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1−33 魔法院(2)

エレノーラは祖母の意向で

父の居る間は土曜は授業が終わり次第タウンハウスに帰る事にしていた。

祖母や父や使用人達に弱みを見せて迷惑をかける訳にはいかない。

無意識にそう考えているエレノーラはもう夜に魘される事はなかった。


日曜の午前中にタウンハウスにて学院が月曜に休みになる連絡を受け、

月曜はタウンハウスから魔法院に行くことにした。

日曜の午後に魔法の練習をしようとしたら、

祖母も父も見たいと言い出したので、

恥ずかしいが今はもう普通に使えて良かった、と思いながら練習をした。

ウォーターフォールを見たいと言われたが...

「水魔法の練習用の十分な排水設備がないから無理。」

と断った。

じゃあ、魔法付与の攻撃魔法だけでも、と言われてやってみたが、

土をぶち撒けるのを非難する様な目で見られた。

言われた通りやったのに...


月曜は父は貴族議会があるので朝から出かけていった。

その議会で初めてエレノーラが二十年に一人の逸材などという話になっているのを

知ることになる。


エレノーラには月曜朝に魔法院から連絡があり、

予定を変更して午後一に魔法院に来るように、との事だった。


そうして時間的な余裕が出来たので、

魔法講義を1時間行ってから魔法実技を行うことになった。


ランディー・アストレイは魔導士資格を持つ男である。

魔導士資格は、初級の10魔法と中級の10魔法を全て発動出来る魔法師であり、

つまり2日掛かりの試験ですべて試験官の前で発動して合格した者である。

そういう実力者であるが、若くして魔法院内屈指の理論家でもある。

「ミヒャエルソンの魔法伝達速度測定実験の結果、

 宇宙の絶対座標に依存する伝達物質エーテルの存在が否定された。

 だから今我々は魔法子という微小粒子が魔法を伝達する物質と考えている。

 魔法子は観測系に依存している。

 つまり恒星の周囲を公転し自転しているこの惑星に従って動いている訳だ。」

はい?星?どういう訳?

「よって魔法子は質量を持ち引力に引かれて惑星上に濃厚に存在していると思われる。

 明確な3次元物質だ。

 であるから、4次元的な性質は持たない。つまり時間魔法は存在しない訳だ。」

おとぎ話は実現しないという訳ね。

「引力に引かれている以上、引力を振り切る事はできないと思われる。

 また、空間上に存在する事から、

 引力を引きちぎり空間を歪ませる事も出来ないと考えられている。

 つまり、瞬間転移や亜空間との接続は出来ない。空間魔法は存在しないんだ。」

うん、分からない。書付けを寮の部屋に置いてきたのは失敗だったよ。

「と言いたい所だが、何にでも例外はある。

 召喚門と使徒召喚だ。

 どう思う?」

ぼうっと聞いていたら危険な話題を振られたよ。

召喚門は記録に残る限り、この250年余りの内に4回出現した。

魔人を崇拝する人類の裏切り者が手引して出来た超上級の闇魔法だと言われ、

強力な魔獣を多数召喚する魔法である。

初代、7代の聖女が使徒召喚を行い破壊したが、

13人目と17人目の聖女が使徒召喚が出来ずに

パルテナ帝国(元13代聖女はパルテナ帝国教会で認定された)と

エセックス王国の国境線が50マイル程後退した。

その元13代聖女はその地位を剥奪され、名前も、多分命も奪われた。

よって17人目、というのは16代聖女とされた人物だが元13代と同じ目に遭った。

聖女を詐称した、と処分されたのである。

本当は教会が認定した人物なのだが、

教会は間違いを認めない為、元聖女が教会を騙した、という形になったのだ。

つまり、聖女など教会にとって都合の良い道具に過ぎないのだと分かる。

そもそも、聖女は今まで21代(加えて2人抹消)の23人教会に認定されたが、

上位貴族と結婚し、聖女を廃業した3人以外は

認定されてから2年以内に行方不明になっている。

初代から250年余りの間に多めに見て46年しか聖女は在位していないが、

そのうち召喚門が4回発生したのは必ず聖女の在位中である。

ありえない確率ではないけれど、

聖女の存在と召喚門の発生は何か関連があるのではないか、とも疑われる。

そもそも聖女は何故殆んどが短時間で行方不明になるのか。

そう考えると、聖女自身および聖女と召喚門の関係は教会の闇の部分ではないか、

と思ってしまう。

そんな教会批判を話題にしたい訳ではないだろうから、

あくまで魔法技術論で流してしまえば良いか...

