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1−9 魔法実技と乗馬の授業

魔法実技の授業は憂鬱だった。

2人の教師で50人を見れるものではなかった。

だから、特定の貴族の近くから彼等は動かない。

「お上手ですよ。」

「お見事です。」

と褒めるだけで指導など全くしていなかった。

金のある貴族、発現力のある貴族のご機嫌取りをして、

できれば後日その伝手で美味しい事でもあれば、

と期待しているのだろう。

少なくともご機嫌を損ねるのは避けたいだろうし。


魔法実技で苦労しているのは、

数少ない平民と、貧乏貴族だけだった。

嘲笑う視線が向けられる。

他人の事に気を配る暇があるのかとも思うし、

よく飽きないものだとも思う。


「ふふっ、また失敗している。」

「初歩の初歩なんて失敗し様がないのにね。」


ウォーターボールの決壊は二分の一の割合で起きる。

しかも、発生した水を投射する前に整形しようとするから、

詠唱が間延びする。

それも笑われる。

これは秘策があって、試験の時までに自主練習でモノにしようと思っている。

ウォーターシールドが困っている。

1分保たせないといけないのが、

だいたい10秒から30秒で決壊する。

只、他の水魔法を使う生徒達はウォーターボールも滑らかに投射するが、

ウォーターシールドも綺麗な円形を形作っている。

回転させてもいないのによく綺麗な円形になるものだ、

と感心する。

これは本当に自分が劣っているのだから笑われてもしょうがない。

しかし、気になるのは下位貴族達が早めに練習を終わらせている事だ。

概ね30分で止めてしまう。

隅の長椅子に座る人々を見ると、

魔法の連続使用によるオーバーヒートの症状が出ている人はいない。


エレノーラは水魔法師だから、

水の温度も敏感に感じ取る事ができる。

治癒魔法も呪文なしに自分には使用できるが、

他人に対しては当然呪文を使用しないと効果がほとんど無い筈だ。

だが、魔法感受性は他人より高かった。

だから、50ftも離れていない彼等の後頭部の魔法機関の発熱の有無位分かる。

安全率を考えてその位の時間に休む事にしているのだろうか。

教師が休息を勧めている様子は無いのだが...


エレノーラはもちろん時間一杯に練習をする。

上手く出来ないから当然だし、

魔法実技のある日は自主練習が禁じられているからだ。

すでに休憩に入っている人達に嘲笑われながら。



魔法実技の後の授業は乗馬。

この授業は問題だった。

そもそも、地元の領地騎士団の見習い騎士達に乗馬の訓練はなかった。

伯爵家は末娘に馬を与える余裕がなかった。

学院の乗馬の授業に使う馬は、昨年卒業した次兄の馬である。

長兄と一つ違いの次兄には、

良い馬を買い与える余裕が伯爵家にはなかった。

だから、能力はともかく温和な馬を購入した、

筈だった。

学院の馬丁が言うには、

次兄の馬の扱いは最低だった。

慣れる為に馬屋に来ることはなかったし、

授業の後はいつも馬が興奮していたとの事だった。


(私も家族と触れ合う事がほとんど無かったけど、

あの人もあまり人懐っこくはなかったからね。

馬に気を使う人じゃないだろうね。)


とは言え、大分神経質になってしまった馬を自分に慣れさせるのは難しく、

まだ道半ばだった。

馬術の授業のない日は馬屋に顔を出しスキンシップをするが、

馬に舐められてもいけない。

関係構築中だった。


だから、週に一回は馬から振り落とされる。

(こんな時こそ強化魔法で!)

体を丸めて頭を打たない様に着地し、

肩から腕、腰から足を強化し、

回転受け身で立ち上がる。


剣では勝てない下級貴族達が無様に落ちる様をあざ笑うが、

見る人が見れば違う見方になる。


「上手く立つな?」

デビット・マナーズ侯爵子息である。

対するポール・サマーズ公爵子息は

「強化だな。」

明らかに彼女の普段の体力を上回る立ち上がり方は、

強化魔法としか考えられない。

「普段は使ってないよな?」

「剣の授業中はな。」

体力的にはエレノーラを上回る2人に、

そして他の剣の巧者達にも、

エレノーラは強化魔法は使っていないと思われた。

彼女の体格なりの剣の振りしかしていなかったからだ。

(絶対負けられない)

2人の少年達は心に誓った。

エレノーラは、体力に勝る少年達に、

剣の技術だけで勝つつもりなのだろう。

それが騎士としての誇りなら、自分達も負けられなかった。


「しかし、あれを2組にしていていいのか?」

強化魔法を巧みに使うエレノーラである、

やがて他の魔法でも頭角を表すのが予想される。

「大人の事情だからな。」

毎年、1組は上位貴族だけで満員にはならなかった。

そこに下位貴族や騎士爵、裕福な商人の子供が割り込むのには、

当然色々なモノが使われる。

第一王子が入学する今年、上位貴族のエレノーラが弾かれる程、

多くの実弾が飛び交ったのだろう。

それはともかく、乗馬の教官は騎士団から派遣されている。

当然、エレノーラの強化魔法は学院外部に知られてしまう。

いつ不当な扱いがバレるのか、は少年達には分からないし、

彼等に累が及ぶ訳でもなかったから、

二人はこの件をすぐに忘れてしまった。


展開が遅くて申し訳ありません。

少しでも早くなる様に、

2エピソードを1話に纏めてみました。

前半と後半で別の話で違和感あるかもしれませんが、

文字数はこの位が普通なので良いかな、とやってみました。

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