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1−51 王城での教育(2)

挙措動作の指導・訓練ではまだ身体が慣れていないので、

終わった時は筋肉ががたがたになる。

椅子に座って、背もたれにもたれて身体を休めないといけない。

ここでテーブルに突っ伏していたらそれも無作法になるからだ。


続いてパルテナ帝国の作法をパルテナ語主体で指導を受ける。

語彙の足りないエレノーラにとっては分からない事が多いが、

つまり重要外国語を身に付けるのに実践的な会話を続けるのが上達の近道、

という事だろう。

先程は身体ががたがただったが、

今度は頭やら神経やらががたがただった。

俯く事が許されない以上、椅子の背もたれだけが頼りだ。


そんな休憩中に、アンジェラとエリカが何やら口論を始めている。

アンジェラは冷静な口調と表情だが、

エリカが激昂しつつある。


「だから、そんな決めつける事ないでしょ!

 やってみなければ分からないんだから!」

「可能性の低い事をやるのは無駄でしょう。

 それ位、あなたにも分かるでしょう。」

ああ、それくらい分からないの?的な発言は相手を挑発すると思うよ。

分かって言ってるならイイ性格だ。

誰か泥を被った方が良い状況だ。

背筋を傷めない様に静かに三人に近づく。

(グレースはアンジェラの右少し後ろに立っていたんだ)

三人は対パルテナ帝国の外交策について、

上位貴族としての歓待について話していた。

エリカの声が一際大きくなった。

「あんたはいっつもそういう自分だけ分かってるって言う顔をするけど!!」

エレノーラがすっとエリカの横に立ち、割り込む。

「エリカ様?」

激昂してエレノーラが近づくのに気が付かなかったエリカがびっくりして

横を向く。

「えっ」

驚いて口を開けても美少女は可愛らしいなぁ。

羨ましい。

「もしよろしければ、一緒に調べませんか?

 そういう事例がなかったかどうか。」

「えっ、でもあなたには関係ないでしょ…」

敵と味方の区別は付く様だ。

私に対しては大分口調が大人しくなった。

「せっかく案がおありでしたら、

 調べてみるのも良いでしょう?」

向かいあっているアンジェラの目が少し細くなる。

怖いから睨まないで。

とりあえず場を収めたいの。

アンジェラは口を開かなかった。

なぜなら王太后が現れたからだ。


「エリカさん、ちょっとこちらに。

 次はエレノーラさんだから、待っていなさい。」

離れた壁の近くに連れて行かれるエリカ。

エレノーラもアンジェラに会釈をしてからそちらの壁を向き、

王太后に呼ばれるのを待つ。

静かな王太后の言葉はこちらには聞こえない。

エリカは王太后と視線が合わせられない。

大分打ちのめされている様だ。


エリカはアンジェラの方に向かっていく。

謝罪をする様だ。


一方、王太后がエレノーラを見る。

今度は私がお説教を受けるのか。

しょうがないので王太后に近づく。

「口論を収めようとしたのは良い事です。

 でも、情に流され付く人を決めたのはいけません。

 上位貴族もそうですが、王族も間違った事をするのは許されないからです。

 それは分かりますね?」

言われるまでもない。

アンジェラとグレースは多分同じ意見だろうから、

独りで悔しそうな顔をしていたエリカが可哀想に思えたんだ。

正しい方につくのではなく、

好きな方についてしまったんだ。

「情に依るのは、後で二人だけの時にすれば良い事です。

 このままではアンジェラさんとの関係がおかしくなりますよ。

 正しいことを言ったのに敵対されたのですからね。」

「はい、この件はすぐ謝罪致します。」

「そうしなさい。

 次からはもう少し考えてから行動する様にしなさい。」

「はい。ご指導ありがとうございました。」


アンジェラの前で小さくなっているエリカの横に立つ。

「アンジェラ様、出過ぎた真似をして申し訳ありませんでした。」

と、アンジェラに言っているのにエリカが口を出す。

「そうよ!あんたが私の肩を持つ理由なんてないんだからっ!」

声も大きいし、口調が令嬢らしくないですよー。

王太后様が聞いてるのに。

「エリカさん、口調が乱れていますよ。」

「は、はい!申し訳ありません。」

アンジェラもグレースも、私も苦笑している。

アンジェラが言う。

「エレノーラ、私達、別に仲が悪い訳じゃないからね。」

「はい。よく分からないまま口を挟んで申し訳ありませんでした。」

「信じてない様だけど、三人が婚約者候補に選ばれ時に、約束したのよ。

 誰が王子妃になっても、皆で助け合おうとね。」

「そう、王子妃なんて苦労ばかりの役だからね。」

グレースも柔らかい表情をしている。

「そういう訳だから、あんたも誰が王子妃になっても協力してよね!」

だから、エリカ様…

「エリカさん、口調が乱れて直らないんですか?」

「はい、すいません!」

貴族令嬢の話し方が難しく、

なんとなくエリカに本来あった筈の仮面が無くなってしまいました。

力不足で誠に申し訳ないです。

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