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1−46 下期の終わりとダンスパーティ(1)

下期最終日は卒業式が行われた。

学院長の挨拶の最後に、

学院長が魔獣討伐演習におけるアクシデントの責任を取って退任すると告白した。

実際にはそれより学院の成績評価不正に関する責任の方が主での退任なのだが、

アクシデントの責任、と言ったほうが名誉が保てると思ったのだろう。

教師の退任はまだ交代する教師が確保できていない為、

新年度の発表になる予定だと魔法院で聞いていた。

評価不正、と聞いてがっかりした事は確かだが、

評価以前の指導の問題が改善されなければ意味がないと

エレノーラには思える。


卒業式の後、それぞれのクラスで成績表が渡されていく。

下期のエレノーラの成績は

魔法、剣が5、

その他の教科の評価は4が増えたが

歴史と外国語と乗馬は3だった…


タウンハウスに帰り項垂れて報告する私に、

祖母は「次は言い訳が出来ないからね。」

と笑って言った。何が可笑しいのか…


魔導士試験を恨みながら、

翌日はダンスパーティの準備をする。

スタンリー家のタウンハウスには王城から4人のメイドが派遣され、

準備を手伝った、というより主導した。

また別人エレノーラの再登場である。

誰かが闇魔法で類似品を召喚したんじゃないかと思う位、

本人に似ていない。

午後一のダンスパーティの為に馬車で学院に向かう。

大講堂に一般参加者は集まっているが、

王子と婚約者候補4人は控室で待機してからの登場となる。

エレノーラ以外の3人は流石に王子の婚約者候補と言える華やかさだ。

その点、エレノーラのドレスはまずダンスがし易い様に飾りが控えめだ。

これで良い筈なのに、やっぱり3人の豪華なドレスを見てしまうと

見栄えで劣るのが気になる。

まあ家格が一番低いからこの位格差があった方が良いかもしれない。


会場へ婚約者候補の4人が登場した後、

アーサーが登場すると皆が拍手で迎える。

まず婚約者候補が王子とダンスを踊り、

それから皆のダンスが始まるのだが、

まずアンジェラ、グレース、そしてエリカの後に

エレノーラが王子と踊る。

待っている間にそれぞれの令嬢が華やかなドレスで

完璧なダンスを披露しているのを見ると、

自分がこの後にアーサーと踊るのが場違いに感じてしまう。


アーサーがエレノーラに手を差し伸べる。

「さあ、行こうか。」

「お願いします。」

少し踊りに慣れてきた頃、

アーサーが少しずつ話しかけてくる。

緊張をほぐす為だ。

「ドレスがとても素敵だよ。」

エレノーラとしてはこんなところで晒し者になっている気がして、

少し心がささくれ立っていた。

「ドレスだけが素敵ですか?」

「いや、もちろんとても似合っていて素敵だよ。」

ふん、女たらしめ。

「社交辞令ありがとうございます。

 殿下が紳士でとてもありがたいです。」

「いや、本当に似合ってるってば!

 君には白っぽいドレスが似合うと思っていて、

 デザイナーにリクエストしておいたんだ。」

何気に本気で慌てだしたアーサー。

ちょっと地を出しすぎじゃないですか、殿下。

しょうがないので口に微笑みを浮かべて素直に礼を述べる。

「ふふふ、それはありがとうございます。

 本当は急にダンスパーティと言われてドレスが無い、

 と困ったところなんです。」

「いや、その、困らせたい訳じゃないんだけど。

 本当に急ぎの話で済まなかった。」

困らせたのは自分のせい、と思ったのか、

更にアーサーが慌てだした。

王様のせいだと思ってるからそんなに気にしてないのに。

「ふふふふ、気にしてないけど次はもうちょっと余裕が持てる様に

 お願いしますね。」

「あああ、本当に悪かった。」

だからそこまで慌てないでって!


微妙な笑顔のエレノーラの横でアーサーが慌てている姿を

3人の婚約者候補達が見て、

あの子達何やってんのかしら、

と呆れていた。



その後、話し相手もなく会場の端で一人佇むエレノーラの下に

赤毛の公爵子息、ポール・サマーズがやって来る。

「やあ。」

「はい。」

「…素敵なドレスだな。」

「礼儀に則ってお褒め頂きありがとうございます。」

「…殿下も褒めてたろ?」

「取り急ぎのダンスパーティ参加になった私に

 何か引け目を感じているらしく、

 お褒め頂きました。」

「素直に喜べばいいだろ?」

「外見をここまでメイドに弄ばれればそれなりになりますよ。」

「そうしていればれっきとした令嬢に見えるさ。

 そんな言い方するなよ。」

「見た目だけはね。

 先日、他の令嬢方とお会いして、

 自分の未熟さを思い知らされまして、

 見栄えだけでは駄目と思っているんですよ。」

「…そんな令嬢達みたいに成りたいか?」

「いえ、全然。」

赤毛は人差し指を鼻の先に、

親指を顎に当ててエレノーラを見る。

そうして少し下を向くとエレノーラの目に視線が合う程、

身長に差がある二人だった。

「…それでこれからどうするんだ?」

エレノーラは王子の婚約者教育の話と理解した。

「猫の被り方は覚えますよ。

 王太后様は立派な方なので、

 ご迷惑をおかけする訳にはいきませんから。」

なら、猫を被るだけじゃ駄目だろう、と赤毛は思ったが、

つまり殿下の婚約者になるつもりは毛ほども無い訳か。

「殿下が聞いたら悲しまないか?」

「私が婚約者になる方が悲しいでしょうよ。

 できればちゃんとした女性と結婚したいでしょうから。」

そんな化粧をしなくても、

澄ましていればそれなりに綺麗な女なのに何を言っているやら。

赤毛としては、それでも安心した。

王子の婚約者候補となって、

こいつも普通の女みたいに王子という立派な額縁に似合う女に

成りたがるのではないか、と思うと残念な気がしたのだ。

虚飾で固めた顔と金をかけた見栄えだけの服で身を固め、

他人を貶す嘘か真か分からない噂を好む女になるのでは、と。

俺も馬鹿だな、と妙な心配をした自分が可笑しくなった。

笑いを抑える為に口を抑えようとしたが、

腹が痙攣してきた。

腰を折って腹を抱えて震える格好になった。

エレノーラとしては他人の隣で何笑ってんだ!

とイラっとしてきた。

そんなエレノーラの気持ちを察して、

更に赤毛は笑いを抑えるのが困難になった。

エレノーラはもう眉間に深い皺を作って、

心の中で赤毛に何度も斬り掛かった。

その気を察して赤毛は更に震え続けた。


それを横目に見たアーサーは

あの二人、仲良いな、と思っていた。


3人の婚約者候補達も二人を見て、

あの子達何やってんのかしら、

と再び呆れていた。


赤毛君がわりかし良く動いてくれるので

作者としては助かってます。

でも上手く文学表現が出来なくて

赤毛君にはすまないと思ってます。

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