「聖魔法と闇魔法は4元魔法とは違う原理で発動する魔法という事でしょうか?」

「聖魔法は見たことがあるだろう、どう思った?」

「騎士団の怪我人を治癒しているのを見た事がありますが、

 発動の仕方が違うとは思ったけれど、

 全然違う魔法とは思いませんでした。」

「俺もそう思う。

 だから、聖女独自の魔法と闇魔法は、

 4元魔法とは異なるかもしれない、

 とだけ心に留めておけば良い。」

「はい...」

ふーん。結局危険とも取れる意見が出てくるんだ...

そういうのは私のいない場所でやってよ。

巻き添えで教会に目を付けられるのは嫌だよ。

「人体外の魔法伝達はそういう訳だ。

 一方、

 人体内の魔法の発生は脳後頭部の魔法機関から発生すると言われる。

 これが神経系を通して体内を動き、

 強化魔法として一部筋肉に作用するか、

 あるいは腕の先端にある手か脚部の先端にある足から体外に放出される。

 この様に体内を魔法が伝達するのは、

 例の魔法子が体内の細胞内に存在するからと言われている。

 人により魔法力が異なるのは、

 一つは脳後頭部の魔法機関の能力の差、

 一つは伝達系の効率の違い、

 一つは放出器官の能力、

 一つはそれらを操作する能力の差となるな。」

...一気に言われてもよく分かりません。

「上位貴族が盛んに魔法師の血を一族に取り込もうとするのは、

 これらの能力が遺伝により次代に影響すると思われているからであり、

 結果がそれを真実と示している。」

この勢いで捲し立てられると質問をする暇がないし、

そもそも全部聞き直さないといけない位全く分からない。

「先程、時間魔法がない理由が3次元物質である魔法子が介在するから、

 と言ったが、

 この血筋が魔法能力に影響する、

 というのもこれを支持する理由になる。

 魂がスピリチュアル界である5次元の存在で、

 魔法がその5次元からの作用というなら、

 3次元世界の血族が能力に関係する筈は無いからな。」

いや、もう時間魔法の話は良いです。


1時間の精神疲労の後、

水魔法を練習する。

初級魔法7つを行った後、

新たに残り3つを教えられる。

そこまでは良いのだけれど、

もう中級魔法に入ろうなどとランディーが言い出す。

そんなに直ぐには出来ないと思うのだけれど、

無理やり20分連続で呪文詠唱と再指導を繰り返して覚えさせられてしまう。

こうして月曜は初級魔法が終わり、中級魔法2つも終わったことにされた。

学院に戻ってこんなに上手に出来るという自信はない...


精神疲労でふらついて歩くエレノーラを見かねて水魔法部の女性が声をかけてきた。

アマンダ・ロバートソン子爵令嬢はランディーの同僚だ。

「大丈夫?体調が悪いの?」

「...大丈夫です。大丈夫じゃないですが。」

「少し休んでいったら?」

「いえ、体調は大丈夫です。

 ただ、教えてもらっている事が殆んど分からなくって...」

「ああ、彼は遠慮を知らないからね。」

「その、どなたかもう少し易しい所から教えて頂ける人を紹介してもらえないでしょうか。

 別の日に来ますから。」

「担当を代えて貰わなくて良い?

 何なら上司に頼んでみるけど?」

「あの方が優秀な事は分かるので、出来れば指導は受けたいのですが、

 何分、分からない事が多すぎるので、

 補習みたいな事があれば良いなと思いまして。」

「うーん、私で良ければ本当に初歩で良ければ教えるけど。」

「ぜひ!明日また来ますので、お願いできますか?」

「ええ、3時くらいに来られる?」

「多分4時頃になると思います。」

「じゃあ、そういう事で。」

「はい。」

エレノーラの足取りが軽くなった。

そんな彼女の後ろ姿を見て、アマンダは思う。

真面目ねぇ...ある意味ランディーの奴と合ってるかも。



石川県地方の地震にて被災された方々のご無事をお祈りしております。


そんな元旦にゴリゴリのこの話、申し訳ありません。

あらすじでランディー無双週間って書いちゃったんで投稿しない訳にはいかなかくなった。

ちなみにランディーは真面目に喋ってますが、

作者としてパロディーから入った魔法理論は話半分で聞いてね、

というメッセージです。

3次元物質が空間魔法に寄与できない件が舌足らずで

上手く説明できずに申し訳ありません。

せめて自転と公転と重力と大気圧がなければワームホールくらい作れるかも。

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