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2−46 シンシア再び

 シンシア・ラッセル公爵令嬢が魔法学院の入学前試験に合格した。

入学出来ないよりは良い事だが、

魔法障害のお陰で1年遅れの入学となる事、また、

公爵令嬢としては魔力が弱い事は入学後に彼女を苦しめるだろう。

とりあえずシンシアに呼ばれてラッセル家をまた訪問する事になった。

こちらは討伐、あちらは試験対策の魔法練習で忙しく、

会う事が出来ないでいたのだ。


「エレノーラお姉様、ご無沙汰しておりました!」

その後の手紙のやり取りで”お姉様”呼ばわりされている。

お兄様と呼ばれるよりは良いのだが。

彼女には二人姉がいるが、

領地に引き籠もっている間に話しづらくなってしまったとの事だ。

「お久しぶりです。シンシアさん。

 魔法学院入学前試験の合格おめでとう。」

彼女は私に呼び捨てされたい様だが、”さん”付けで許してもらっている。

「はい。お姉様のお陰です。」

「あの後、先生と努力されたお陰ですよ。」

「でも、お姉様が直してくださらなかったら未だに魔法は

 使えないままでしたから。」

「では、二人で半分ずつのお陰としましょうか。」

「はい!」

子犬の様に人懐っこく笑う彼女に、初めて会った時の面影はない。

自分としては教会にどう思われているかが気になるところだが、

こんなに素直で可愛い女の子が思い悩んで沈んでいるよりは良い。

教会に対しては自衛していくしかない。


「昔の知り合いとも連絡を取っているのですが、

 また打ち解けられた人もいるけれど、

 なんとなく上手く話せない様になってしまった人もいるんです…」

「まあ、学院では1年下になってしまったから、

 改めて同級生と仲良くなっていくのが良いでしょうね。」

「そうですね…

 同級生と上手く付き合えるかなぁ…」

「寄せ子のご令嬢とはご一緒ではないの?」

「ファインズ伯爵家のお嬢さんと一緒になります。」

「じゃあ、その娘と仲良くして、

 少しづつ交友関係を広げていくのが良いでしょうね。」

「そうですね…」

私も偉そうな事は言えないのだけどね。

「そう言えば婚約者のノーマン様は卒業してしまうけれど、

 あの方はその後王都に残られるの?」

「1年の半分ずつ、王都と領地に滞在するんです。」

「少々寂しいでしょうけど、会える時に沢山話すと良いでしょう。」

「はい!彼はとっても優しいし話も上手だから、

 一緒にいるととっても幸せなんです。」

ふふ。仲良しの人がいると幸せでしょうね。

「彼の事は大切にね。」

「はい!」


「ところで、殿下の婚約者って、どなたが一番有力なんでしょうか?」

「順当に見るとアンジェラ・フィッツレイ様でしょうけど、

 決定にはなっていないの。私の教育も続いているし。」

「学院を卒業して1年以上婚約が決まらないと、

 ちょっと困りますよね。」

「まあ殿下の立太子が16才でしょうから、

 卒業までには決まるのでしょうね。

 それから私にも適当な男性を紹介して貰えるのでしょうけど。」

「お姉様も可能性はあるんじゃないですか?

 魔法なら当代一だし。」

飛竜が倒せるから一番とも言えないと思うけどね。

理論でランディーを上回るとか一生ないと思う。

「魔法だけで決めるという事は無いでしょうからね。」

「外見でもお姉様が一番ですよ。」

「あ〜、そんな事言ってたのがアンジェラ様達にバレると大変よ?」

「きゃ〜ごめんなさい!黙ってて下さい!」

ふふふと二人で笑い合う。

「そういえば今度の夏休みにハワード公爵家の長女のジェシカ様が

 ご結婚なさるそうですよ。

 王城内の礼拝堂で結婚式をされるそうです。

 良いなあ…」

「王城内の礼拝堂って素敵なの?」

「見たこと無いんです。

 でも上位貴族の領主と奥様とかでないと入れないから、

 入ってみたいなぁと思って。」

個人的には教会関係者がいるところには行きたくないんだけど。

「好きな人と結婚式を挙げられるなら、

 どこで結婚しても幸せじゃない?」

「えへへ、そうですね。」

ノーマン・クリフォードとこの娘は縁付いてから仲を深めた訳で、

それでもこんなに好きになれるなら幸せでしょう。

ただ、誰もがそう上手くいくとは思えない。

私を押し付けられる人は、

ノーマンの様に婚約者を大切にしてくれるだろうか。

 すいません。

ストックが無くなったので

今週はタイトロープ。

短めが続いたらごめんなさい。


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