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2−23 冬の魔獣討伐(2)

 早朝、伯爵領の部隊の補充が来るのを待つ。

昨日使い物にならなくなった者たちの補充だ。

長引く様なら戦争症と呼ばれる物だ。

私達の所為と思われているかもしれないが、

死ぬよりは良いだろう、としか言えない。

侯爵領側の連絡員はもう来ていた。

昨日の夜に侯爵家への連絡に行った者の交代に来たのだ。

本日の討伐後、予定通り侯爵領内の町に入る様に、との依頼を持ってきた。

昨日充分な戦果を上げたのだから、

今日の戦果に係らず明日は侯爵領の討伐をしろとのお達しだ。

ところが予定だと伯爵領内の黒狼の2つの群れを殲滅した後に

本来の魔獣生息領域から人間領域に入っている大群を減らすのが

今日の戦闘計画なのだ。

その大群の頭数が分からないのに時間が来たら帰還しろという事になる。

そもそもあまりに数が多い場合、撤退も難しいのだが。

伯爵領の部隊は一応、野戦築城の計画を立てている。

そこに群れを誘引する必要があるのだが…

「下馬戦闘の後、馬で後退する。

 お前に合わせてやるから無理をするな。」

ランディーと私は誘引の為の先行部隊に含まれるのだ。

「大丈夫です。落馬時に強化魔法で受け身を取るのは慣れてます。」

「だから落馬しない様に無理をするなと言っているんだ。」

借り物の馬での戦闘機動である。

2年になってから乗馬の授業を受けていないのを心配されている。

ランディーは厳しい様でこういう風に無理はさせないところがある。


 午前の2つの群れの殲滅は問題なかった。

60頭以下の群れならアイスランス連発でほぼ問題ない。

黒狼の死体を埋めた後、

最後の群れに向かう前に早い昼食を取る。

支給されたのは固いパンとお湯だった。

冬だけにお湯だけでも貰えるとほっとする。


 野戦築城の現場では空堀と柵の設置が終わっていた。

傾斜地を利用して、魔法師の攻撃は柵の上から出来る様になっている。

但し、群れから2マイル以上離れている。

ここまで上手く誘引出来るのだろうか。

この陣地までは馬車で移動して来たが、少しの休憩後に馬で移動を始める。

接近を気づかれない様に風下を回って移動し、

営巣地より高地の攻撃地点移動する。

巣穴からは200ft程しか離れていない場所から攻撃する予定だが、

気づかれないか冷や冷やものだ。

逆にアイスランスの飛距離としてはギリギリ届くかどうかの距離だ。

ランディーが飛距離を連絡したのだろうか?

普通の魔法師には多分無理な攻撃距離だ。

地肌が現れた場所に巣穴がいくつも掘ってあるのが見える。

「大きいのを当てられるか?」

「高低差があるので多分いけます。」

フルサイズのアイスランスを中央の巣穴付近を目がけて打つ。

最後まで誘導しないと届かないのではないかと不安だったが、

概ね問題なく到達した。

鈍い音と共に地肌が大分崩れる。

外に出てきた黒狼は50頭という所か。

「黒狼のリーダーは普通50〜60頭以上は引き連れられない。

 多くなくて良かったな。」

ランディーはそう言うが、

これをある程度減らしてから移動しないといけない。

長い距離を誘導しないといけない為、

アイスランスもそうそう連発出来ない。

10数頭減らしたところで騎乗して馬を走らせる。

途中で群れが私達を見失ってもいけないので、

あまり早く走る訳にはいかない。

というか山の獣道に近い木々の隙間をそうそう早くは走れない。

私達の前後に騎士が走ってくれるので、

追いつかれてもすぐには襲われないが。

うまく誘引した、

と言うより速度を早められない為に逃げ切れなかった体である。

野戦築城した迎撃点に誘引部隊がなだれ込む。

すかさず下馬して魔法攻撃の為の場所に走る。

伯爵領と侯爵領の魔法兵が牽制攻撃を始めている。

息を整える暇もなくアイスランスを連発するしかない。

殺到する群れに対して攻撃時間が足りず倒しきれない為、

攻撃に狙われなかった数頭が柵まで到達する。

騎士が柵のこちら側から長槍で突くが及び腰では倒せない。

「降りて倒すぞ!」

「はいっ!」

この場所では柵が邪魔で攻撃出来ない。

騎士が出入り口から柵外に出て短槍で黒狼の動作を制限する間に

アイスランスを斜め上から叩き込む。

残り数頭になり逃げ出そうとする黒狼を背後から地面に縫い付ける。

こうしてとりあえず戦闘は終結した。


 夏季にまだ子供が小さい間に黒狼の群れを殲滅出来ないとこういう事態になる。

幼い魔獣を殺すのは心苦しいがそれは必要な事なのだ。

魔獣生息領域に近い辺境の領地の騎士団にとっては。

一般の魔法兵に比べると、

二人は魔法行使力に優れているので大きい攻撃が出来る事、

魔法制御も優れているので貫通力のある攻撃が出来る事、

連続攻撃の速度などで優れていると思われます。

素早い動きの魔獣に対して正確に当てるのも魔法制御ですし。

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