ!」


 神宮寺の視線の先には大きな水槽の中を単独で泳ぐマンボウがいた。


 イルカとかペンギンで騒げよ。


「知ってるか。マンボウって泳ぐの下手なのにどっかにぶつかったら死んじまうんだって。見ろ。水槽の内側に網が張ってんだろ。あれでマンボウが水槽にぶつかるのを防いでんだよ」

「ほえー。なんか可哀想ですねー」


 ボケーっとマンボウを眺めながら神宮寺は呟く。


「可哀想といえば学校でのセンパイ……」

「お前はいちいち俺をディスらないと気が済まないのか。心が貧しい証拠だぞー。かわいそ」

「……」


 神宮寺は珍しく言い返してこなかった。もしかすると俺を嘘に付き合わせている分、少し遠慮気味になっているのかもしれない。


 それはそれで、やりずらい。


「センパイ! 見てください! ペンギンですよ!」


 今度はペンギンのいるところまでやってきた。ペンギンやマンボウに限らず、神宮寺は水族館にいる生物をみるたびに叫んでいる。


「そうだな。久々見た」


 ガラスの向こう側にいるペンギンは陸の上でボケーっとしていたり水の中に飛び込んですいすい泳いでいる。


「私ペンギン初めて見ます」

「学校の遠足とかで見なかったのか? ほら、遠足って動物園とか水族館とか行くだろ?」

「……私行ったことないんですよね。昨日言ったでしょ? 家のことがバレて学校に馴染めなかったって。その影響でイベントごととかにはあんまり参加してこなかったんですよ」


 昨日そんな話は聞いてたけど、まさかそこまでとはな。今の神宮寺からは想像できない。


「パパとかママとかとは行かなかったのかよ」

「パパは忙しい人でしたし、ママは私が子どもの頃に死んじゃいました。だからこういうとこくるのも初めてで。そのおかげかセンパイと一緒なのにめっちゃワクワクしてます」


 満面の笑みで神宮寺はそう語る。

 家のことで小中と孤独な学生生活を過ごし、親にもかまってもらえない。そんな生活を変えたくて高校で容姿に友達付き合いに色々努力したのかもしれない、と感心したが最後の一言で吹き飛んだ。


「センパイ! サメです! ジンベイザメ!」


 相も変わらず神宮寺は騒ぎ出す。

 俺たちは遂にこの水族館の目玉のジンベイザメのところまでやってきた。こいつを見たらその先は出口。こいつとのデートもようやく終わる。


「私、ジンベイザメが一番好きかもです! でかくて強そうだから!」

「小学生かよ」


 神宮寺はスマホ片手に水槽の中のジンベイザメに向かってパシャパシャシャッターをきる。


 なんでそんなに写真を撮るのかね。別に見返さないだろうに。


「どうだ? 今日は楽しめたか?」

「はい! めっちゃ楽しかったです! 初めての水族館! でも楽しむのに集中しすぎてデートっぽくできなかったです。また芝山に疑われるかも」

「大丈夫じゃね? 手とか繋がなくてもいちゃつかなくても、男女で楽しんでりゃ、カップルっぽくなってんだろ」


 こうして俺たちの水族館デートは終わった。

 そのまま水族館を出ようとしたが神宮寺がトイレにいきたいと言い出し、そのまま帰っても良かったが俺は待ってやることにした。


 そのときふと、お土産コーナーが目に入った。

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