頑張っても報われないときだってある
——神宮寺視点——
センパイはマジで冷たい。メッセージを送っても返事はまあ返ってこない。酷いときは文章の最後に?をつけてメッセージを送ったのに既読スルー。
でもその分返事がきたときの幸せがハンパナイ。
ギャンブルでもやってる気分だ。全く。
今日は早起きしてビジュにめちゃくちゃ気合を入れてきた。髪にはちょっとウェーブを入れてみた。校則違反だからあんまり大きな声では言えないけど、軽くメイクもしている。
センパイが可愛いって思ってくれたらいいな。えへへ。
「愛名! くっついたんなら報告してよ!」
教室に入るなり、エリが突然そう言ってきた。
くっついた? なんの話?
私が首を傾げるとエリが新聞を渡してくる。これはうちの学校の新聞部が発行している校内新聞だ。
広げてみると一面に『犬猿の仲の二人、禁断の恋』と見出しが出ていて、その下に私とセンパイのツーショットが貼りだされていた。
は? え?
◇◇◇◆◇◇◇
あれからすぐにセンパイから校舎裏にこいという連絡があった。
告白ならよかったけど、もちろんそういうわけもなく、例の新聞の件だ。
「どういうことだよ。これ」
「たぶんこの前一緒に帰ったときに写真を撮られたんだと思います」
「ちっ。抗議にいくぞ。こんなフェイクニュース流されたら困る」
センパイはいつになく不機嫌だった。目つきもいつもより悪い。
「別にいいんじゃないですか。このままで」
うん。このままでいい。
ていうかこのままがいい。
このままほんとになってくれ。
「いいわけねぇだろ。お前の親衛隊がえげつない眼光で睨んでくるし、女子たちからは俺がなんか弱みを握ってお前をいいようにしてるって噂されるし、相川はなんか素っ気なくなるし、ろくでもねぇ」
え? 待て待て。最後のは聞き捨てならないぞ。相川凜が素っ気なくなるののどこか問題なんだ。その分私が……
「大丈夫ですって。ほら、人の噂も九十五日っていうでしょ? ほっときましょうよ」
「七十五日だ。バカタレ。なんでお前まんざらでもない感じなんだよ」
「べ、別に! 嫌ですよ! 死んでも嫌です! センパイと付き合うぐらいならそこら辺の雑草さんとかと付き合ったほうがマシです!」
ねぇなにいってんの私! 雑草と付き合うって何! 私はセンパイじゃないとダメ! ダメなのにぃ!
「俺だって嫌だわ! お前と付き合うぐらいならアリとかと付き合ったほうがマシだわぁ!」
「センパイなんかアリにだって相手されませんよ!」
「んなことないわ。砂糖いっぱい持ってアプローチしてやるわ。そんで糖分デートにこぎつけてやるわ。お前こそ雑草にも相手されないんじゃねぇの?」
「そんなことないですけど。毎日健気に水やってアプローチしてやりますけど。雑草さん植木鉢に入れて一緒にデートとかしちゃいますけど」
ケンカになってしまった。私のバカ。
でもセンパイはもっとバカ。髪もメイクも気合入れたのに、気づいてくれない!
たぶん、それで頭に血が上っていたのが、ケンカしちゃった原因。
ちなみにその後新聞部に抗議にいったけど、取り合ってもらえなかった。
 




