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2−8 2組からの申し入れ

 相変わらずキースは逆方向に元気だが(つまり文句が多い)、

練習は真面目にやってくれる様になった。

1組の生活も平穏である。

という頃、コリンから呼ばれた。

「よお、お客さんがいるぜ。」

「はい、ありがとうございます。」

教室の入口には2組の平民の生徒がいる。

固い口調だ。

「あの、態々お出で頂き申し訳ありません。」

「今更、そういう言い方しなくて良いよ。普通に喋って。

 それで、何か特別な用事でもあるの?」

「えーと、その、マリーに土魔法の初級魔法一覧ってあげたでしょ?」

「夏休みの終わり頃の話ね。」

「それで、その水魔法版ってあったら欲しくて。」

「あなた風魔法じゃなかったっけ?」

「その、水魔法の人が欲しがってて。」

下位貴族が欲しがって、この娘に命令したという事か。

自分で来なよね。

お断りするとこの娘が可哀想か。

「ないけど、3週間待ってくれれば作れるよ。」

「え、何で3週間?」

「来週末にお茶会があって、作法のチェックが今厳しいの。

 それが済んだ後の週末に纏めるから、

 待って欲しい。」

「分かった。お願いします。」

彼女は自分の教室へ戻っていった。


 のだが。

「おいおい、こいつは聞き捨てならねぇなぁ!」

コリンがうるさい。なにが気になるのか結論から言え。

「どうかなさったの?」

「おおっ!

 いいか、今度の剣の授業で俺と3本勝負をして、

 俺が1本とったら俺の言う事を聞いてもらう!」

周囲の女子は、3本勝負って2本とったら勝ちじゃないの?

とコリンの弱気に呆れている。

ところが男子から見れば妥当なところに見える。

最近のエレノーラとコリンの勝負はコリンの勝ちが3割弱という感じだから、

3本に1本が良い所だ。先にエレノーラに2本取られなければ、の話だが。

「それで、何をさせようと言うんですか?」

「俺が1本取ったら、さっきの娘に約束した魔法の資料を

 俺ももらう!」

周りで聞いていた全員ががっかりした。

そんな物なら普通に頼めば良いじゃないか。

「いや、欲しいなら写しぐらいあげますよ。」

「ホント?やったあ、これで期末試験もばっちりだ!」

「期末試験は中級魔法ですよ?」

「初歩はしっかりやりたい派なんだよ。」

だったら去年やっとけよ、というのが全員の感想だった。

ここで恐ろしい事に、

全く気配を立てずにカーラがコリンの横に立っている。

エレノーラは魔法の気配で気がついていたが。

「それ、私ももらえる?」

「わぁ、びっくりした。急に横に現れるなよ!」

「勿論、1組の水魔法師には配りますよ。」

「そう、楽しみにしてるわ。」

「俺を無視しないでくれ…」

コリンを放置して

カーラもエレノーラもその場を離れた。

しかし、カーラがそこまで私の魔法資料に興味があるとは思っていなかった。


 部屋に戻った時に過去の初級魔法に関する書付けを眺めると、

かなりぐしゃぐしゃになっている。

もちろん本人は何を考えて書き込んだか記憶があるので

これはこれで纏まっていると思うのだが、

これを他人に見せると淑女として問題になりそうだ。

少しずつまとめながら書き写していかないと、

ごっちゃな資料を他人に見られる事になりそうだ。

しかし、こんな物を伯爵令嬢まで欲しがるという事は、

家庭教師制度は私が羨む程には機能していないのかもしれない。

資料を欲しがるという事は、家庭教師は口伝主体の授業なのだろう。


 ちなみに、茶会はアンジェラ、グレースとエリカが紹介してくれた

貴族と挨拶を交わすだけで、あちらから私に寄ってくる事はなかった。

スタンリー家は本当に必要とされていないなぁ。

まあ、最果てに張り付いている運命だから、

王都での社交の対象にはならないんだ。


間をおいて魔法授業の話は挟む予定ですが。

そろそろアーサーの出番が。

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