2−18 シンシア・ラッセルの問題(1)
シンシアが落ち着いたのを見計らって、
ラッセル家の魔法練習場に移る。
シンシアは風属性だった。
風属性の初級魔法、ブローの呪文に手を加え、
小さな魔力で小さな風が起こる呪文に変える。
とりあえずシンシアの隣に立つノーマンに
呪文を書いた紙を持ってもらい、
シンシアには両手を前に伸ばして呪文詠唱をしてもらう。
もちろん、風は起こらない。
「肩と手に触れられても、詠唱はできそうですか?」
「はい、やってみます。」
エレノーラがシンシアの隣に立ち、
右肩と右の二の腕に触れ、再度シンシアに詠唱してもらう。
「二の腕では既に魔力が減衰していますね。
問題は肩にあると思われます。」
「肩ですか...」
「冷え性で手が動かなくなるとか、
痺れる事はありませんか?」
「今の季節は手が冷える事はありますが、
特別に痺れる等という事はありません...」
語尾が度々小さくなる。
元々おとなしい人なのか、
自信がないからなのか。
「そうですね、水魔法の治癒は効果が低いのですが、
とりあえず肩に治癒をかけてみましょうか?」
「はい、お願いします。」
右肩に触れ、治癒の呪文を唱える。
もちろん、単なる気休めだ。
左肩にも治癒を行う。
もう少しやった方が良いかな。
「私が弱い魔法を使ってみます。
その時に手を触れてみて、
魔力の流れる感覚を感じられるか試してみましょう。」
「はい、お願いします。」
シンシアに向き合い、彼女の両手に私の手が触れる。
その状態で3度魔法を詠唱する。
何も感じない、との事だった。
「今まで魔法が使えなかったのですから、
魔法を感じる事も難しいでしょう。
とりあえずひと月、差し支えがなければ週に2日、
こちらに伺ってもよろしいでしょうか?」
「え、よろしいのですか?」
「公爵令嬢に誘われている、と言えば、
魔法院をサボれるのですよ。」
パチン、とウィンクをして見せる。
何故かシンシアが頬を赤らめる。
私、女だからね!?
帰宅前、フィッツレイ家の馬車に誘われる。
4人で話をしたい訳だ。
「それで、本当の所はどうなの?
彼女は魔法が使える様になるの?」
「見ていただいた通り、肩に問題があります。
とりあえず水魔法の治癒をかけましたが、
ご存知の通り、水魔法の治癒は効果が薄いです。
その他、血行を良くするとか、
出来る事をひとつずつしてみようと思っています。」
「2ヶ月で治るものなの?」
「できれば1ヶ月以内に使える様にしたいのですが、
こればかりは進めてみないと分かりません。」
「さっきはもう学院に通える様な言い方してたじゃない?」
「意思ある所に道ありですからね。希望を与えないと。」
「えぇっ、意外と自信ないの!?」
「まあ、明るく練習していく様にしますよ。
こういうのは本人がすぐ煮詰まっちゃうものですから、
周りはおおらかにしていないと。」
3人に睨まれた。
下手に希望を与えて駄目だったら余計辛いじゃない!と。
カラ笑いをしたら更に睨まれた。
だって、誰も出来なかった治療を自信を持って成功させたら、
刺激するでしょう?
敵を。
きりの良いところで切ったら短すぎですね。
ごめんなさい。
ラッセルシリーズ終わったら文字多めにするから。
あくまで当社比ですが。
あと、多分魔法院はサボれないと思います。