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2−44 剣の授業(6)

 デビット・マナーズ侯爵子息は剣の授業では攻め続けるタイプだ。

その圧力に負ければあっと言う間にケリが着く。

ところが、今日のエレノーラは危なげなくその攻撃を躱す。

剣の振りには右への移動で、薙ぎに変わればバックステップで、

相手の前進には剣の迎撃で掣肘を、

相手の後退には前進でピッタリと付いて離れない。

相手は息をつく暇がない。

当然デビットの動きも鈍る。

自分のペースで息継ぎをする事が攻勢には必要だ。

そのペースを基本的に握られている。

ただし、デビットの動きを見切ってはいるが、

エレノーラの攻撃は基本はデビットの掣肘だ。

だから、時間一杯まで勝負が付かないだけだった。


「動きが良いな。」

「それ程でもないです。」

言葉を交わす二人だが、

エレノーラの心中に喜びは無かった。

勿論、魔法師として強い魔獣と相対した経験から

緊張感を持って打ち合いに望めている事もあるが、

動きが良い一番の理由は人体内外の魔法子の流れを感じて

相手の動き始めが予測出来ている事だった。

魔法を発するのも、筋肉を動かすのも神経系の命令に依る。

神経中を流れる信号が周囲の魔法子に影響を与えているのが分かる。

これは騎士としての成長では無く、

魔法師としての成長の恩恵が剣にも波及しただけだった。


 赤毛の少年、ポール・サマーズ公爵子息との打ち合いも同様だった。

力押し、フェイント、緩急のタイミングに完全に対応するエレノーラには、

赤毛も攻めあぐねた。

一方、それ程動きの良いエレノーラの視線が赤毛には静かに見えた。

とりあえずの力押しの出始めにエレノーラがすっと横斜め前の移動で

カウンター攻撃に転じ、

驚いてサイドステップに転じざるを得なくなった。

赤毛が同学年に対してこれほど不様な動きをした事はなかった。

見ていた生徒達も驚いていた。


 時間切れ引き分けにも心が動いていない、

むしろ俯き加減のエレノーラが気になった赤毛は、

授業終了後に声をかけた。


「随分動きが良かったが、何かあったのか?」

赤毛に視線を合わせられないエレノーラの口からは、

多分赤毛の予測していない言葉が出ただろう。

「変わっていないつもりだったのに、

 変わってしまった様ですね。」

鏡の向こうから現れた、水の魔獣の顔をした女が思い浮かぶ。

「何かあったのか?」

赤毛も噂を聞いているが、

修羅場を掻い潜った人間の成長なのか、

それとも精神が変わらざるを得ない、

本人には肯定出来ない事が原因の変化なのか。

「ちょっと遊んだだけですよ。」

見習い騎士としての成長を望んでいたのに、

魔法にばかり時間が取られていき、

そちらの成長ばかり進んでいく。

水の魔獣や飛竜との死闘も、

魔法師としての成長の為の糧でしかないのか。

最悪、それは良い。

でも、騎士として、そのおまけとして

こんなインチキな能力で結果を盗んでしまう。

こんな事は望んでいなかった。

「まあ、良い。

 中身が変わっていないなら問題ない。」

「中身は相変わらずの田舎娘ですよ。」

「…たまには鏡を見たらどうだ?」

「朝晩見てますけど何か?」

「…鏡の向こうの自分に笑いかけてみろ。」

「鏡の前で笑うと、

 日々笑顔が男らしくなっていくので笑わない様にしてます。」

「…すまん、それ真に受ける奴沢山いるぞ。」

あんたも真に受けたんだね。

ジョークに決まってるでしょ!!!

 エレノーラの外部の変化は書きましたが、

今日明日はエレノーラ内部の変化を

したりしなかったりの部分の描写になります。

お気楽にお読み下さい。

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