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約束を破った数だけ信用がなくなる

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 目を開けると真っ白な天井が見えた。意識が鮮明になっていくたびに、何が起こったのか記憶が流れ込んでくる。


「センパイ! 良かった!」


 俺は今ベッドの上。その横には神宮寺がいた。

 そうだ。寄りにもよってこいつにあの事件のことがバレたんだ。


「さっきはほんとごめんなさい……あとセンパイの昔の話聞いてませんから」

「え?」

「なんですかその反応?」


 神宮寺は不機嫌そうに眉をひそめた。


「いや、お前のことだから俺の弱みを掴んで、ここぞとばかりに攻めてくるかと」

「どんだけ私を低く見積もってるんですか。まあ…センパイは嫌いですけど誰にもでも知られたくないことはありますから」


 そういや芝山から俺を守ろうとしてくれてたっけ?

 たぶん俺をここで休めるように手配してくれたのも神宮寺だ。

 ……もしかして神宮寺って良いやつ?


「あとセンパイにそこまで興味ないです」


 訂正。良いやつだけどムカつくやつ。でも礼は言っとくか。


「ありがとな。色々助かった」

「私こそです。なんだか私たちこのまま仲良くなれそうですね」

「お前とは絶対無理」


 出会ってからずっと顔を合わせたら喧嘩ばかり。少し良いとこが見えたぐらいでそれは変わらない。


「うーわ。そこは嘘でも肯定しなきゃですよ。だからモテないんですって」

「カレシもできたことないファッションビッチには言われたくねぇよ」

「ファッションビッチってなんですか! 私はビリっとくるような恋がしたいんです! 今はそういう人に出会えてないだけで…とにかく私はつくらないだけ。センパイはつくれない。この差がわかります?」

「何がビリっとくるような恋だよ。恋愛できない言い訳にしか聞こえねぇ。お前みたいな拗らせたやつが大学生になって変に焦ってマッチングアプリ入れて、変な男と出会ってすぐ捨てられんだよ」

「センパイこそ、SNSで自分よりスペック低い人を見て俺は大丈夫だって言い続ける人生が待ってますよ?」


 ほら見ろ。もう喧嘩してる。よくある仲の良さを診断するやつの逆があるなら百点取れる自信がある。

 俺らはきっといがみ合う運命なんだ。だから__


「んじゃ約束通り。明日からは俺に関わんなよ。じゃあな……お父さん長生きするといいな」

「…はい…ありがとうございます」


 こんな具合で俺は神宮寺と別れた。

 最後の別れだ。もうこいつと話すこともない。そう思ってだが……次の日。


 授業を終えて放課後、いつもと同じように相川と勉強していると俺たちの教室の扉が勢いよく開かれた。

 現れたのは神宮寺。彼女は俺の手を掴むと、そのまま校舎裏まで連れて行かれた。


「おい! 昨日約束したよな? 俺に関わらないって」


 勉強の邪魔をされ、約束も破られ、イライラしていた俺は神宮寺を怒鳴る。

 すると神宮寺は一枚の紙切れを差し出した。水族館のチケットだ。


「センパイ! マジでお願いします! 明日私と水族館に行ってください!」


 はぁ?


 あまりに突拍子もない発言に俺の頭の中は真っ白になる。


「芝山のこと覚えてます?」


 忘れるわけない。あいつは嫌い。俺の目の前のやつよりはマシだけど。


「あいつ、あれから私たちのことを調べたらしくて……」

「嘘ついたのバレたのか?」

「いえ。でもセンパイとの仲がサイアクなのはバレて芝山にめちゃくちゃ疑われてます」


 ちっ! あの野郎ほんとめんどくさいな。あ! こいつの考えがわかったぞ。


「ふーん。だから、デートでもして恋人だってアピールしたいわけね」

「……はい。このチケット昨日パパがくれたんです。カレシと楽しんできなって。もちろん最初は行くつもりなんてありませんでした。センパイとのデートなんて死んでもヤなんで」


 男としてダメなのはわかってるけど、この女マジでぶん殴ろうかな。


「でもそれを芝山が聞きつけたみたいで、たぶん明日監視しにきます」

「なるほど。嘘をつき通すにはデートするしかなくなったわけだ。まあ、俺はいかねぇけど」

「そこをなんとか! お願いしますよ! センパイどうせヒマでしょ?」


 神宮寺は手をパンっと手を合わせて頼み込んでくる。


 暇なやつに一番言っちゃいけないこと言ったな。

 よし決めた。死んでも行かない。


「嫌だ。俺にメリットねぇし」

「じゃ…じゃあ、私にできることならなんでもしますからお願いしますよ」

「お前にはなにされても嬉しくねぇよ。話は終わりだよな? 俺はもう戻るぜ」


 それだけ言って俺は踵を返した。


 冷たいと思われるかもしれないが昨日神宮寺に協力したのが異常だっただけで、これが通常運転。

 勘違いされないようにもう一度だけ言っておくが、俺はこの世に生きとし生ける生物の中でこの女が一番嫌いだ。

 そんなやつがどうなろうが知ったこっちゃない。


「お願いですよ……恩返しなんかにはならないかもですけど、パパを安心させたいんですよ……」


 神宮寺は力なく言った。表情は沈んでいて、いつも彼女が纏っている明るいオーラも感じられない。


 だからなんだってんだよ。

 なんでこいつが勝手についた嘘の尻拭いを俺がしなきゃいけねぇんだ。

 …………ああ! もう! 

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