余計なお世Wi-Fi
——芝山視点——
最近お嬢様の様子がおかしい。
毎朝早起きをしてメイクしたり、髪をセットしたりしているし、運動神経がよくないのにダンスを始めた。
問い詰めても「キモイ。しね」と返され、取り付く島もない。
他にもおかしな点はある。
とにかくため息が多い。今日は十七回、昨日は十五回、一昨日は十二回。それはまるで恋をしている乙女のようだった。
少し前に幸島幸斗と付き合っていたが、あれは親父さんを安心させるための偽装カップルだった。
当然だ。お嬢様があのようなクズを好きになるわけがない。
ということは幸島以外に想いを寄せている相手がいるということ。
もちろん俺はそのことをお嬢様に尋ねた。すると「大嫌いな人ならいるよ。目の前にね」と言われた。
全く、お嬢様は素直じゃない。嫌よ嫌よも好きのうち。俺はわかってますよ。
親父さんの遺言でお嬢様を家業に関わらせるなと言われている。
俺が組を継いだ状態でお嬢様と結ばれたら、家業に関わらせることになってしまい、親父さんの遺言を破ることになってしまう。
しかし神宮寺組を引っ張っていけるのは俺しかしない。それに親父さんには身寄りのない俺を育ててくれた恩がある。
俺は決心した。組を継いでお嬢様との未来を諦めると。
その代わりお嬢様と結ばれる相手は俺以上に彼女を愛し、彼女を幸せにできる人物でなければならない。
だからお嬢様の警護のために同じ学校に通わせている笹原にお嬢様の想い人を探らせた。
「幸島幸斗。お嬢が好きなのはあいつで間違いないです」
それが笹原からの報告だった。
「……何かの間違いだ。あいつとの関係は偽装カップルだったはず」
「それがマジになっちまったんでしょう」
まさか。ありえない。
俺はもちろんお嬢様に聞いてみる。
「べ、べつに! そんなんじゃないし! バカ! 芝山のバカ!」
お嬢様は顔を真っ赤にして答えた。幼い頃からずっとお嬢様を見てきた。だがこんなお嬢様は初めてだ。
本当だというのか? お嬢様が、よりにもよってあいつなんかを好きだなんて。
「お嬢様! 考え直してください! あいつは四年前に——」
「うるさい!」
そう叫んでお嬢様は俺の胸倉を掴んだ。
「過去なんてどうだっていい! 私は今のあの人が大好きなの! それにセンパイ…その話を知られたくなさそうだった。だから絶対聞かない! 次私の前でその話をしたら絶対許さないから!」
お嬢様は声を荒げて俺を睨む。ここまで怒っている彼女をみ見るのも初めてだった。
……だからといって黙って見過ごすわけにはいかない。あの男は世紀の大悪党、お嬢様は騙されているのだ。
お嬢様の幸せのために幸島幸斗を排除する。
例え俺が彼女に嫌われようとも。




