エンドロール
見事UFOキャッチャーでクマのぬいぐみをゲットした俺たちはゲームセンターの二階に向かった。
二階はコインゲームがメインで隅のほうに音ゲーやカードゲーム、レースゲームなどのメジャーなものがあった。
コインゲームなんてやってれば日が暮れそうなので、隅に追いやれられているゲームたちで時間を潰すことにした。
相川が目を付けたのはレースゲーム。ゲーム内で車を操作して用意されたコースをどっちが速く走るか競う対戦ゲームだ。
さっきのUFOキャッチャーで相川には借りがあるからな、ここで俺のゲームの腕を見せてやりたいところだ。
「相川、このゲームやったことあんのか?」
「ないわ。初めてよ」
よし! 勝った!
俺はこのゲーム経験者。小学校の頃はゲーセンでよくやったもんだ。
初心者相手に負けるわけがない。
それで勝って嬉しいのかって言うやつもいるだろうから断言しよう。嬉しい。だって勝ちは勝ちだから。
「ボコボコにしてやるぜ」
「お手柔らかに」
こうしてレースは始まったんだが………………普通に負けた。
え? なんで? ほんとになんで?
「私の勝ちね。幸島君もしかしてゲーム弱い?」
グサッ。
俺の胸に何かが刺さる音がした。
「いや、これはウォーミングアップみたいなもんだから。ほら、ラジオ体操みたいなもんだよ。もっかい。もっかいやろう」
「いいわよ」
というわけでもう一勝負が始まった。
………………また負けた。
「もう一回やる?」
子どもをあやすみたいな声で相川が聞いてくる。
「……やる!」
そんでまた負けた……
「ねぇ、私、十秒待ってからスタートしましょうか?」
「やめろ! 手加減だけはやめろ! もういいよ。お前とは絶対ゲームしねぇ」
「拗ねないで。今度は幸島君の得意なのやらない?」
これが得意なのだったんだけどな……まあいい。いつまで拗ねてたってしかたねぇ。遠慮なく確実に勝てるゲームを選んでやる。
というわけで俺が選んだのはバスケットのシュートゲーム。
ルールは簡単。ボールをバスケゴールに入れて得点を競うゲームだ。
「これで負けても拗ねないでよ」
「拗ねるかよ」
こうしてシュートゲームが始まった。結果は……もう言いたくない。
もう絶対相川とはゲーセンにいかない。
◇◇◇◆◇◇◇
「幸島君、勝負ごとになったら案外面倒くさいのね」
映画が始まる前の、他の映画の予告集を見ながら相川が言う。
俺たちは余裕を持って映画館に入った。まだ上の照明がついていて彼女の顔がはっきり見えるほど明るい。
「もうお前とはゲーセンいかねぇ」
「まだ言ってるの?」
相川は呆れたように言う。
「それにしてもバスケットのシュートゲームで負けたとき、よくもう一回って駄々こねなかったわね」
「嫌いなんだよ。映画始まってからぞろぞろ映画館に入ってくるやつ。そういう奴らになりたくないから早めに切り上げたの」
「なんか幸島君らしい」
そう言って彼女は上品に微笑む。
なんだよ俺らしいって。
「てか、初めてだな。相川と学校以外で会うの」
「……そうね。私、焦ってるんだと思う」
「なんの話?」
「……さあね。私もよくわからない」
上の照明が切れて真っ暗になる。映画が始まる合図だ。
相川の言ってることは気になるけど、今は映画に集中しよう。
それから二時間ぐらいで映画は終わった。周りがざわつき始める。映画の感想で一喜一憂しているのだろう。
内容は青春もので映像はアニメーション。それなりに山場があって感動できるところもある。劇的に面白いわけじゃないが、万人受けするシンプルな内容で面白かった。というのが俺の感想だ。
「エンドロールって苦手なのよね」
映画が終わって相川が一番初めに口にしたのは感想ではなく、それだった。
「全部終わったんだって寂しい気持ちになる」
「相川ってそんなこと思うんだ」
「思うわよ。失礼ね」
「ごめんって。でも寂しがる必要はないじゃねぇの。映画を見た思い出は一生残るんだから」
そうこう会話しているうちにエンドロールが終わって映画館の照明がつく。
「素敵な考えね」
「受け売りだけどな。じゃあそろそろ帰るか」
「待って! その、幸島君は忘れっぽいから、思い出はちゃんと残しておきましょう」
頬を朱色に染めて相川はスマホを取り出す。
たぶん写真を撮ろうってことだ。失礼なこと言っといてなんで照れてんだよ。
「わかった。一枚だけな」
俺たちは肩を寄せ合いピースサインでツーショット。相川は友達。友達だけど……ツーショットはちょっと照れる。
「写真はあとで送っておくわ。これで一生ものね」
相川はにかっと笑った。いつもの上品な笑顔よりもその表情は輝いて見えた。
更新遅くなって申し訳ないです
ちょっと忙しくなってきて前みたいに毎日更新はできなくなると思いますが、一週間に一、二回は更新できるように頑張るのでよろしくお願いします
 




