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2−19 シンシア・ラッセルの問題(2)

 2回目の訪問の際には、

肩の血行を良くする様に魔力をかけた。

これは呪文がない。単に体表を温め、

更に内部の水分の進みに勢いを加えるだけだ。

彼女に数回、呪文を唱えてもらう。

当然、風は起きない。

その後、私の魔法を、私の手を触れる事で感じてもらう。

...何も感じないらしい。

ふ〜ん、この障害は魔法感受性にも影響を与えるものなのだろうか。


 3回目の訪問の際には、

心臓にも治癒をかけてみる。

背中に手を当てて、少し強めに治癒魔法をかける。

手応えとしては、治癒効果は薄い。

そりゃ、そうだ。肩に問題があるのだから、

体の方には十分な魔力が流れていて、治癒魔法を阻害する。

そこは表情に出さずに続けて右、左の肩にも治癒魔法をかける。

魔法は肩に浸透するが、

問題解決には至らない。

彼女に呪文を唱えてもらうが、当然、風は起きない。

4回目の訪問の際には、

血行をよくする魔法、心臓に治癒、肺に治癒、

そして両肩に治癒をかけてみる。

もちろん、心臓と肺には殆ど治癒魔法が通らない。

その後、彼女に呪文を唱えてもらうが、当然、風は起きない。


 5回目の訪問の際には、

血行を良くする魔法、心臓に治癒、肺に治癒、

おまけに首筋に治癒もかけてみる。

最後に両肩に治癒をかける。

首にまで治癒魔法をかける段階で、

侍女、侍従が顔を一瞬顰めるのが分かった。

そりゃ、そうだ。頭部は問題がなく、肩が問題だと言っているのに、

問題ない筈の首まで手を出すのだから。

そろそろ上手くいかずに道に迷っているのを隠しているフリに

気づいてもらわないと。

その後、彼女に呪文を唱えてもらうが、当然、風は起きない。

彼女の顔がだんだん暗くなってきているのが分かる。

だから、彼女の手を両手で包み込んで、にっこり笑ってあげる。

「まだ1ヶ月以上ありますから、気長に進めて行きましょう。」

彼女が頬を染める。だから、私は女だって。


 う〜ん、女に手を包まれて顔が赤くなるかな?

例えばアンジェラに迫られるところを想像する。

...間違いなく鳥肌が立つだろう。

だって彼女やグレースの色仕掛けって、

間違いなく手足が痺れるヤツだから。

...少なくとも、私は怖がられていない!

と良い方に考える事にする。


 さて、6回目の訪問だ。

ここでダメ押しが必要だ。

迷走感を見せつける為に、薬草をすり潰した物を持ち込む。

お毒見番が確認した後、

侍従に外してもらった後に、

シンシア嬢の首筋に塗り、数分待ってもらう。

その後に拭き取り、

血行を良くする魔法、心臓に治癒、肺に治癒、首筋に治癒をかける。

最後に両肩に治癒をかける。

その後、彼女に呪文を唱えてもらうが、当然、風は起きない。

また、彼女の顔が暗くなる。

すかさず彼女の手を両手で包み、

頬を染める彼女に

「明るい未来を信じて頑張りましょう!」

とあからさまな実のない励ましのポジティブワードを口にする。

こういうセリフを口にする奴とは一緒に仕事したくないよね。


 そして、7回目の訪問だ。

いつもより侍従が一人減っている。

待った甲斐があった。

注目度が減る、つまり監視が弱まるのを待ってたんだ。

しかも奴は魔法能力がない偽装をしていた。明確に監視役だったんだ。

(訓練をすれば魔法放出は止められるが、

 多少の放出はあるので魔法感受性が高ければ判別出来る)

今日は、特製の毒消しと炎症止めの薬草をブレンドした偽塗り薬まで用意したんだ。 

薬や魔法には素人のメイドや侍女達にまで白い目で見られる中、

シンシア嬢の首筋に塗り、数分待ってもらう。

その後に拭き取り、

血行を良くする魔法、心臓に治癒、肺に治癒、首筋に治癒をかける。

最後に両肩に治癒をかける。

実は、血行を良くする魔法が肝だ。

これは魔力を注ぐだけだから、他の魔力を紛れ込ませる事も出来る。

呪文を唱えるとこうは行かない。

シンシア嬢に呪文を唱えてもらうと、

風は起きないが、魔法現象らしきものが彼女の手元で発生していた。

「え?」

「...もう一度呪文を唱えてみましょう。」

魔法現象は発生するが、風は起きない。そんなもんだ。

「何か手元に感じるんですけど!」

「魔法現象は起きていますね。ただ、風になっていないだけです。」

「それって!」

シンシア嬢が熱い目で私を見つめる。

純真な娘に見つめられても鳥肌は立たない。

うん。かわいい娘は良いね。

「障害が緩和されてきている様ですね。」

「本当に!?」

両手で口を抑えて瞼を熱くする彼女。

「もう一度呪文を唱えてもらえますか?

 肩と二の腕で魔力の通りを確認したいので。」

「はいっ。」

肩と二の腕の間の魔法減衰は通常程度だった。

間違いなく肩の障害は取り除かれていた。

そりゃあ、取り除いたからね...

体内魔法論の小説は魔法循環なる訓練をしますが、

あの場合は魔法はどこを循環するんでしょうね?



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