1−12 タウンハウスにて
「あんたはこんなに家に顔を出さないで、薄情な娘だよ。
ちゃんと婆さんに顔を見せに来なさいよ。」
「まだ学校に慣れてないのよ。
勉強もペースが分からないし、
毎日図書館で勉強してるんだから、
暇は全然ないって。」
…今日は外出してたけどさ。
「あんたは本当にああ言えばこう言うで、
誰に似たんだろうね。」
小煩いお祖母様に似てるかもしれないね。
口には出さないけど。
「ともかく、魔法実技は苦戦してるの。
何か参考書を探してるんだけど、
丁度水魔法を分かりやすく書いてある本が図書室に無くてね。」
「あんた達には実家で家庭教師を付けられなくて悪いけどさ、
爺さんもそれでも優秀だったんだから、
頑張っておくれ。」
どうも上位貴族では10歳位から家庭教師を付けているらしい。
2年以上の差があったらなるほど1組と2組以下は差が出るよね…
尤も、スタンリー家は火魔法の家系なので、
長兄は父に火魔法を習っていた様だ。
「まあ魔法はまだ良い方だけどね。
乗馬はまだ馬と上手に付き合えなくて。
上期は難しいかもしれない。」
「それは気長にやんなさい。
魔法第一、その他の学科第二、
剣と乗馬は令嬢は取らなくて良いんだから。」
「令嬢じゃなくて見習い騎士なんだけどね。」
タウンハウスは当然貴族なりの食事が出る。
これでも質素な方らしいけど。
「ちょっとそこ、音を立てない!」
お祖母様、卒業したら私は領地騎士団に入るのに、
行儀作法を厳しく指導するのは止めて。
美味しい筈の料理が不味くなるって。
伯爵家のタウンハウスと言っても、貧乏貴族である。
入浴の手伝いのメイドはいるが、
体を洗うのは自分だ。
寮でも一人でやっているから、
お湯の準備をしてくれるだけでも有り難い。
タオルドライもしてくれるし。
一応、天蓋付きのベッドで寝る。古いけど。
特別寝心地が良いとも思えないベッドなのに、
寮よりぐっすり眠れるのは何故だろう。
半年位しかこのベッドでは寝ていないのに。
日曜は夕飯までタウンハウスで過ごす。
ここでは悪意がないが…
「ほら、カップの上げ下げが乱暴だよ。
優雅にやんなさい。」
口は淑女のそれではないが、
お祖母様は行儀作法を私に厳しく躾けようとする。
「卒業までは王都に貴族として居るのだから、
何があるか分からないからね。
ちゃんと行儀は身に付けておかないと苦労するよ。」
「は〜い。」
「言葉は伸ばさないの!」
園芸店で鉢植えその他を買いたいというのはお許しが出た。
「せめて花にしなさいよ。」
「慣れたらね。」
という事で、月曜には寮まで届けてもらえる事になった。
お小言はともかく、
敵意がないのは良い事だ。
でも、できれば日曜も復習をやりたいから、
タウンハウスに来るのは月1にしたい。
日曜は学校施設は閉まっていて、
図書館も演習場も使えないからあくまで書付の復習だけだけれど。
5つ目のブクマ頂きました。
5つのブクマ全てに感謝していますし、
読んでいただいている皆さんにも感謝しています。
ペースの遅いこの物語を読んで頂けるという事は、
学園生活を読みたい人がいるんでしょうね。
年内は毎日更新出来る様に致します。