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1−53 夏の魔獣討伐(1)

王城での王子の婚約者候補教育は1週間休みになった。

討伐はフィールディング侯爵家の領地で行う。

川下りは当然ランディー・アストレイが同行し、

4人の女騎士が交代で常時エレノーラの護衛に付いていた。

実際の護衛というより、

王子の婚約者候補にまずい噂が立たない様にとの配慮だろう。

「現地では黒狼の群れが発生しており、

 夏の討伐の最中だ。

 10マイル程村落に近づいている為、

 昨年までの黒狼の行動範囲までは後退させたいとの事だが、

 苦戦している様だ。」

「現地騎士団と魔法戦力で普段はそのラインで防げているのでしょうか?」

「そうだと聞いている。今年は春の討伐の際に既に数が多く、

 本来の境界まで討伐出来なかったとの事だ。」

「その割には王都からの派兵が少ない様ですが。」

この移動には女騎士以外にも騎士が付いてくるが、

魔導士二人の護衛としては多い、という程度だ。

「俺とお前でどうにかしろという訳ではない。

 そういう事情で王都からなにがしかの兵力を出した実績が欲しいだけだ。」

また、無茶を言う…

実績?苦戦中に魔導士二人で何が出来るというのか。

「アイスランスの練習になるだろう。

 お前の威力なら簡易詠唱で良い。」

簡易詠唱とは、主要な言葉だけ詠唱して他の文言は省く詠唱だ。

魔導士試験を通った事で、

そういう速度優先で威力が落ちるやり方も許可が降りたのだ。

つまりもう就職が決まったから、

場合により詠唱も魔法も乱れる様な事があっても就職後に調整してやる、

という事だ。

誰も私が王子の婚約者になるとは思っていない。

私自身も。


現地の領都に着いたのは2日目の夕方になった。

ルイス・フィールディング侯爵の歓待を受け、

夕飯に招かれる事になった。

将来有望なランディーと一応王子の婚約者候補である私に礼を尽くしたのだ。

「黒狼の群れの後方には大熊、または大猪等いる可能性があるのでね、

 滋養を付けておいて欲しい。」

「いただきます。」

「ランディー殿のお噂はかねがね伺っているが、

 エレノーラ嬢は貴公から見て如何なものか?」

「魔導士試験を通っております。

 それに値する活躍は見せてくれるでしょう。」

勝手に期待しないでよ…

私にとっては訓練なんだから。まだまだこれからだし。

「エレノーラ嬢は殿下の婚約者候補の修行はいかがかな?」

まだ全然始まったばかりなんだから答えようがないのに何を聞くのか。

「王太后陛下という淑女の鑑たる方にご指導を受けておりますし、

 手本となる先輩方もおられます。

 まだまだ学ぶ事ばかりですが皆様の名を辱めない様に努力をしております。」

「大変だろうが頑張って頂きたいね。

 どなたが后になられるかはまだ分からないから。」

「ありがとうございます。」

私じゃない事は確かだけれど。


フィールディング邸にて一泊した後、早朝に馬車に乗り、

変え馬をしながら三時間かけて討伐部隊と合流する。


位置を特定している黒狼30頭の群れにまず向かう。

先制攻撃としてアイスランスで中距離攻撃をかける。

ランディーのアイスランスなら黒狼の皮を突き破って刺さるが、

私のアイスランスは先端がそこまで尖っていないので刺さらない。

但し、質量がある為、骨を砕いているらしく、

アイスランスが一発当たるだけで黒狼が走れなくなる。

つまり、ランスというより打突武器になっている。

…格好悪い…

魔法攻撃10分程であらかたの黒狼が寝転がって苦しんでいるか、

あるいは既に動かなくなっていた。

ここにおいて現地騎士団が突撃し、止めを刺す。


騎士団の現地司令官が礼を言う。

「助かるよ。魔法戦力が少ないのでどうしても騎士の損害が増えていたんだ。」

それでも骨を折った者もおり、

同行している教会の治癒師の治療を受けるという。

ランディーが見学を申し出る。

「こちらは水魔法師なので多少違いがあるが、

 参考に見学したい。」

「攻撃魔法を優先して行って欲しいから、

 治療に魔法を使って欲しくないし、

 見学だけで頼む。」

こうして教会の治癒師の治癒を見学する。

…気がつく事がある。


次の群れに進む前に少しの休憩時間をもらう。

「魔法院に保管してある治癒呪文と違う語句がありましたね。」

「領地毎に呪文が少し違う例は良くあるからな。

 但し、教会の場合は魔法院に公開していない単語があるかもしれない。

 相違点は覚えておくと良い。」

魔法発動自体はそれ程おかしい事はなかった。

但し、治癒の魔法の浸透力が違うのが傍で見ても分かった。

水魔法と発動時の差異はそれ程ないのだが。

神の存在?そんなの感じなかったよ。


結局、午前中は合計3つの群れを殲滅した。

ランディーも私も合計40分程度しか魔法の連続使用をしていないから、

午後も同じ位の時間は戦闘に参加が出来るだろう。

現地で簡単なスープと硬いパンの支給があり、

つまりスープにパンを浸して食べた。

スープが出るだけ儲けものだ。討伐なんだから。

次の群れには馬で向かう。私は女騎士の後ろに乗せられて行く。

馬には一応乗れるんだけどなぁ…


短時間で多くの群れを攻撃したい為、馬を多く用意している様です。

魔導士二人を他所から連れてくるのは通常なら非常に難しい為、

この機会に有効活用したいのです。

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