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2−24 侯爵領での討伐(1)

 ほぼ予定時間に侯爵領の町に到着した。

こんな田舎町に宿屋などなく、

私は町に一軒しかない商家に泊まる事になった。

そういう客向けにいつも部屋を提供しているとの事で、

湯浴みをする事が出来た。

今日は騎士らしく汗を随分かいたので有り難い。

それでも女騎士を除く王都から来た騎士達は天幕の中で汗を拭くだけしか出来ない。

誠に申し訳ない。

因みに女騎士達は私の後に湯浴みをするそうだ。

「護衛のお陰で役得です。」

と言ってくれるが、

そもそも伯爵令嬢如きが王国騎士団の護衛を受けるのがおかしいのだ。

しかも下っ端らしくこき使われている魔法師ときている。

誠に申し訳ない、と口では言えない。

護衛対象が護衛相手に何らかの不平不満を口に出せば

彼女達の評価に影響する。

はあ、早く下っ端らしい扱いに戻りたい。


 翌日、早朝に隣町から侯爵家の指揮官がやって来た。

今日の予定はここから侯爵家の部隊が駐留する村まで移動し、

そこを発して2つの黒狼の群れを殲滅後、

やはり大群の討伐を午後に行うとの事。

侯爵領で大群になるまで放置してるって問題じゃないだろうか。

ここと逆側の最果て伯爵領でも大群になる前になんとかするぞ。

まあ時々対応しきれず領主が亡くなったりするが。

基本は田舎者でも意地で何とかしているのだ。

という気持ちは胸にしまっておく。

顔に出さないのはこの半年の王太后の教育で身についているし。


 馬車で部隊駐留地まで移動する。

昨日は馬での戦闘があっただけに長閑な気がする。

村で見た侯爵領の部隊は立派なものだった。

侯爵の軍旗まで各部隊が掲げている。

スタンリー領地騎士団ではそんな事はしない。

基本は魔獣討伐部隊であるから、

敵味方の識別は不要であり、武威を見せつける必要もない。

何より山間部を進む場合に軍旗は邪魔だ。

そこはかとない不安を感じてしまう。

顔には出さないが。


 黒狼の小群は問題なかった。

ランディーと私で処理出来るからだ。

大群に向かう前に昼食を取る。

出てきたパンが柔らかいし、スープの具も多めだった。

コップの中のスープの波紋が私の不安を表す。

そりゃあ待遇が良い方が良いが、

部隊の機動力という点でどうだろう。

輜重部隊にかかる負担がどこかにしわ寄せしなければ良いが。


 黒狼の大群は長大に設けられた柵である程度移動を制限されていた。

それでも優れたリーダーが率いている群れらしく、

80頭に達しているとの事。

作戦は昨日と同じである。

但し、誘引部隊は侯爵領の部隊が担当する。

ランディーと私がいる内に何としても壊滅させたいから、

迎撃地点で確実に殲滅してもらいたいのだ。

だが、誘引に失敗した。群れが戻ってしまったのだ。

協議をするまでもない。

昨日と同様、私のアイスランスで巣穴に少なからずダメージを

与える必要があるのだ。

風下側の柵の外側を馬で進む。

ところが、柵のこちら側に黒狼らしき魔獣を感じる。

柵が壊された場所があるらしい。

その黒狼は斥候だったらしく、遠吠えが聞こえ、

その場所から黒狼が次々と柵を越えて来る。

仕方がない。私が土魔法で溝を掘る。

ここで減らした後、ウォーターフォールで道を塞いで

逃げる事にする。

ランディーと二人でアイスランスを30連発した後、

ウォーターフォールを障害として残して騎乗し逃げる。

馬と狼では狼の方が森林地帯の移動は有利だ、

ウォーターフォールを迂回した黒狼が追いかけてくる。

ここで遠吠えが聞こえる。

増援を呼んで少数の敵(私達の事だ)を殲滅するつもりだ。

作戦意図には沿っているが、

何分この森林地帯を迎撃予定地点まで逃げないといけない。

先行する騎士に続いて馬を走らせる。

こちらには土地勘がないんだ。

迎撃地点で先行する騎士は陣地の前の柵の通り道へ進むが、

「そちらへ!」

と私達には横の通り道を示す。

ここで私達の後ろを走っていた騎士が私達を追い抜き、

「こちらです!」

と導いてくれる。

つまり陣地の前は通りにくいが、

横は出入りし易いのである。

乗馬が下手くそな私に配慮してくれたのだ。

ごめんなさーい!

私達は横から陣地になだれ込むが、

結局黒狼もその横の通路の前に集まってしまった。

扉は閉めたので通れないが、

こちらは構造上、槍でも魔法でも攻撃しづらくなっていた。

うん、私の所為なんだから何とかしよう。

とりあえず櫓に急いで上り、視界を確保する。

後は黒狼の上空にアイスランスを作って落とすだけだ。

上空からの攻撃に黒狼は逃げ惑うが、

見えてもいるし魔力の検知も詳細に出来る距離だ。

最後まで誘導すれば外し様がない。

逃げ出した黒狼の跡には、32頭の死体が転がっていた。

先程のアイスランス30連発も含めると

20頭前後が生き残っている事になる。

馬で前進して掃討する事になった。


 ところが、統率力のあるリーダーが生き残っているらしい。

巣穴を捨てて逃げてしまった。

群れを再建されると厄介だが、深追いは危険である。

いわゆる後の先、

逃げる相手を追ってくる敵を迎撃する地点に

誘い込まれる可能性がある。

奥地ならそういう地点があっても人間は知らない。


 しかし、それどころじゃなかった。

例の30連発の犠牲となった死体を放置してあったのだ。

その匂いに釣られて魔獣生息領域から何か強い魔獣が

こちらに向かって来ていた。

「ランディー様、1時半の方向、大きい魔獣が来ます!」

「感じないぞ!」

「1マイル先です!

 黒狼の死体の血の匂いに寄ってきているんです!」

「相手は早いか?」

「黒狼並に速く移動しています。」

「魔力は強いんだな?」

「はい。」

そんな速度を出せる強い魔獣なら、

大猪か魔鹿の可能性があった。


サブタイトルの付け方がおかしいかもしれない。

ただ、ここで少し話が変わるよ、

と示したかったんです。

単に討伐場所が変わっただけですが。


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