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1−21 冬休みの練習(3)

ウォーター系の投射系魔法も、防御魔法も上達しない。

全くと言って良い程に。

たぷん、と決壊の繰り返しばかりで嫌になる。


ウォーターボールとウォーターシールドだけでも

短期間の家庭教師を雇えないかと真剣に考えてしまう。

図書室の本の在り処はもう殆んど覚えてしまった。

上期の試験前の3ヶ月間に

ウォーターボールとウォーターシールドのコツを書いた本がないか探し続けた結果だ。

確かどこかで魔法師就職の手引本を見た記憶がある。

探して手に取り、読んで絶望した。

王立魔法学院の卒業生は卒業後15年は王国に登録され、

その就職契約は1年単位と法律で決まっているのだ。

どこかの貴族が露骨に魔法師を集めるのを禁止するのが目的と思われるが、

一方で魔法師が勝手にやめられない様に、

あるいは雇用側が不当解雇出来ない様に、

1年の途中で退職・解雇が行われた場合は違約金6ヶ月分を支払う義務まである。

兎も角短期で雇う事は出来なくなっていて、

そもそも年度の途中に雇える様な魔法師は相当実力がないと思われる。

最初から雇われないレベルか、違約金を払ってでも解雇したいレベルなのだ。


ウォーターフォールの様に

もしかして上手くいかないかと思ってアイスボールの呪文を唱えてみる。

当然ウォーターボールを固める呪文なのだから、

発現した水を上手く保持できないと凍りきる前に崩壊する。

ウォーターボールは回転して投射方向に伸ばしてごまかしているが、

水を回転させていれば当然凍らない。

再びウォーターボールの問題に戻ってくるんだ。

ウォーターランスも水量が増える為、回転させようとしても途中で決壊する。

ウォーターランスが出来ない以上、それを凍らせるアイスランスも出来ない。

初級魔法と中級魔法があり、初級魔法を習得してから中級魔法に進むのは、

やはり基本ができないと応用も出来ないからだ。


ぺたん、と地面に座り込んでしまう。

思わず地面を叩いてしまう。


どうしろって言うの!


要するに誤魔化さずにウォーターボールに向き合わないといけないのだが、

入学してから4ヶ月以上色々と試行錯誤の結果が現状なんだ。

普通にやったら決壊するのが私の魔法なんだ。

瞼をぎゅっと閉じても、唇をぎゅっときつく閉じても止まらない。

もう感情が止められない...


基礎の基礎のウォーターボールが出来ない以上、

この先の魔法もほとんどできない。

問題ないのは乾燥させるドライ位だ。

水魔法師なのに水が扱えずに乾燥しか出来ない。

誰がどう見たって馬鹿にする対象にしかならない。

領地騎士団に戻ったって、

王都で何も学ばなかった役立たずの魔法使いと馬鹿にされ続けるんだ。


蹲って泣き続ける以外何も出来なくなった。


もう、何もかも放り出して逃げてしまおうか。

本当は魔法師なんてなりたくないんだから。

貴族達も私を受け入れてくれないし。

家も名も捨てて、

どこかで薬草を育てて売って細々と暮らすんだ。


......無理。


せめて大人と認められる16才にならないと何も出来ないし、

平民の中には酷い男達がいることも知っている。

背後に力のある家のない若い女が一人で生きていける訳がない。

騎士団の活動を学んで分かった事は、

のどかなスタンリー家の領地でも、

警察機関や暴力機関である騎士団が巡回しないと

犯罪を抑えられない事だ。


学校を卒業する年まで成長しないとどうしようもない。

時間はまだ2年半ある。

女一人でも生きられる位に剣の技術を磨くか、

無駄な努力と分かっていても魔法の練習を続けるか...


その為にお金を払ってもらっているんだから、

魔法を努力するしかない...


とにかく、冬休みが終わるまで頑張ってみよう。


涙を拭って立ち上がる。

決めたんだから、やろう。

もう泣かない。

少なくとも冬休みの間だけは。

だってもう2ヶ月分位泣いたんだから。


蒲公英の花を咲かせたいのに

向日葵の花を望まれる

そんなのできる訳がないと思うけど

自分が何の花を咲かせるかなんて誰にも分からない

もしかして

立葵みたいな花が咲くと良いね


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