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ため息

「はあ……」


 今日何回目だろう。ため息が出る。

 センパイに噂が収まるまでは校内で極力近づくなと言われてしまった。


 ……サイアク。マジでやってらんない。


 あとセンパイのことでクラスのみんなに質問攻めにされたのも疲れた。なにが嫌かってセンパイと付き合ってるというのは嘘だと言うことだ。


 そりゃ付き合ってないけど、なんか辛い。

 ていうか髪巻いたのみんな気づいてくれたんですけど。メイクだって女の子には気づいてもらったし、男の子にだって今日すごい可愛いねって言われた。


 それなのになんであの人は気づいてくれないの! 全部センパイのためにやってんのに意味ないじゃん! バカ……


「はあ……」


 またため息。ほんとにやってらんない。


「落ちこんでんねぇ。愛名」

「元気出して」


 そう話しかけてくれるのはエリと鏡花。私の親友。この子たち大好き。

「ありがと。激萎えだよー。近づくな言われるわ、早起きして頑張ったのに可愛いの一つも言ってくれないわで」

「まあ、しゃーないよ。噂が収まったらまた頑張ったらいいじゃん」

「可愛いって言ってくれないのしかたない。幸パイ、そういうこと言うイメージない」


 ムッ……たしかに。期待しすぎちゃったか。


「そうそう。内心ドッキドキだったかもよ」

「うん! そう思うことにする! でも噂が収まったらなんて悠長なこと言ってられないんだよぉ!」


 私は二人ににっくき相川凜のことを話した。


「え? 噓でしょ? 相川センパイも幸パイのこと好きなの?」


 エリが意外そうに言う。


「うん。あの感じは間違いない」

「やっぱり。相川先輩、すごい厄介なライバル」


 エリとは反対に鏡花は納得した様子だった。


「そうなんだよ! どうしたらいいんだろ……」

「うーん。幸パイの好きなタイプとか聞いてないの?」


 好きなタイプか……まさか相川凜! いやいやいや…なんか言ってた気がする……あ!


「そういえばセンパイ、頑張ってる人がカッコイイって言ってた」

「頑張ってる人か~。ひねくれてそうな割に案外普通だね~」


 ひねくれてそうにって言葉にムカッときてエリをじとーっと睨む。


「ごめんって! 頑張ってる人ね! 部活とか入ってみたら?」


 あはははっと笑いながら謝ってエリはそう提案してくる。この子はちょいちょいセンパイに失礼だ。全く。


「部活かー。あんま興味あるのなかったんだよね」


 最初は部活で友達作ろうと思ってたんだけど、結局入んなかったんだよね。でもセンパイを振り向かせるためなら、アリかも。


「ならこれどう?」


 そう言って鏡花が取り出したのは一枚のチラシだった。内容は体育祭の催しでダンスを踊る女子を募集するというもの。


 私運動神経悪いんだけど大丈夫かな?


◇◇◇◆◇◇◇


 というわけで放課後、ダンスメンバーの受付をしている三年二組の教室に向かった。


 今頃センパイは相川凜と……あーあ! 考えない! 考えない!


 だいたい今までずっと放課後二人で勉強してきて関係が進展してないんだから絶対大丈夫!

 そう自分に言い聞かせる。

 ダンスメンバーにエントリーする女子は案外多かった。二~三十人はいる。


「人多い」

「ねー。緊張しちゃうわ」


 なんとエリと鏡花がついてきてくれた。この子たちマジでいい子。


「二人とも知らないの? 体育祭のダンスは毎年レベル高い。それ目的でうちにくる子も多い」


 鏡花がそう説明してくれる。


 へー。そうだったんだ。全然知らなかった。私大丈夫かな?


 今日はエントリーだけで、本格的な練習は明日からということらしい。


 センパイに振り向いてもらうためだ。気合入れて頑張ろう。 

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