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3−24 王家の判断(1)

 ジョージ王は用意周到な男である。

その用意は人物観察と個人情報収拾が中心となっている。

その萌芽は5才にまで遡る。

その時、彼に付けられた家庭教師が自分を見ていない事に気づいたのだ。

教師は自分が育てた理想の生徒を見ており、

その理想とジョージ王子との差異に関して王子を叱責した。

やっていられない。

この男は5才の子供に理想の人間を押し付け、

叱るだけでそんな人間が出来上がると思っているのである。

だからジョージ王子は手を抜いた。

学ぶべき事は頭に入れたが、表では知らない振りを続けた。

ついでに母親に泣きついた。

あいつ教えるの下手だ、という内容を上品な言葉で呟いた。

母こと王妃はこの子供が決して素直ではない事は知っていたが、

結果が出ない教師を飼っておく程お人好しではなかった。

そういう冷徹さを表に出さずに上手く処置ができる母は

ジョージ王子にとって手本となる人間だった。

そんな教師を連れてくる父より母を慕った。

そうして気に入った教師相手ではすこしずつ結果を出し、

なおかつ学院卒業時に最高の成績が出せる様に結果を調整した。

最初から優秀な成績を維持して高止まりであるより、

右肩上がりの方が他人には良い印象を得られるだろうと思ったのだ。

また、つまりこの男は人こそ最高の財産である事を知る男である。

幼少時から他人との付き合い方を考えていた。

頭は良いが人の悪い奴、

頭はそれほどでもないが信用できる奴、

その他長所短所を頭に入れて将来を見据えた付き合い方を続けた。

そんな長年の観察結果を現在の政治上の人材登用に活かした。

そんな治世に、

息子のアーサーが学院の行事で魔獣に襲われる事件があった。

活躍したのは同級生のスタンリー家の娘との事だった。

アーサーが報告する言葉に熱があった。

まあ、息子が望むなら伯爵家の娘を与えてやっても良い。

こんな辛いだけの稼業に就くのだから、

家族ぐらい選ばせて貰えなければやっていられない。

だが、情報がなかった。

何せ最果てから来た少女である。

しかもキャサリン・フィッツレイが社交界に入れないようにしている。

仕方なく、学院生活の情報を中心に集めた。

金の無い家だ、学院で魔法練習に努め、学院図書室で学んでいる。

模範的な生徒だが、2組だから成績に反映されない。

全く、学院改革は必須だった。

人間の情報を集める場所なのに情報が当てにならないのだから。

さて、エレノーラ自身は努力家である。

見習い騎士として領地騎士団に戻る為の様だ。

それなのに実家には滅多に近寄らない。

その齟齬が気になった。

だから謁見の際に見定める事にした。

賢い娘だ。

ジョージ王は敢えて侮られる様な自分の情報を放置しているのだが、

この娘は目の前の人間を見て判断して警戒している。

ただ、王家に諂う気は無い様だ。

つまり出世などは願っていない。一方、実家に対する愛着はない。

だから家から出られる婚姻の餌をちらつかせた。

一瞬娘は嫌がった。

王都に残り王家の影響下に入る事を嫌ったのだ。

つまりこの賢い娘は僻地に隠れたいとこの年齢で思っているのだ。

権力者から隠したい札を持っているのだ。

その正体が分からない限りは王家に入れる事は出来ない。

だから魔法院で人となりを調べさせた。

するとランディー・アストレイがおかしな行動をしだした。

つまり娘が隠す札は小さくない。

経過を見る事にした。

但し、ランディーがやり過ぎた。エレノーラがやり過ぎたとも言うが。

なら母にも観察させるか、と婚約者候補に入れた。

学ぶ事には意欲的だが根本的に婚約者になる気がない、との報告だった。

それはそうだろう。王都から逃げたいのだから。

ところがシンシア・ラッセルの魔法障害を発見・解決した事で、

隠した札はあらかた分かった。

だが、まだ逆もあり得る。

闇魔法の血を王家に入れる訳にはいかない。

だから教会に見定めさせる為に王城の結婚式に参加させた。

教会に襲われた後なら3者共に納得する様な、

王家が保護する理由も出来るからだ。

だが、エレノーラは上手く襲撃を回避した。

荒事が得意にも程がある。

まあ、良い。

教会から価値を認められない以上は今後の襲撃はない。

後は追い詰めて正体を表させるだけだ。

今後はアーサーの守りだけ考えれば良い。

その最後の砦がエレノーラなのだ。

となれば襲撃方法も闇魔法に偏る。

であればエレノーラに負担をかけて、

切り札を使わせれば良いのだ。

そうして、学院の守りは敢えて強化しなかった。


 まあ、副次的に教会側の人形が失言をして教会の権威が失墜したが。

それが原因で召喚門まで使う羽目になる。

そんな予想出来ない行動を取る程、連中は愚かだったとは。

しかもその召喚門自体、人形が無力だから本来の威力が出せないと聞く。

つくづく役者は選ぶべきである。

そもそも教会は女を使い潰すやり方を止めるべきだ。

騎士なら男上位の扱いも良い。体格に性差があるからな。

でも、知力と魔力に性差はない。

それなのに性差別をするから今代の聖女に逃げられる。

そうして本拠地を捨てて逃げようとしても王都から逃げられるものでもない。

エレノーラを追い詰める為に不審者が入ることは許していたが、

出る方は厳しく取り締まっている。

五十人に及ぶ教会の人間を捕らえた。

聞く事だけ聞いたら埋まってもらうしかない。

元々大聖堂で死んだ事にしようと考えていた様だし。

そもそもエレノーラは女神に名前を教えてもらった、

つまり神の言葉を賜る預言者だ。

人の決めた教皇や聖人より宗教的な立場は上だ。

なにせ神が選んだ人間なのだからな。

そのエレノーラの敵は女神の敵だ。

捕らえた者達を速やかに処刑しなければどんな天罰があるか分からん。


 さて、そろそろ準備が出来た様だ。

あの娘の間抜け面でも拝ませてもらおうか。

 おっさんモノローグを喜んで読む方が何人いるか…

長くなってすみません。

あと、感想に対してごまかし回答をしておりましたのを

ここで謝罪します。

教会側の内幕は書かないのか、という趣旨の感想に対して、

私って悪役書くの下手だから、と返答しましたが、

実際にはこの王のモノローグで代用するつもりだったので、

あの時点では何も回答出来ませんでした。

魔人の立場、ノエルの立場も書きましたし、

3−21のランディーの解説は話をし過ぎな位に思っていますが、

教会側の理解の為には必要かと思って急遽追加しました。

そういう訳で謎はあらかた情報を出したかな、と思っています。

まあ、本作で陰謀情報を隠すというのは今後も利用するつもりがあった、

という初期構想もあるのですが…

今考えると、これ以上書こうとすると何か安っぽくなりそうです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 黒幕が協会の人間だと思わせて 実は王様だった点。  「自分だけかもしれない」) (苦笑) [気になる点] 事が起こる前後に ほんの少しでも良いので指示役と実行役のやり取りをはさんだ方…
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