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2−34 王子とのお茶会

 魔法院での聞き取りが一段落した頃、

アーサーからお茶会の招待状が届いた。

ちなみに、今回の件を受けて、学院の寮は引き払う事になった。

夜間の護衛が問題視されたのである。

だからお偉いさん扱いは辛いと…

言ってももうどうしようもないのは分っている。

タウンハウス敷地内の馬の散歩道の外周を走って

足腰を鍛えられる様になる、と前向きに捉える事にする。


「お帰り。大変だったね、と軽く言っては悪いのだけど。」

「最後以外は数をこなしただけですけどね。」

アーサーと王太后はエレノーラと接するだけに

上級魔獣討伐について情報は与えられていた。

だからアーサーはどう接するかを迷っていたのだが、

内容はある程度聞いたほうが良いか、とアーサーは思っていた。

「コヴェントリー伯爵領もサマセット侯爵領も

 大きな群れが出来ていたらしいけど、

 現地では戦力が不足していたんだろうか?」

「通常戦力は充分なのでしょうが、魔法戦力が少ない様です。

 スタンリー領も充分ではないんですが。」

「魔法戦力が足りないから大きい群れは討伐が出来なくなると?」

「損害を気にしなければ少し大きい群れが出来た段階で攻めれば良いのですが…」

「人の命が関わるからね。」

「大きい群れが出来るとそれはそれで人命に関わりますが。」

「伯爵領なら兎も角、侯爵領なら充分魔法戦力を揃えていると思うけどね…」

「戦争に備えるなら火魔法師を増やしますが、

 山林の魔獣を狩るとなると使い勝手が悪いのでしょうね。」

「僕も役に立たない訳か…」

「どちらにせよ王子様を前線に出す訳には行きませんよ。」

「それにしても、王国成立から250年、

 危機はあってもなんとか乗り越えて来たけれど、

 こうも各地で魔獣が増えるのは理由があるのだろうか。」

「40年程前に呪文を変えて魔法戦力を増やした筈ですよね。

 その後の魔獣増減の歴史を見てみないと何とも言えませんね。」

「少なくともここ数年は魔法教育の形骸化が心配されていたけれど、

 その影響があるかもしれないね。」

「それでも、貴族なら家庭教師がある程度の教育をしてきた筈です。

 それが出来ない平民層では、そもそも魔力が不足気味ですから、

 影響はそれほどでも無いと思われますが…」

「でもその僅かな数の積み重ねで改善出来たかもしれないよね。」

「それを言うなら貴族の中でもより能力を伸ばす事も重視していれば

 改善出来たでしょうね。」

「やはり、魔法学院の教育は改革が必要になるね。

 君に負担がかかっている状態も改善が必要だしね。」

「私は良いんですが、生徒が生徒を教えるのが嫌な人もいますので、

 やはり教師を増やして欲しいですね。」

アーサーとしては何を言いたいのかは分かった。

キャサリンの友人が魔法の授業中に苦虫を噛み殺した顔をしているのは

見えているのだ。

「苦労をかけるね。」

「私は良いんですが、相手が嫌だと思うんです。」

「言いたくても言えない事は誰にもあるけど、

 相談があるなら聞くからね。」

「ありがとうございます。」


 干し果実を沢山入れたケーキを食べる。

程よい甘さが二人の口に合った。

「君は王城の春は初めてだよね。

 暖かくなったら庭園の花を見に行こうよ。

 温室なら虫がいないからお茶もゆっくり飲めるから。」

エレノーラはふふふ、と笑う。

「令嬢みたいですね。」

「本人はどう思っているか知らないけれど、

 立派なご令嬢に見えるよ。」

「ありがとうございます。」


「シンシア・ラッセル嬢の事は上手くいって良かったけど、

 何か問題はなかった?」

これには苦笑いが出てしまった。

ラッセル家がシンシアには口外を禁じなかったのは聞いているんだ。

「あの方はとても素直な方なので、

 中々結果が出なかったのは悪かったのですが、

 それ以外は問題ありませんでしたよ。」

「まあ裏事情を言うと、

 魔法に問題がなければ彼女も婚約者候補に入っていたかもしれないんだ。」

「公爵家のご令嬢で年齢は一つ下ですからね。

 その方が良かったですか?」

「勿論、今の方が良いと思っているよ。」

ああ、言い方が悪かったかな、とアーサーは後悔した。

エレノーラの興味はそっちにはなかった。

つい言い返してみただけだ。女ですもの。

「噂では各家が教会と距離を取っている様なんですが、

 大丈夫なんでしょうか?」

「多少寄付の額が増減しただけで、

 全く縁を切っている訳ではないから、

 お互いの振る舞い次第だと思うよ。」

「成る程。」

お互い妙な反発をしなければこの距離を維持出来る訳だ。

エレノーラとしては本件はラッセル家も王家も

教会の意図をどう判断しているかを聞きたかったが、

自分は今でも教会とは危険な距離だと思っているので

下手な情報を得ようとするのは気が引けるのも確かだった。


 こうして、3週間は間を開けていた二人だったが、

上級魔獣討伐と関係なく元の距離を保っていた。

 真面目な話は出来るけど、

個人的な話題は弱いアーサー。

この辺りの弱気がお姉様方に不評なのでしょうね。

あと、本作の時代設定は15世紀以前相当(異世界ですが)なので、

生クリームのケーキはありません。

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