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1−13 忘れていた緑

魔法理論の授業というのは本当に進みが遅い。

魔法の歴史、理論、そして各属性の初級魔法の解説となるのだが、

上期の4ヶ月で4属性各5種類の初期魔法の解説が終わるのだろうか。

9月に上期が始まって12月初旬からテストになる。

11月には自主的に5番目の初期魔法まで練習した方が良いかもしれない。

授業中に真面目に書き込みをしているとまた揶揄するひそひそ声を耳が拾う。

連中も飽きないなぁ。感心するよ。


午後には剣の授業があるが、

どうも私には体格を活かした無理押しの攻めが効くと思われているらしい。

確かに連続攻撃には慣れていない。

領地騎士団の見習い騎士の子供達は無駄に大振りをしたがる者が多く、

避けてがら空きの胴に打ち込む事に慣れているから。

打ち合いの勝率が上がらない。

いらいらする…


放課後の魔法練習も目に見える成果がない。

地道にやっていくしかないのだけれど。

呪文の合間に水を整形するタイミングが必要になるから、

滑らかに唱えられない呪文が如何にも未熟に聞こえる。


部屋に戻ると、

私室の物置部屋まで下女が鉢植え関連の物を運んでおいてくれた。

鉢植えに薬草を植えた状態で購入したらしい。

南側の窓近くに置く。

夕食を終えたら水遣りをしよう。


4つの鉢植えを2つの窓の近くに分けて置く。

じょうろで軽く水を含ませて、

2番目の鉢の草の根本近くに手を寄せ、

土の中の成分を集めるように魔法を注ぐ。

呪文なんていらない。

すこし葉の元気が増した様な気がする。


3番目の鉢の草には、水が昇る様に魔法を注ぐ。

もちろん呪文なんていらない。

草の天辺の方の瑞々しさが増した様な気がする。


4番目の鉢の草にも魔法を注ぐ。

いつも通り、地元でしていた様に…

…不味い。

ずっと考えないでいた事なのに、地元の事は…

地元の山々を思い出してしまった。

木々の緑を眺めながら呑気に半日歩いていた幼い頃を思い出す。

あそこでも独りだったけれど、

木々草花の息吹が、川のせせらぎが私に話しかけていたから平気だった。

でも今は…

思いが一杯になり、瞳から溢れてしまう。

ずっと堪えてきたのに...

蹲って、立ち上がれなくなる…

(ごめんね、こんな気持ちの人に魔法を注がれても、

 嬉しくないよね…

 明日はちゃんとするから…)


鉢植えはもちろん応える事はないのだけれど。

その息吹は感じた様な気がする。


地元に戻った時の安心感はさておいて。

地元から離れた時に感じる郷愁は、

無意識に逃げ場を求めている心が感じさせる錯覚ではないかと思ってます。

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