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1−45 王子の婚約者候補(2)

卒業ダンスパーティ直前に王太后とアーサー王子の3人の婚約者候補と

顔合わせがある。

学年末の夏休みに一緒に婚約者教育を受けるからだ。


教育用のドレスが間に合った。もちろん、ダンスパーティ用も。

さすがに王室御用達の服飾店は仕事も確かで早い。

と言うか、割増料金を払ったんだろうな…

まず婚約者になる筈が無い人間にお金をかけさせて申し訳ない。


試験後から卒業式前の間は毎日授業は午前中で終わる。

アーサーからは身一つで来てくれれば良いとの言葉があったが、

学院で食事後に王城に着くと王城のメイド達に入浴させられ、

化粧、髪型、ドレスの着付けと王城側のメイド達にしてもらう。

とてもじゃないがスタンリー家で雇っている侍女・メイドでは私にここまで

人員をかけられないし、技量も違う。

今までとは違う、新しい自分が出来上がった。

鏡の向こうに他人が立っているよ…

こうして16時に挨拶すべき方々とお会いする事になった。


教師として指導する立場の王太后には後光が指していた。

少なくともエレノーラはその後光に圧倒されひれ伏した。

片膝をついて手を胸に当て、

頭を垂れた。

王太后は

「礼儀が違いますよ。」

とだけ声をかけた。

エレノーラは

「申し訳ありません。

 仕えるべき方にお会いできて、

 感激の余りこの様な姿となっております。

 我が身は御身の盾と、

 我が生命は御身の剣として我が君に捧げます。」

その席には婚約者候補の教育を既に受け始めている3人の令嬢達が居たが、

彼女達から見ても、

エレノーラのその姿も言葉も錯乱した言葉ではなく、

真意を伝えている様に聞こえた。

仕方がないので王太后も譲る事にした。

「気持ちは受け入れますが、

 ここは令嬢としての教育の場となります。

 それ相応の礼儀作法で挨拶する事が望まれますよ。」

「はい、申し訳ありません。」

エレノーラは立ち上がりカーテシーを取った。

「エレノーラ・スタンリー、お呼びにより参りました。

 以後、お見知り置きをお願い致します。」

「王太后と呼ばれておりますが、

 ここでは只の教師のパトリシアです。

 王族に対する礼儀の練習としての挨拶は必要ですが、

 教育の最中は気兼ねなく質問なり、

 或いは体調不良などは申告しなさい。」

「はい。お心遣い感謝致します。」

「あなたの先輩として3人の令嬢を紹介します。

 ここでは生徒同士、年齢なりの礼儀は守ってもらいますが、

 実家に関する気配りは不要ですよ。」

もちろん、そうはいかない訳だが。

エレノーラもそこは誤解はしなかった。

「2才年上の二人を紹介しますね。

 アンジェラ・フィッツレイ嬢、そしてグレース・ゴードン嬢。」

二人は会釈をした。エレノーラはそれよりは深く頭を下げた。

フィッツレイ公爵家はスタンリー家の寄せ親である。

また、ゴードン家は侯爵家だが経済的には公爵家並に余裕のある家である。

「1才年上のエリカ・スペンサー嬢。」

癇が強いと噂の公爵家の令嬢だが、

先の二人を上回る美貌にまだあどけなさが残りそこが可愛らしくもあった。

こちらを興味深げに眺めながら会釈をした。

エレノーラも答えて深く頭を下げた。


今日は簡単な挨拶で終わった。

解散後にエリカがエレノーラに声を掛けてきた。

「お噂はかねがね伺っているわ。

 只、殿下の婚約者候補としての教育はこれからだから、

 気を引き締めてかかる事ね。

 気がつく事があれば私からも指摘させてもらうからね。」

エリカにとってはこれからしごいてあげるから覚悟しなさい、

と脅したつもりだったのだが、

エレノーラはこの美少女にお言葉を頂けた事に素直に感激した。

「ありがとうございます。

 色々至らない事ばかりですが、

 ご指導ご鞭撻をお願いします。

 始めは王太后様にも皆様にもご迷惑をお掛けすると思いますが、

 一刻も早くその様な事が無くなります様、

 努力させて頂きます。」

ぺこん、と45度以上のお辞儀をするエレノーラには

エリカも毒気が抜かれた。

「そう、良い心掛けね。

 頑張りなさい。」

と、あっさり引き下がった。

この後、アンジェラが声を掛けてきた。

「お久しぶりね。一度会っているのは覚えて頂けているかしら。

 妹が迷惑をかけている様で申し訳ないけれど、

 フィッツレイ家としても私としてもあなたに含むところはありません。

 これからよろしくね。」

社交能力というのはこういうものなのだろう。

妹の事は一応謝っているが、

何なら切り捨てるのでお互い拘りなく付き合いましょう、

と自分と家とは良い関係を築く事を要求してくる。

形式上とは言え寄せ親の娘からこう言われて拘りを保つ訳にはいかない。

「はい、初めてのお茶会でお会いして以来、

 ご無沙汰しており申し訳ありません。

 寄せ子の娘としてはアンジェラ様と共に学ばせて頂くのは

 光栄の至りです。

 よろしくお願い致します。」

「あと、こちらのグレース様共、仲良くして下さいね。」

「はじめまして、よろしくお願いしますね。」

グレースとアンジェラはそれなりに仲が良い様だ。

「はじめまして。色々至らないところがあると思いますが、

 早急に改善出来る様に努力致しますので、

 よろしくお願い致します。」


私の場合は初歩の立ち居振る舞いから学ぶことになる、

等と教育内容について教えてもらった。

そして注意点として

「あと、エリカ嬢はちょっと気分屋のところがあるので、

 そういう時は少し離れた方が良いからね。」

と言うが、エレノーラには彼女が悪意のある人には見えなかった。

「心根はお優しい方とお見受け致しました。

 ご指導頂くだけでなく、

 何かのお役に立てれば、と思っております。」

と言うエレノーラにはアンジェラもグレースも眉を顰めた。

いや、あの娘結構意地悪いから、

忠告はしたわよ?

という気持ちだった。


英語名一覧にエリカとあったので飛びつきましたが、

由来はエイリークの女性化とも言います。

素直に花由来という事にしましょうね。

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