2−10 2年1組の魔法の授業(5)
魔法実技の授業では、
水魔法は全員2つ目のウォーターボックスの練習に入る事にした。
スプリングは一応全員発動は出来るので、
後は自主練習が出来るからだ。
「だーっ!いきなり囲むとか出来るかよ!」
煩いなキース。騒ぐ元気があったら練習法を自分で考えろ。
「はあ、そんなあなたに耳よりな情報が。」
「何かいかがわしいぞ、その言い方。」
「お陰で疲れているんで。」
「何のお陰だよ!」
あんたのお陰だよ。
「練習ですが、いきなり縦に丸めるのは難易度が高いです。
なので、立っているウォーターウォールをそのまま垂直方向を軸に曲げてみます。」
実演してみる。断面を半円形にしたウォーターウォールを発動する。
「成る程、まず曲げてみて、それから囲ってみて、最後に蓋をするんだな!?」
「仰る通りです。」
練習方法が皆に伝わったところで、
教師がやって来る。
嫌な予感しかしない。用が無ければ彼等は近づいて来ないからだ。
「水魔法師の指導は順調な様だから、
土魔法師も指導してくれ。」
言うとすぐ去っていく。
水魔法師は順調じゃないよ!
怪しいのが2人、ちょっと難しいのが3人もいるんだよ…
教師の言葉に悪意は感じられないから意地悪をしている訳ではない様だが、
私という生徒に配慮はない。
教師本人ではなく、もっと上位の人間の指示で動いているだけか…
水魔法なら兎も角、土魔法は指導する程の実力はないんだけどね。
教師の指示を無視する訳にもいかないか。
「えーと、皆さん、聞こえました?」
「土魔法も指導とか聞こえたが、出来んのか?」
「出来ないから嫌、って回答を聞きたくないから
さっさと逃げていきましたね。」
「追いかけて喧嘩売ってやれ!」
「淑女はそんな事しませんよ。」
「お前の事、淑女と思ってる人間が世界に何人いると思ってるんだ?」
「目の前の奴がそう思ってない事は良く分かりました。」
「分かれば良い。」
良くねぇよ!
「とりあえず、土魔法師の人達に話をして、
一通り話をしたら戻ってきます。
しばらく頑張って下さいね。」
不満そうな奴と、こちらを気遣ってくれる人とがいるがしょうがない。
土魔法師グループは明らかだ。
土魔法用に花壇状の練習場所があるのだ。
個別に土遊びをしている訳だ。私もよくしているのだが。
はあ、話が通じそうな人が一人いて助かった。
デビット・マナーズ侯爵子息が土魔法師なんだ。
爵位もそうだが跡取り息子なだけに指導力はある人間だから、
彼を通して話を纏めてもらいたい。
尤も、彼自身は魔法教育を充分受けているらしく魔力も制御も巧みに見える。
彼自身は自主練習だけで問題ないだろう。
「デビット様、少々よろしいでしょうか?」
「ああ、どうした?珍しいな。」
「たった今、教師から土魔法師も指導する様に指示されたのですが、
何分、水魔法師も苦労しているので、
どの様に指導したら良いか相談させて頂きたく。」
デビットも眉を顰めた。
「元々学院教師は大した指導をしていないが、
生徒に押し付けるのは職務怠慢以上に無責任だな…」
「それでも私なりに水魔法師の指導はやれない事はないのですが、
土魔法はそれなりにしか使えないので、
質問等には答えるというスタンスで貢献致したいのです。
どうでしょうか?」
「魔導師をそれなりとは言わないがな。
だが質問に答えてくれるならありがたいし、
まあ、お互い話かけ難い事はあるだろうから、
一度全員見てもらえないか?」
それを避けたかったんだけどね…
話はまとめてもらえそうだから、ここは従うべきだろう。
「そうですね。最初の一声はお願いできますか?」
「ああ、任せてくれ。」
次期侯爵様はさすがに頼もしい。
「土魔法師は聞いてくれ。
教師からの指示でエレノーラ嬢が土魔法師の指導もしてくれる。
エレノーラ嬢は既に土魔導師の資格を持っているから、
中級魔法は一通り習得している。
一度皆の魔法を見せて一言アドバイスを貰いたいと思う。
順に名前を名乗った後、魔法を見せてみてくれ。」
最初はデビット、次いで伯爵子女、その後は下位貴族と
爵位順に魔法を見せてくれる。
これをやりたく無かったのは4人目の伯爵令嬢が問題だからだ。
エルシー・クーパー伯爵令嬢。フィッツレイ公爵家の寄せ子の娘。
キャサリンの取り巻き2だ。
キャサリンの手前、彼女は私と話をしたくないし、
そんな相手と私も親しく話せない。
でもそんな事でこちらからは差別を出来ない。
魔法の指導をする上で私情を優先すれば
魔法師としての私の評価が下がる。
一個の人間としても、問題がこちらにもある様には周りに見せられない。
…なのだが、エルシーは魔力は1組平均以下で2組平均以上に見えるから、
中級魔法は充分使える筈が、制御が悪く、土がすぐ崩れてしまう。
キャサリンと同属性ならキャサリンを気遣って見劣りする成果しか
上げられないのは分かるが、
属性が違う以上、それはないだろう。
指導しないといけないなぁ…
「初級魔法の土壁は問題ないんですか?
なら、一先ず土壁の1.5倍で作ってみてはいかがでしょうか。」
しーん。
エルシーから返答はない。
「おい、エルシー嬢!」
デビットが声をかけてくれるが、
こんな事に巻き込まれて彼の評価が下がるのは不味い。
デビットに向けて小さく手を上げ、
彼がこちらを見るのと同時に首を小さく振る。
相手に話す気がない以上、周りが声をかけても無駄だ。
「その事、頭に入れておいて下さいね。
では次の方。」
排他、というのは自分に返ってくる。
キャサリンは王子を除けば1組最上位の公爵家令嬢だが、
私同様に田舎出身者は彼女に近づかない。
排斥されるからだ。
爵位が低い者も馬鹿にされたくないから近づかない。
結局、1組女子は次に爵位が高いナタリー・クラーク侯爵令嬢の
周りに集まる。彼女はおおらかだから他人を排斥しない。
まあ派閥運営には向かない様だから、
寄せ子の娘のサマンサ・リー伯爵令嬢が音頭を取っている。
結局キャサリンの周りには公爵家の寄せ子の子女しか居ない。
エルシーもキャサリンに付き合っている為浮いているんだが。
このままで良いのかな?
えーと、感想を頂きましたが一言だけだったのでこちらで返答を。
同意って恵方巻の事ですよね?
それとも王子が我儘言ったら王太子外される事かな?
まさかのエレノーラが早逝した事にして
娘が主人公のテンプレドアマットヒロインざまぁ物が書けるって事かな?
とりあえずご感想ありがとうございました。