聖神廟
少し前も見えない濃霧の中を彷徨う。
風と共に舞う砂が目を潰し、白と黒が交互に光る。
耳をすませど聞こえるものは風切り音と、誰かと嗚咽のみ、きっと砂が口に入ったのだろう。
通り過ぎざまに何かが頬を掻っ切る。
溢れる血だけがモノクロに色彩を携えるが、1歩進めばすぐに白に染まる。
なぜ進むのか、それすらも分からない。
身体が崩れる、私も悠久の一部へと溶けてしまうのか?
分からない、分からない、分からない。
は、はは、はーはっはっはっは…………
気がつくと私は木々のおいしげる森の中に倒れていた。
身体にまとわりつく蔦を払い周囲を見てみれば、高い草木におおわれ隙間からは白い木漏れ日が私の身体を照らして居る。
「どこなんだここは……」
背の高い草を掻き分けて、道を切り開く。
空は見えないが、木々の隙間から白熱した光は差し込んでいる。
周囲は少し開けた獣道と高い草木に覆われており、現在位置の確認すらままならない。
「お前も目覚めたのか、相棒。」
「ロック、ここはどこかわかるか?」
「塔の第3階層……通称迷いの森だろ?」
「ということは!」
ついに我々は第4階層である蠱毒の霧を抜けられたのであろう。
「くくっ、この調子で行けば、プリッツと俺が神廟塔の外の世界にたどり着くのもそう遠くはないさ。」
「あぁ、先に進むぞ!」
私たちは先に進む。
止まればきっとそこで終わりなのだから。
──────────────
…………
「あら、石橋さんが病室抜けて3階に降りてきてる様だけど大丈夫なの……?」
「そうなのよ〜、どうやら昨日病室近くの階段のオートロックがかかってなかったみたいでここまで降りてきちゃったみたいなのよね。」
…………
「取り敢えず、3階の空き部屋に1度隔離しておいたんだけど、勝手に心電図も外しちゃって……朝からずーっと壁にお話しているのよね……」
…………!!
「担当医さんは今忙しいらしいし、暫く私たちが看てることになりそうね……」
「問題起こさなければいいんだけど……」