表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/131

2−47 王城での教育(7)

 ハワード公爵家の長女ジェシカ・ハワードと

ハットン伯爵家の嫡男テレンス・ハットンとの結婚式が

夏休みに行われる。

「エレノーラさんは花嫁の付添人の一人として参加してもらいます。

 社交界に縁の薄いエレノーラさんにとっては良い顔繋ぎに

 なると思います。」

「エリカ様だと花嫁より目立ってしまうので、

 私にお鉢が回ってきたんですね。

 引き立て役頑張ります。」

王太后の突然のご指名に顔を強張らせなかった私を褒めて欲しい。

貴族の結婚式なんだ。

どうやったって教会の司祭以上が出てくる。

その他の有象無象も当然付いてくる。

嫌味王め、嫌味では気が済まなくなったか。

平然と人を餌にして教会を釣り上げようとしている。

この場合、事後の餌の生死は問わない。

教会を糾弾出来れば良いんだ。

「淑女は卑屈な発言をしてはいけません。」

「はい。申し訳ありません。」


 斯くして宗教のおさらいの講義になった。

この世界の宗教では、

太陽神と大地母神により様々な生き物が生まれた事になっている。

そして最期に、人間やその他の動物の守護者として昼の女神が、

魔人達と魔獣達の守護者として夜の女神が生まれた。

意外だったのは、昼の女神と夜の女神の名前は王家にも伝わっていないとの事だ。

秘跡に関わるから教会が秘匿しているのか、

それとも太陽神・大地母神の様にただ一人しかいない存在だから

名を持たないのか。

教会の教えを国内に広めて250年、

今となってはそれ以前に民衆の間に創生神話がどう伝わっていたかを

確認する術はない。

建国以前に文章で残っているのは滅んだ王家の記録や貴族の記録であり、

それはつまり各地の支配者が自分に都合の良い様に広めようとした

神話伝承だからだ。

そんな偽典を一掃しようとしたのが教会の総本山をバックに

パルテナ帝国が行った周辺の異教徒征伐という事になる。

しかし、名も無い神が本当の神だと言うのか…

今最も勢力のある宗教は単に最も力のある国が保護する宗教に過ぎず、

或いはそれが常識になってしまったから国も支持しているに過ぎない。


 結婚式自体は王城内の礼拝堂の副室で行われる。

主室は王と王太子が関わる儀式に使われるが、

ハワード公爵の娘は王の姪になるので王城内の礼拝堂の使用が許され、

かつ王家と格の違いを示す為に副室が使用される。

何か切ないものがある…

式では花嫁の付き添いのハワード公爵に続き、

花嫁の妹エイミーと私が付いて行くだけだ。

結婚式自体に参加出来るのは良い経験なのだが…

当に餌になる為の参加だ。

個人的には王城も教会も関係のない所で結婚式はやりたい。

もっとも叙爵後の結婚となるから教会と無縁ともいかない。

領地は間違いなく貰える筈だ。

そことその領民に私を縛らせる訳だから。

縛る物は多いほど良いだろう。

これから何度教会との間の緊張関係に直接身を晒さねばいけないのか。

まあ、この結婚式への参加が試金石になる訳だが。

成る程、これを見越して叙爵は後に回したのだ。

ここで役立たずになる可能性が高いのだから。


 式次第は両家親族入場、花婿入場、花嫁入場、

この後、私はハワード公爵家と王家側の末席に立つ。

聖歌の後に説教、神に対する誓約、神の代行者としての司祭の祝福、

結婚指輪の交換である。

個人的には教会がどこまで真面目かが分からない為、

神の代行者としての祝福という所で眉をひそめたくなる。

兎も角世界に祝福されるべき両人の目出度き門出だ。

神妙な顔つきをするしかない。

式が終われば両家関係者でパーティーが行われるが、

これには私は当然参加しない。

明らかに教会関係者に私を晒す目的での式への参加になる。

多少良心的なのは王城内の礼拝堂での式典だと言う事だ。

王を始め王家が複数参加する式典だから、

近衛の護衛役はそこら中にいる。

命を奪う様な事をすれば即取り押さえられるし、

そんな事になったら教会もただでは済まない。

だから、相手が何をしてくるか予測し備える必要がある。

それでも魔法を使えないレベルにまで

私にダメージを与える必要がある筈だが。

もちろん、王太后から何らかの指示はない。

王太后は尊敬できる人物だが、

それは彼女が私より公を優先出来る人物だからである。

この場合、国家の利益を優先しエレノーラ・スタンリーの生命は二の次である。

それが公人としての王太后の努めであり、

だから称賛すべき人物なのだが…

今回、それは私以外の人間なら抱くべき敬意である。

結局、頼れる物は自分自身だけだ。

…いつもの事だ。特別な事態じゃない。


 そろそろ坂道を転がり落ちていきます。

誤字報告を頂きました。

ありがとうございます。

でも今余裕がないので、

週末に見直しさせて頂きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