1−10 とある王都のお茶会
「ところで、フィッツレイ家の下のお嬢様が寄子のお嬢様の
噂をそれは沢山流している件、何を考えてらっしゃるのでしょうね?」
「親同士が仲違いしている訳ではないのに一方的に誹謗中傷なんて、
逆に家同士での問題になったらどうするんでしょ。」
「まあ、あの方はお姉様と比べて何かと、ねぇ。」
「そういう事に気が回らないのが、お姉様との評価の差なのにねぇ...」
ホホホホ、と失笑が響く。
キャサリン・フィッツレイ公爵令嬢は、
本人の居ない所ではあまり評判が良くなかった。
彼女は癇が強い子だったし、
令嬢教育で厳しい教師を付けられて表面上は令嬢らしくなったが、
その分、陰に籠もった。
大人の見ていない場所で弱い立場の者をいじめる癖があった。
見ていない、とは言っても、使用人にも当たるのだから、
当然使用人の上司経由で貴族達の耳に入った。
「まあ、あのお宅は中のお嬢様が大変優秀だから、
お家の方も末の娘には気を使っていないのかもしれないわね。」
「お姉様は優秀どころではなくて、
十歳にして、一を聞いて十を知る方だったそうよ?」
一見姉を褒めているのだが、要するに妹は凡人と貶しているのだった。
「それでも、ラッセル家よりはよろしいですわね?」
「あちらは二分の一の神様のサイコロに負けてしまいましたものね...」
「2年前に分かってから暫くは色々な方にご相談されていた様だけれど、
結局領地に籠もってしまわれましたからね。」
「部下の子爵家の嫡男と婚約された様だけれど、
子爵家も次代の奥様が社交をなされないとなると大変よね。」
ラッセル家の3女は第1王子より一つ下に生まれたが、
10才の時の魔力調査で魔法学院へ入学出来るほどの魔力がないと判断された。
魔法学院で同年代と顔を繋いでおいて後の社交に役立てる事が貴族の妻には
求められる。
そもそも魔法学院卒業生でないだけで日陰者だった。
さて、キャサリンについては、親達ですらこれであるから、
娘達はもっと辛辣だった。
「それにしても、あの公爵家の方、飽きずに寄せ子の方の噂をされるものね?」
「口は達者でいらっしゃるかもしれないけど、目は普通でいらっしゃるから、
あんなものではなくて?」
要するに世間が自分をどう見ているかが見えていない、
と貶されているのである。
「まあお姉様の話が纏まらないとあの方もお話が纏まらないから、
まだ余裕がおありでしょうけど、
そろそろご自分の事も大切になさらないと、
良いお話が纏まらないのではないかしら…」
「そう言えば彼の公爵家の方、随分剣は達者らしいけれどご存知?」
「そうそう、もう背もお高くて、素敵な方よね?」
…もう男の話に変わっていた。
だが、親の方はまだ続いていた。
「スタンリー家はご領地が少しお遠いから、
色々ご苦労なさっているのではないかしら。」
「とは言え、我々の上の代ではとても優秀と噂されていた先代様が
いらっしゃらなくなってから、
あちらはご苦労が絶えない様で、大変な事ですわね。」
「お力の及ぶままになされば良いのよ。」
「只、お次の方が大変そうね?」
「あら、普通に賢い方だそうよ?
下の方も大変ご自由な方で。」
スタンリー家の先代ヒューゴーは美貌と有能さで在学中は讃えられたが、
エレノーラが生まれる前に魔獣の大量発生の対処中に亡くなっていた。
エレノーラの父のジェイムスは学生時代そこまで優秀ではなく、
上の下あたりだった。
そしてエレノーラの長兄、ケントは平々凡々、
次兄のジョシュアに至っては明らかに劣等生だった。
「今もお嬢様が御苦労されているのも、
色々お家が大変だからじゃないかしら?」
「まあクラスについては、相対的なお話ですものね?」
王都に住む貴族であれば、
子女を1組にねじ込む下級貴族、商家の噂は飛び交うものだし、
今年の1年は王子目当てで大変だったと聞いている。
ただし、ねじ込んだ家は裕福であり、
敵に回すのは後々問題と成りかねないので、
エレノーラを貶しておくのが無難だったのだ。
出来が悪くてすいません。2度直したけど何が悪いか分からなくなっただけだった。
因みに、4公爵家の学院通学状況は以下。
フィッツレイ公爵家 アンジェラ 3年 第1王子婚約者候補
キャサリン 1年
サマーズ公爵家 ポール 1年
スペンサー公爵家 エリカ 2年 第1王子婚約者候補
ラッセル公爵家 2女が12才だが、入学前試験を申請せず
という感じです。えーと侯爵家の魔法師の生まれる確率が1/2になってる筈...