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2−35 王城での教育(5)

 3週間を空けての王城での婚約者候補教育だが、

アンジェラとグレースからの微妙なプレッシャーが怖い。

淑女なら上手く隠して欲しい。


 丁度王国の魔法教育の歴史を教えられた。

東北方向の国々から山を越えてガリレア地方と言う未開地に

流れて来た人々がテーマ川流域に大小の都市国家を作って行き、

その中でより西側に支配地を広げていった国々を纏めていった国の末裔が

旧エセックス王国であり、

セブン川とテーマ川の間の土地を抑えてその勢力は揺るがなくなった。

その北部地方の王家直轄領での魔法兵育成法が今の魔法院による魔法開発、

その成果を教育機関にて広げるというスタイルの原型となった。

他の中小王国の魔法教育は師弟制度的な秘密主義のところがあり、

魔法兵を増やすことが難しかった。

そもそも経済力に差がある旧エセックス王国と

魔法戦力の数も差が付いてしまっては対抗しようがなくなり、

現エセックス王国建国の背景の一つだった。

ただし、昨今は魔法院に就職する人のレベルが停滞気味で、

それが魔法の発展を阻害しており、

魔法院の成果が上がらなければそこに就職する意味も減り、

更に魔法院に集まる人のレベルが下がっていた。

魔法院としては魔法学院の教育改革により全体のレベルを上げて

魔法院に入る人間のレベルを上げれば良いと考えている様だが。

いずれが卵か鶏かの話ではある。


 教育の合間にエリカが話かけてくる。

「サマセット領で足止めされたんだって?

 どうしたの?」

「王国騎士団の派遣部隊と現地部隊はどうか分かりませんが、

 私は少し体調を崩しそうになったので、

 護衛の騎士と魔法院の上司に監禁されたんですよ。」

「地方に行ったら体調は気にしないと駄目でしょ?

 王都ほど治療師が居ないんだから。」

ああ、この何気に気を使ってくれるお姉さんは本当にいい人だ。

思わず両手で彼女の手を掴んでしまう。

「お気遣い頂きありがとうございます。

 女扱いして貰えるだけで大感激です。」

「いや、あんた喜ぶレベルが低すぎ…」

ここで黒い影が近づく。アンジェラとグレースだ。

どう見ても何か嫌なものが噴出している。

堪らずエリカの影に隠れるエレノーラ。

「仲が良さそうで何よりね。

 混ぜて貰える?」

「ちょっと、エレノーラ!

 私を盾にしないでよ!」

「いえ、私はまだサマセット領で崩した体調が戻ってなくて…」

「聞こえているなら良いわ。

 サマセット領で体調を崩す様な事があったのね?

 良ければ何があったか聞かせてくれる?」

声の微妙な低さが言葉に威圧感を与える。

さすがにアンジェラの圧力はものが違う。

本気で怖い…

ここで声が聞こえてくる。王太后だ。

「アンジェラさん、グレースさん。

 サマセット領の事は王命で黙ってもらっています。

 だから詮索は無用ですよ。」

「はい。わかりました。」

アンジェラとグレースは言葉を揃えるが、

去り際に一言残していく。

「どこの貴族もサマセット領の討伐の話は聞きたい様よ。

 茶会に呼ばれても何も飲まない事ね。

 何が入っているか分からないから。」

(それ、自分が盛る気あったって意味だよね!?)

エレノーラにはそう思えたが、エリカも同様だった。

(一服盛るとか荒事は男に任せてよ!

 なんであんたが盛る気満々なのよ!)

と二人で手を握りあいながらガタガタ震えていた。

茶会で一服盛るならそれは女主人の指示で行われる。

アンジェラやグレースはもう成人扱いだから

貴族の女としてそういう覚悟は出来ているとも言えるが、

王妃になるつもりならとっくに覚悟は出来ていないと

いけないものだった。

つまり、エリカもエレノーラも王妃になる覚悟など全くなかったのだ。


 ちなみに、エレノーラがサマセット領から

スタンリー家のタウンハウスに戻った時、

祖母のマチルダのかけた言葉は以下だった。

「話は聞いてるよ。大変だったね。」

エレノーラは聞き返した。

「話は何も聞くな、って話を聞いているんだね?」

「もちろんさ。まあ、無事で帰ってきたんだからそれで充分だよ。」

そういう訳でスタンリー家に対してさえ秘密は明かされなかった。

知らなければ尋問も拷問も意味がないから、

スタンリー家の人間を守るにはそれが最適だった。

 寄親の娘に迫られると困りますね。

しかも公爵閣下の意向で詰問されてると想像できるだけに。

エレノーラが守秘を言い渡されたのは総長にだから、

王の意向で守備義務があると言いにくい。

まあ、そこは当然王太后は気にしてた訳ですが。

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