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3−4 宴の後

 魔法院の聞き取りが終わったエレノーラの事を、

王子の使者が待っていた。

王子の執務室の隣の部屋で、侍女達が茶器と茶菓子の準備をしていた。

アーサーの後ろには侍従が、私の後ろには女騎士が立っていた。

「大変な目に合ったね。王城でこの様な事態になって済まない。」

アーサーには表面的な事しか伝えられていないのだろう。

この人の所為じゃない、とは分っていても、イラつかずにはいられない。

そして、もう少し危機感を持って欲しい。

王家を攻める前に、城を攻める前に、王子を守る騎士を攻めたのだ。

その先にある目標は自分だと理解して欲しい。

「私の事は構いません。

 今回の件で、シンシア・ラッセル嬢の魔法障害が人間集団による

 破壊活動である事が明らかになりました。

 殿下も優先順位の高い目標と思われます。

 周囲に気をつけて頂きます様、お願いします。」

言葉は進言なのだが、言い方にアーサーは壁を感じた。

「うん。分かった。

 君は大丈夫だった?」

「問題ありません。ただ少し疲れました。

 失礼させて頂きます。」

王が私をただの道具と思っているのは分かった。

だからこの関係はただ道具を守る為の処置のおまけに過ぎない。

…この気持ちの名前なんか知らない。

ただもう少しの間、こんな時間を過ごしていたかった…

単なる未練だ。もう終わらせよう。

返事も待たずにエレノーラは去っていった。


 よろよろとした足取りでアーサーは執務室に戻った。

今日は親戚付き合いで疲れるからと、

終了時間に合わせてマイクとギルバートが訪問していたのだが、

戻って来て机に突っ伏すアーサーを見て、何やってんだこいつ、

と思わざるを得なかった。

マイクが声をかける。

「どーした?」

「…多分嫌われた…」

「何があった?聞かせろよ。」

今日あったらしい事をアーサーが知っている範囲で聞かせた。

マイクは馬鹿だが愚かではない。裏をすぐ悟った。

「お前、もう諦めてアンジェラと結婚しろ。」

「何でそういう結論になるんだよ。」

「いいか、女達が好む話に、

 結婚後に舅と姑にひどい目にあった女が夫を見限って離婚し、

 新しい男と幸せになるっておとぎ話がある。

 再婚したら条件はもっと悪くなるからそんな話ある訳無いんだが、

 そういう夢を見たくなる位、夫というのは義理の父母から守ってくれない。

 今回はそれで嫌われたパターンだ。」

「いや、父がいじめている訳じゃないし…」

そもそも婚約すらしてないぞ。

「教会がエレノーラを狙ってるという情報があったから罠に使ったんだろ。

 エレノーラは知っていてもお前は知らない情報があるんだろう。

 甲斐性のないお前を見限ったんだ。

 もうアンジェラに一生支えてもらえ。その方が楽だ。」

「楽な訳ないと思うけどね…」

しかし、確かにエレノーラの中に怒りがあった。

そこを配慮出来なかった自分は甲斐性がないのかもしれない。

一方、ギルバートからするとジョージ王はアーサーを思いやる良い父親だ。

そこまで冷酷になるとは思えないのだが。

それでも最高司令官だから冷徹になる必要はあるのか…

「アーサー、ちょっと想像しろ。」

「うん。」

「一人の男が戦場から帰ってきた。」

「エレノーラは女だよ。」

「お前が想像出来るように例を挙げてるんだ。

 まず想像しろ。」

「分かった、続けてくれ。」

「たった一人、孤立無縁で戦場に行かされた男だ。

 敵中突破を命じられたかもしれないし、

 一人で前線の後方に浸透して破壊活動をする様に命じられたかもしれない。

 いずれにせよ味方がいなかった。」

「酷い話だね…」

「戦場ではよくある話だ。

 それで、生きて帰ってきた男はどうなるか、3つのパターンがある。

 一つは一人前の立派な大人になるパターンだ。」

「難しい仕事を成功させて一皮むける場合だね。」

「まあな。世間の非情を知り、甘えを捨て、それでも目的を遂行する

 鋼鉄の意思を手に入れたんだ。

 こういう得難い男は指揮官候補になるのだが、

 そんな例はまれで一割以下だ。」

「そうだろうね。」

「普通は後の二つのパターンだ。

 周り全てを敵だと思って心を閉ざすパターン。

 もう一つは全てが嫌になって逃げ出すパターンだ。

 エレノーラが逃げ出すパターンだったらマイクが対応しろ。」

「俺!?何で?」

「逃げ出す算団だ、

 上手くいったら困るから実行力のないマイクが話をするのが良い。」

「他人の事を役立たずみたいに言うなよ。」

「お前は知識はあっても実行力がない。

 実際の行動を相談するには最悪の相手だ。」

「馬鹿のお前に言われたくないぞ。」

「俺は馬鹿なりに馬力はあるから問題ない。」

駄洒落言ってる場合かよ、とアーサーもマイクも思った。

だからアーサーが口を挟んだ。

「ギルバート、話を戻してくれ。」

「あ、悪い。

 エレノーラが周り全てを敵だと思っているなら、

 お前が話かけて敵じゃないって知らせてやるんだ。

 心が弱っているなら簡単に落ちるぞ。」

「それ何か嫌な男のやり方だよ。」

「結婚なんて男と女の勝負だろ。

 上手く結婚した奴の勝ちだ。

 勝負毎にプライドなんかいらない。

 勝つために周到な計画と精緻にして思い切りの良い行動が必要なんだ。」

「精緻なのか思い切りの良い勢いのある行動なのかどっちなんだよ。」

「とりあえず相手を良く見ろ。

 敵を知り己を知れば百戦して危うからずだ。」

「…そうだね。

 こちらが話したい事を喋るんじゃなく、

 相手がどんな気持ちでいるかをまず考えないといけなかったんだ。」

「そういう事だ。」


 ギルバートとエレノーラは同類だ。

騎士の事、戦略の事等なら理解しようと努力が出来る。

でも、今回のジョージ王は政治家としての顔で行動している。

だからギルバートはそれを想像する事すら出来ない。

一方、エレノーラはジョージ王の政治家としての面を見せられる事が多く、

だから彼を好きになれない。

言動が異なるなら行動から判断するのは正しい事も多いが…


 中学2年生くらいのおばかちゃんな会話を想像してみました。

中学3年だと結構すれてきますが。

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[一言] 「アーサー王子ガンバレー」
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