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2−25 侯爵領での討伐(2)

 30連発の死体を埋める暇は無かった。

迎撃陣地の前の死体を2体だけ残して埋める。

この死体の匂いに引かれてここまで来るなら迎撃し、

来ないなら埋めて撤退する。

ここで時間をかける事は出来なかった。

明日は明日でもう一つの大群を攻める予定があるのだ。

人使いが荒過ぎる。

というかこんな大群がいくつも出来る前に自分達で何とかしろ。

田舎伯爵の騎士団にも劣るぞ。


 とりあえず堅焼きパンの配給があったので食べる。

こちらは完全な行軍用保存食だ。本当に固い。

馬に乗って体力を消耗した人間が少なからずいるから

腹に何か入れる必要があったのだ。

大きな魔獣が迫っている中で下手に煙を立てられないので、

飲み物は冷たい水だ。

続いて簡単な戦闘計画を立てる。

ランディーの支援で私が戦う事になる。

「例の途中の死体に近づいた様だ。

 足が止まっている。

 大猪なら突進力も顔の前面の硬さも桁違いだ。

 お前のアイスランスでも押し戻すだけで頭蓋骨は砕けないだろう。」

「石頭にも程がありますね…」

「そこが中級でも上位とされる所以だ。

 足元を泥濘ませて突進力を奪いたいが、

 その後に凍らせようにも毛皮の防御力が桁違いだ。

 火魔法も跳ね返すから、

 直接油をかけて着火するのが一つの手だが、

 誰が近づくかという問題がある。」

「普通に決死の仕事ですね。

 誰もやりたがらないし、命令してもいけない事案です。」

「上位貴族なら命令するだろうがな。」

「させる訳にはいきません。」

「真面目だな。」

「見習い騎士とは言え、

 先輩にそんな事をさせる程、意地がない訳ではないです。」

「意地ではどうにもならない事がある。

 理を持って立ち向かわないなら、

 必ず死ぬが敵も道連れにする策の方がましだ。

 結果として魔獣を倒せるのだからな。」

「…」

それはそうだ。

必要な結果なら、必要な代償を払わないといけない。

とは言え、今は私は魔法院の魔導師なのだし、

通常の騎士では使えない方法も使える筈だ。

知恵と知識を使う時なのだ。

「大猪とは限らん。

 魔鹿の場合も考えられる。

 こちらは牡鹿の場合は大きな角が武器でもあり、

 拘束される弱点とも言える。

 何なら氷を前面からぶつけて、

 その氷を伸ばして角を囲ってしまう策もある。

 動きを止めれば腹部への打撃が有効だ。

 大猪程の防御力はない。」

「はい…」

なんか角で氷を弾き飛ばされるイメージがあるんだけど、

気の所為?

「魔鹿は高く跳ねる事があるが、

 大猪は逆にそんな高さはない。

 足が短く胴が太く重いからな。

 大猪の場合はお前なら土魔法で長めの溝を掘っておけば

 突進は止められる。

 今の黒狼用の溝も活かせるが、

 土魔法師にもう少し遠い箇所にも掘るよう指示して来る。」

と言ってランディーは侯爵領の魔法兵に依頼しに行った。

大猪の場合は足が短い。ストロークが短い以上、

急激な方向転換や跳ねるのは難しい。

正面からの攻撃はある程度当たると思われる。

でも魔鹿の場合はストロークも長く可動範囲も大きい。

正面からの攻撃も避ける可能性がある。

であれば、機動が取れない状況での攻撃が良い筈。

つまり、跳ねて空中にいる間に見えない方向からの攻撃だ。

溝を通過する為に跳ねた直後に上からアイスランスで叩く。

その場合、充分な質量・速度がないと体勢が崩せず、

溝に落として着地に失敗して足にダメージを与える事が出来ない。

タイミングも難しい…

むしろ、着地点を狙って片方だけ穴を掘った方が容易に

足へのダメージを与えられる気がする。


 土魔法師が穴を掘り始めた後に、

魔獣に動きがあった。

現場にいるランディー達に走り寄り注意する。

「ランディー様、魔獣が動き始めました!」

「分かってる。穴を掘る時間はある。」

というが、土魔法師達の掘る幅のない溝を見ていると

不安になる。

既に掘ってある溝と今掘りつつある溝を風魔法で飛び越え、

もっと遠くに幅も深さもある溝をさっさと掘ってしまう。

土魔法師達が何か言いたげだが、

そちらはそちらの仕事を進めて欲しい。

ランディーから指示が出る。

「お前は柵の向こう側で迎撃準備だ。

 俺もすぐ行く。」

「はい。」

ランディーの指示で土魔法師達は溝を掘り続ける。

大分魔獣が近づいて来た。

魔法を使う人間達を敵と認識しているんだ。

「撤収しろ!」

ランディーと土魔法師達が柵のこちら側に急いでやって来る。

その時、視界に現れたのは、

牡鹿だった。

行数は多めだった筈なのに文字数が少なかった…


鹿は草食ですが、

魔獣化した段階で雑食化したと考えて下さい。

より大きくならないと生存競争に負ける為、

肉を食べる様になったと思われます。


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