3−10 騒動再び(3)
焼きます。
駄目っぽい方は無理に読まなくても…良いけど…
ちょっと後のエレノーラの気持ちに感情移入出来なくなりますが。
騎士団演習場に設置された天幕は司令部用の大型の物だった。
その中にアイスボックスに包まれた死体と血液を搬入した。
私の魔法でだが…何せ呪いが移る可能性が無いのかどうか分からない。
私以外の魔法の接触を避けたのだ。
「エレノーラのアイスボックスの一部を液化してそこから真鍮の棒を入れ、
血液を浄化する。」
とりあえず呪いの血を何とかしないと何も出来ない。
これで聖魔法部副部長が浄化を行い、
緊急事態に備えて聖結界の準備を聖魔法部長がする。
私の前にはガラスの衝立が2枚、
もしもの時に血液の飛散を防ぐ目的で設置され、
現場を見ながら魔法制御をする事になった。
氷壁の一部を水壁に変えた。
聖魔法部副部長は真鍮の棒を中に入れ、
浄化魔法をかけたが…
アイスボックス内で蒸発した血液が暴れまわる。
浄化って一息にするもんじゃないの!?
アイスボックスの氷が溶けない様に魔力を注ぐが、
そもそも私の魔力を突破する程には蒸発した血液に魔力はない。
え?
注ぎ込まれる聖魔力が空間に充満するのに時間がかかったが、
15分程で充満した聖魔力が呪いを浄化しきった。
隣に控えていたランディーが問いかける。
「何か気づいたか?」
小さく首を横に振る。
聖魔法部に魔法子コントロールの情報が入っているか分からないからだ。
「分かった。」
ランディーは引き下がった。
浄化は終了した。
死体はどうするのかと思っていたら、
演習場の端に穴を掘って、そこで焼いた後に埋めるとの事だった。
こんなところで、と思ったが、
「そもそもここは罪人を埋める場所の横に建物を建てたくなかったから
演習場にしているんだ。
この端の辺りを掘ると骨が出てくる。」
こっちには二度と来ないよ。呼ばれても拒否する。
ランディーが私に代わってアイスボックスを溶かし、
賊を溶かした。
さすがに周囲が気を使ってくれたのだ。もっと早くそうして欲しかった…
ブライアン・ノット総長の火魔法の火力で一気に死体を焼いたが、
それでも漂う匂いは少なくなかった。
とりあえず匂いが付かない様に風魔法で防御したが、
隣のランディーも同様に風魔法で防御していた。
皆平気かと思ったがデリケートなところもある様だ。
それにしても火魔法師は普通にこういう事をする訳だ。
火魔法師でなくて良かった。
人の死体を焼くなど正視出来るものじゃない。
ただ、本当に闇魔法師の死体が何も起こらない状態か確認出来たのは良かった。
こうして闇魔法師の死体を焼く事で今後の呪いの発生は避けられると思われた。
水魔法部に戻ってランディーに再度質問を受けた。
「王城の結婚式の日に攻撃を受けた際には賊の右手の近くの魔法子が
魔力を失っていったんですが、
今回の闇魔法の呪いは私の魔力に反発していました。
呪いは空間内の魔法子に影響していないんです。
前の攻撃は闇魔法ではないのでしょうか…」
「シンシア・ラッセルの際はどうだったんだ?」
「その時は魔法子を見ることは出来ていなかったので、分かりません。」
ランディーは私を一瞥した後、手元に視線を移した。何?
「闇魔法ではあっても呪いではない可能性と、
あるいは聖魔法だったのかもしれない。」
「え?聖魔法で魔力を奪えるんですか?」
「浄化は闇の魔力を奪うじゃないか。」
「あ、確かに。」
「その亜種なのかもしれない。聖魔法も闇魔法も実態は闇の中だ。
聖魔法でも上級魔法は完全に管理されて上層部か教会が認めた聖魔法師しか
知り得ない。」
なるほど教会の闇は深い。
「後、気になったのは闇魔法師は浄化で消滅しないのですね。」
「闇魔法も呪いも滅多に明らかにならない。
だから俺も聖魔法部も大した事は分からん。
呪われた人間を浄化すると肉体が欠損するという伝承はあるが、
実際に見た奴はいないだろう。
俺が物心ついてからは、
呪いの疑いはあっても実際に教会が浄化した例はない筈だ。」
それは別の疑いがあるんだけど。
その日の昼食の時間は既に過ぎていたが、何も食べたくなかった。
夜はスープしか口に入らなかった。
翌日、魔法院と騎士団の合同で現場検証が行われた。
勿論、魔法学院は授業が中止され閉鎖されている。
寮生も生活エリアから外に出ることを禁止された。
私が感知した賊の侵入、逃走ルートが地図に書き込まれ、
現地で確認したところ、
どうやら通用門に細工がされていてそこから侵入された様だった。
細工は誰が行ったのかという問題があった。
教室での再現、逃走する賊の追跡および現場での魔法戦闘の再現は辛かった。
異質の魔法での攻撃と倒れていく賊、
その賊が演習場で焼かれた事が思い出された。
青くなった私を漸く魔法院と騎士団が解放してくれた。
その日は何も食べられず、入浴だけして布団に潜り込んだ。
狐の時も土葬死体の話をさらっとしてしまいました。
あの時は警告なしですいませんでした。
土葬とか土着っぽくて言葉としては好きなんですが。
実際見るとさすがに嫌だとは思います。




