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2−42 表彰

 表彰される日が来た。

王城の侍女・メイドに弄ばれて塗りたくり、結い上げられ、

王家の用意したドレスを着る。 

王は”麗しい”とか言った私を別人に仕立て上げたがる。

言動が一致していない以上、行動から判断するしかない。

馬鹿、禿げちまえ。

そうは言ってもこちらは明確にカードを隠してる。

危険水域だ。

大聖堂にも近寄れない。王城にも近寄りたくない状況だ。

足の置き場がない。


 公式の謁見の間に貴族議会の一部代表と高位文官が並ぶ中、

色違いのカーペットの上を歩いて進む。

壇上の玉座に座るジョージ王の前に進み出て、

跪く。

「面を上げよ。」

侍従の声で顔を上げる。

「エレノーラ・スタンリー伯爵令嬢、

 魔法学院の催しにて王子を守り飛竜を倒した事、

 王国忠臣の範とすべき功績である。

 よって学院卒業後に叙爵を行う。

 子細は卒業までに告知する事とする。」

深く頭を下げて受け入れる。

「身に余る評価、有難き幸せにございます。」

これはこれで困った事になった。逃げると親に迷惑がかかる…

「陛下からお言葉を賜る。心して拝聴せよ。」

「謹んで拝聴致します。」

王が立ち上がり、こちらに歩いてくる。

侍従もついてくる。

何やってんの嫌味王!

控えめな笑顔の口元が微かに上向く。

嫌な笑顔!

「立ちなさい。」

えー何か嫌だけど、公式の場では断れない。

しょうがないので立ち上がる。

「度々王子を身を挺して守るそなたにはいくら感謝の言葉を述べても足りない。

 一先ずこれを贈らせてもらう。」

侍従が差し出すネックレスには金剛石が並んでいる。

うぁー見たこともない凄い額の宝石が並んでる…

「失礼するよ、つけてあげよう。」

ギャー!手づから首輪付けるって酷い奴!!

王が後ろに回って金剛石のネックレスを付ける。

王からは何がしかの妖気を感じるが、あるべき威圧感が感じられない。

何故?

「そなたはまだ王子の婚約者候補だ。

 更に女を磨く事を願っているよ。」

え?

「…ありがとうございます。ご期待に添える様、努力致します。」

って答えるしかないじゃない。

「楽しみにしているよ。」


 退場の後、控室にアーサーが現れる。

「お疲れ様。

 仕事をした上で更に迷惑事が増えている様ですまないね。」

「お気になさらずに。

 めったに出来ない体験が出来て良い思い出になります。」

アーサーとしては少なからず悲しい言葉だった。

王子妃になり王妃になれば似たような場面に立ち会う事になるのに。

なる気がやっぱり無いんだね…

「もし疲れていないなら、庭を少し歩かないかい?」

「せっかく着飾っていますからね。

 是非ご一緒したいです。」

「ごめんね、褒め言葉が遅れて。

 いつにも増して綺麗だよ。」

「何か首輪を付けられました所為でしょう。

 ちょっと重いですね。」

「…迷惑かな?」

「身代を持ち崩した時にはお金に変えさせて頂きますね。」

…いや、それ、君はそれが似合う位美しいよ、

という王家からの評価を示しているんだけど。

「そんな事態にはならないと思うけどね。」

「だと良いんですけれど。」


 アーサーのエスコートで庭園を歩く。

手袋越しとは言え、彼に触れるのはこれで3度目だ。

その程度の思い出しかない癖に、

覚えていて欲しいなどと願うのは贅沢か。

木の枝から溢れる様に綻ぶ白い花が見える。

視線を見てアーサーが告げる。

「マグノリアだね。好きなの?」

「いえ、地元には無い花なので。」

「そうだね。買ってきて植えたものだからね。」

「珍しいのですか?」

「そうでもないかな?城では何箇所かに植えてあるよ。

 割と手入れは楽みたいだよ。」

庭園なら手入れは丁重にされるだろうが、

他にも植えてあるならそう手間はかけられまい。

庭園も城内の木々も人工の自然だ。

それでも木々花々の生命力には癒やされる。

「リラックス出来たみたいだね。

 良かったよ。」

「…何か顔に出てましたか?」

「僕の前では穏やかな顔をしてる事が多いからね。

 苦労をかけて済まない。」

人の態度は鏡だ。

穏やかな顔の人の前では人は穏やかになる。

だからそれは私の所為じゃない。

「色々考えてしまっただけです。

 婚約者候補の教育とか、

 学院生活も折り返しな事とか。」

「それも済まない。

 王家の都合で迷惑をかけて本当に申し訳ない。」

「良い教育を受けさせて貰っています。

 感謝しかありませんよ。」

ラーレやナルキッソスの花々の咲き誇るのを見る。

地元ではナルキッソスは川向こうに沢山植えてあった。

その毒で魔獣を少しでも近づかせない様にと願いを込めて植えている。

最初は人手で植えたらしいが、もう勝手に増えている。

それらは白と黄色の小さめの花だったが

ここにあるのはもっと色が濃いし花が大きい。

スノーフレークの様な可愛い花もあるが。

お金かかってるんだね。


 エレノーラは花々を、

アーサーはエレノーラが花を見つめる穏やかな顔を、

暫く眺めていた。


 この位の距離感が好きです。

でも、もっとアーサーを見てやれよ、

とは思いますよね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 忘れてました。 「100話達成おめでとうございます!」 これからも楽しい作品を
[一言] 色々なイベントがあって読んでて楽しいです。
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