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1−56 王城での教育(3)

久しぶりの婚約者候補教育になる。

エリカがエレノーラの顔を見て寄って来る。


「婚約者教育を休むなんて駄目じゃない!

 今日からはまた気を引き締めてやりなさいね!」

…そう言われるのが一番辛い。

毎晩、子熊や子狼が夢に出るのではないかと怯えながら眠り、

無事に朝が来れば安堵し、これで正しいのだと背筋を伸ばして部屋を出るのだ。

その仕事の意味が無いかの様に言われると…

でも、王都の令嬢にとってはこの考えで正しい。

魔獣の討伐など騎士の仕事で、

令嬢達は田舎騎士も魔獣討伐も野蛮、と距離を取っていれば良く、

貴族令嬢らしく社交界の花として咲く事を第一に考えるべきなのだ。

そして、王子の婚約者となる事が一番の誉で、

それを最優先すべきなのだ。

…そう、この場では自分もそうあるべきなのだ。

「申し訳ありません。

 自分はこれも渡世の義理と割り切っておりますが、

 それで皆様にご迷惑をかけているのは申し訳なく思っております。

 本日からは心を入れ替えて頑張らせていただきます。」

「渡世の義理って何よ…」

「渡る世間はしがらみが多いと言う事ですよ。」

エレノーラは領地騎士団のおっさん達から変な言葉を色々教わっていた。

令嬢としてどうよ、それ。


王太后が現れたので、挨拶を交わす。

「フィールディング領での仕事はお疲れ様でした。

 中々人手を割けなかったので、良い仕事をしてくれました。

 でも、今日からは令嬢としてしっかりやって下さいね。」

「はい、ありがとうございます。」

さすがに王太后は分かっているのか、

それとも私の作り笑いの下の感情を見破られているのか。


背筋を伸ばす歩き方は大分出来る様になった、

とは言われた。

それはそうだ。今は常に意識して背を伸ばしていないと、

知らずに俯いてしまうのだから。


パルテナ語の授業は辛い。

私がこれを使う時は、多分魔導士として戦場でパルテナ帝国魔法兵達と

壮絶な殺し合いをした後となるだろうから。

なのに晩餐の挨拶やらマナーやら、

平和なやり取りを学んでいるのだ。

とは言え、緊張緩和の為にあちらの要人をもてなす事もあるだろう。

しっかり身に付ける必要はあるんだ。


教育の合間にアンジェラとグレースが近づいてきて、話しかけてきた。

「お疲れ様。

 あまり話したい事でもないかもしれないけど、

 フィールディング領の具合はどうだったの?」

さすがにアンジェラはものが違う。

彼の地の状況が一般的な状況かそれとも特殊な状況なのか、

それを見極める事で、

フィールディング領の内政がどうなっているかも判断出来るから、

情報が欲しいのだろう。

公爵家の一員としても、将来の王子妃としても。

「侯爵閣下からは到着時と出発時に豪華な晩餐に誘われましたよ。

 領地内の交通は滞ってはいない様です。

 一部地域に大熊が入り込んで、

 それに弾き出された黒狼が領地内に営巣地を作っていたので、

 今回は特殊な例と思われます。」

「そう。大熊や黒狼は一掃出来たの?」

「大熊自体は。

 但し、黒狼はその周囲の一部の排除が出来ただけで、

 残りは領地騎士団が何とかすると思われます。

 2日しか現地には居なかった為、

 全ての魔獣は見ていないので、全体像は分かりかねます。」

ふぅーとアンジェラは一息吐いた。

「簡単に言うのね。

 また、あなたが倒したのでしょう?大熊。」

しまった、私の単体戦力を図る質問も兼ねていたんだ。

まあフィールディング家から漏れる内容だから良いか。

「令嬢と話す内容では無いのですが、

 アイスランスで動きを鈍らせて、アイスランスで頭部を潰しました。」

苦笑いするアンジェラ。

「そんな話をしなければ、あなたも立派な令嬢に見えるんだけどね。」

自分で振っておいてその言い草はないでしょう…


この年頃で2才の年齢差は大きい。

知識も精神力も、情報収集に勤しむ姿勢も、

やはりアンジェラが王子の婚約者に一番近い人間だろう。


氷山の一角と言う。

上から見る鳥には水上の広さしか分からない。

離れた陸から見る陸の生き物からは朧げな形しか分からない。

水の生き物からは水中の大きさしか分からない。

所詮自分の価値観というものさしでしか他人の事など測れない。 


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