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夢で目が覚めてからはなかなか眠れない

——幸島視点——


 気がつくと俺は見渡す限り真っ黒な空間にいた。

 俺の正面には一人の女が佇んでいる。真っ白のワンピースを着ていて、この黒い空間ではよく目立つが顔にはモヤがかかっていた。


「久しぶりだね」


 そう言って女は俺に近づいてくる。

 胸に何かが詰まっているみたいに息ができなくなり、俺はその場に膝をついた。


「な、なんでお前が。死んだはずだろ?」


 今にもはじけ飛びそうなぐらい心臓の音が速くなる。


「うん。そうだよ。君のせいでね」


 女は俺にグッと顔を近づけた。


「君は最近楽しそうだね。後輩ちゃんに相川ちゃん、君はどっちに気があるのかな? でもそんなことが許されると思ってるの? 私たちの命を奪っておいて」


 その声と同時に俺の真横に男が現れる。女と同様に顔にはモヤがかかっていた。


「ひっ!」


 首あたりから寒気がして身体がブルブルと震える。


 そんな俺に男は言い放った。


「その通りだ。お前は苦しんで生きなきゃいけない。俺たちの人生を奪った報いを受けろ」

「違う。俺は……」


 男の言葉を否定しようとすると今度は小学生ぐらいの男の子が音もたてずに現れた。二人と同様顔はわからない。


「違わないよ! 罪を償ってよ!」


 男の子の叫び声が嫌に頭に響く。すると誰かが俺の両肩に手を置いた。振り返ると、そこには今まででてきた人物同様顔のわからない女がいた。


「そうよ。あなたは苦しまなきゃいけない。そのために生きてるの。私たちは見てるからね。ずっと……ずっと……」

「ああああああああああ!」


 気がつくとそこは俺の家だった。どうやら夢を見ていたらしい。夏でもないのに身体は汗でびっしょりだ。

 俺は身体を起こして白石先生に処方してもらった薬を飲む。


 最近あんな夢ばかり見る。ろくに眠れない。


 ふとスマホを見ると、相川からメッセージが来ていた。


 『知り合いに映画のチケットをもらったんだけど、幸島君一緒に行かない?』


 相川が俺を遊びに誘うなんて珍しい。

 映画か。気分転換になりそう。

 行く、と返事して再びベッドに寝転がる。目を閉じてみたが結局この日は眠れなかった。


◇◇◇◆◇◇◇


 休日の真昼間に俺は家を出た。

 五分ほど電車に揺られて、辿り着いたのはショッピングモールや飲食店が集まる近所で一番栄えている場所。

 今日はここで相川と映画を見る予定だ。


 駅を出て相川と待ち合わせをしているビルに向かう。そこは若者向けのファッショングッズ関連の店が多く入ってるビルで待ち合わせスポットとして有名な場所だ。


 栄えているだけあってここはとにかく人が多い。若者からお年寄りまで年齢に偏りはなく、外国人っぽい人までいる。


 嫌々人混みにもまれて俺はようやく相川との待ち合わせ場所に辿り着いた。相川がいるか辺りを見渡すと、俺に向かって手を振る彼女を見つけた。


 紫のトップスに薄っすらと白い線が入った黒のロングスカート。肩には黒いカバンをかけている。長い髪をお団子にしていてレンズが丸い眼鏡をかけていた。相川の私服初めて見たな。


 俺は相川のもとに向かった。


「悪い。待ったか?」

「とてもね。帰ろうと思った」

「マジごめん! めちゃくちゃ混んでてさ!」


 そんな待たせたか? 三分ぐらいしか約束の時間過ぎてないけど。


 そう思っていると相川はクスクス笑い始めた。


「冗談よ。私も今来たとこ」


 なんだよ。怒らせたかと思ったじゃねぇか。


「映画が始まるまでまだ時間があるんだけど、どうする?」

「どっかで時間潰そうぜ」

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