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1−43 魔法院(9)

風魔法の魔導士試験が終わるや否や、

結果も聞かずにエレノーラはタウンハウスに帰った。

睡眠を削って風魔導士試験に備えたし、

土魔導士試験も同じ様にしないといけないのだから、

今日だけはぐっすり眠りたかった。


とりあえず一晩何も考えずに眠ったエレノーラだったが、

日曜の朝には不幸の手紙が届いた。

ジョージ王から手紙が来たのだ。

一際豪華な封筒に当主以外は見る事がない筈の封蝋の形が

エレノーラには恐ろしく見えた。

格調高い文章の内容を要約するとこんな感じだった。

「学院生の間に3属性の魔導士試験に合格となると前代未聞、

 合格の暁には是非王子の婚約者候補に加わって欲しい」


意味分かんない。

スタンリー家では王太子の後ろ盾にはなれない。

兵力はあるがそれはその領地になくてはならない、

魔獣に対する防壁であり、王家に何かあっても動かない。

もちろん、経済力もその兵力を保持する為以上のものはない。

そして、エレノーラは社交力に至ってはゼロである。

王太子妃に取って一番大事な筈のものなのに。

エレノーラの能力は武に偏っており、

王子の后に求められる内政能力も外交能力もない。

だから、この手紙の意図を計りかねていた。

あの曲者の王が例えば激励の意味でこんな手紙を送る筈がない。

では土魔導士試験を落とせという圧力か?

下手に目立つとろくな目に会わないぞ、と言う警告か。


場合によっては家の存続に関わるかもしれない。

これは相談が必要だ。

「お祖母様、陛下からこの様な手紙を頂きました。

 真意を汲みかねているのですが、

 どの様に受け取れば良いのでしょうか?」

「ああ、あたしも頂いたよ。

 どの様にとはどういう事だい?」

「つまり真に受けて喜んで魔導士試験を頑張るか、

 それとも3つ目の魔導士試験を受ける事に対する警告と受け取り

 今から辞退するか、どう受け取ったら良いかが分からないんです。」

「あんたはどうしたいんだい?」

「どっちでも良いです。」

祖母は深いため息をついた。

「馬鹿だねぇ。

 じゃあ、教えてくれている人達はどんな気持ちであんたを指導していて、

 魔導士試験の合否について何を期待しているのか考えてご覧よ。」

あ、その視点がなかった。

せっかく教えてもらっているのに、

特別スケジュールで魔導士試験に備えてもらっているのに、

そういう期待に背いて良いのか…

人の話の裏を読もうとする余り、

そういう大切な事を見逃す自分が本当に恥ずかしかった。

人を蔑ろにすれば自分も蔑ろにされる。

そうして味方が誰もいなくなれば

魔法院に通う前の自分の様に辛いだけの毎日になる。

とりあえず有難迷惑な手紙の事は忘れて試験に集中しよう、

と思い直した。


さすがに追い詰められている顔をしているのか、

月曜はランディーも土魔法の呪文解説をしてくれた。

彼は呪文研究の一環として一通りの属性の呪文を扱っていたのだ。

火曜と木曜はデニスの土魔法の講義と魔法指導を受ける。

土魔法は自分としては感覚が分かっているつもりだったが、

最後になって微妙に魔法制御が甘い事に気付く。

そこをデニスと話し合って微調整をする。

直前になって気づいて良かった…


試験当日の土曜は寝不足だから学院から魔法院への移動の短時間でさえ

馬車の中で寝てしまった。

土魔法に関する魔法理論試験はやはり記憶の穴があったけれど、

風魔法の時もこの位しか書けなかったからまあ何とかなるだろう、

と開き直るしかなかった。

実技はもう手癖で発動していた。

呪文が合っているかどうかも記憶が曖昧な位、

精神的にはへろへろだったのだ。


それでも合格はもらえた。

教官のデニスは穏やかな笑顔でお祝いを言ってくれた。

「合格おめでとう。今はどんな気持ちだい?」

答えは一つだ。

「すぐ帰って寝たいです。」


ランディー無双週間終了です。

1週間以上続いたけど間に登場しない回があったからいいかな。

王家が出てきたらさすがに無理は通せません。

つまり、作者も読者の皆様も待望の!

恋愛パートが!

…開始の前に期末テストがさらっと入ります。


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