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第72話 キモいと、婚約



私はミランダさんとリチャード、ガーネット組みのみんなでユキに移動した。


私が目の前に来ると、オートロックが発動する。


「お帰りー、早かったねー」

「ピー、ピピー」

幼女化したユキとサクラが出迎えてくれる。

ユキは最近幼女化に慣れたらしく、長い時間この姿で過ごしている。


「マリー、こちらのお二人さんは?」

「初めまして、ミランダと申します」

「私はリチャードだ」

「ふ〜ん。でっ、2人は付き合ってるの?」

自然と寄り添っている2人に、ユキはニヤついて聞く。


「そ、そんな•••。私なんて•••」

「そうなりたいと、いや違う、違うのだ」

ミランダさんとリチャードはお互い顔を赤くして慌てている。


「キュンでーす!!」

ユキは左手の親指と人差し指をクロスさせながら言う。


「きゅん?」

「キュンでーす!!いいわ〜、アオハルね〜」

「おおはる?」

ユキの言葉にミランダさんとリチャードは首を傾げる。


「ね〜、ユキ」

「何?」

「古いよ」

「えっ!?私の世代では旬なんだけど」

「女子中学生の間では、もう使ってないよ」

「そ、そんな。10代から発進される情報がアラサーに届くには時差があるってこと•••」

ユキは頭を抱える。


「それより、みなさんリビングにどうぞ」

「素敵なお屋敷ですね。憧れます」

「このような洗練されたデザインは見たことがないぞ」

ミランダさんとリチャードは置かれているテーブルや椅子、ソファ、アイランドキッチンや天井、色々と見ながら感心している。


「そうでしょー。私ってば昔からセンスがよかったのよねー」

若年層との時差ダメージから復活したユキが誇らしげに言う。

確かに、元はユキの家であったのだし、今はユキが家なのだから、褒められれば嬉しいみたいだ。


「お茶をどうぞ」

私は紅茶とクレープをテーブルに並べる。

みんながテーブルに座ると、ミランダさんとリチャードは目を輝かせてクレープを見ている。

そして口にクレープを運んだ瞬間、2人はお互いの顔を見ながらその美味しさを語り合っている。


「本当に仲睦まじい」

「いいですわー」

「憧れる」

アイリスさん、アイラ、アリサはクレープを食べながらラブラブカップルを見ている。


「キュンでーす!!」

「古いけど、確かにキュンだよね」


みんなの視線に気づいたミランダさんとリチャードは恥ずかしそうに下を向く。


「やっぱり2人はお似合いだよ」

「ありがとうございます。しかし•••」

「少し聞きづらいんですけど、ミランダさんのお父さんとお母さんは•••?」

「父と母は、数ヶ月前に病気で亡くなりました•••」

「す、すいません」

私が気まずそうに謝ると、ミランダさんは笑顔で首を横に振る。


「いいえ。もう泣くだけ泣きましたので。今は私自身の病気で遅れていた女王就任の準備をしています」

ミランダさんはどこか儚げに笑う。


「女王になったところで•••、私は•••」

「もしも、女王様になったとして、リチャードと結婚となったらどうなるんですか?」

「け、結婚!?」

「もしもの話だが、もしも結婚できたら、私はサズナーク王国に婿入りする覚悟だ。幸い、スウィールには第二王子と王女もいるしな」

「リチャード•••」

2人は見つめ合う。


「なら問題ないじゃん」

「しかし、それでは民を路頭に•••」

「お金なら、この国に被害をもたらした青龍に払ってもらいましょう」

「青龍に??」

「実は訳あって大分無くなっちゃったんですけど、あと6体、アオの分は保険で取っておきたいから5体かな、青龍があるのでそれを換金すれば十分な資金になると思います」


ミランダさんは少し考え込んでから言った。

「それは、マリー様が倒された青龍です。対象の素材は、討伐された方に所有権があります。ですので、お話は有難いのですが、青龍の素材はマリー様の方でご活用下さい」


私はミランダさんらしい回答に少し笑みを浮かべる。


「私が活用方法を決めていいなら、ミランダさんに使って欲しいです」

「マリー様•••、ですが•••」

「ミランダさん、本当にお願いだから受け取って。私、マジであのキモいやつにミランダさんを渡したくないから」

私は遠慮なしに言った。

ユキと出会ってからか、私の口調が日本にいた時のようになってしまう。


「キモい•••。あのマリー様。先程もゲイリーにそう申してましたが、キモいとは??」

「気持ち悪いってことよ。私達の国じゃ、相当キツイ言葉ね」

ユキが私の代わりに答える。


「気持ち悪い•••」

ミランダさんは肩を揺らし始める。


「み、ミランダ?」

リチャードが声を掛けるが、揺れが激しくなった。


次の瞬間、ミランダさんは王女様とは思えないほど大きく口を開き、両手でお腹を抱えながら大声で笑い出した。


それを見ていたアイリスさん、アイラ、アリサ、最後はリチャードまで声を上げて笑い出す。


「マリー、この人達、大丈夫?キモいなんて良く使う言葉だよね?」

「いや、こっちの世界では初みたいよ」


数分して一応笑いは収まったが、みんな思い出し笑いを繰り返している。


「私も常々、き、き、キモいと思っていたのです」

ミランダさんは笑いを堪えながら言う。


「なら、素直に青龍受け取って下さいね」

「この恩は決して忘れず、何かあれば私はマリーの力になる。だから、ミランダお願いだ。ここはマリーに甘えてくれ」

「リチャード•••」

ミランダさんはリチャードを愛しそうに見つめ、次に私を真剣な目で見つめる。


「マリー様。民を守るため、国を守るため、リチャードと共に歩むため、どうか私に青龍をお譲り下さい」

ミランダさんはテーブルに手を着き、頭を下げる。


「はい。結婚式には呼んでくださいね」

「喜んでお招きいたしますわ」

「ずるいぞミランダ!!」

リチャードは立ち上がると、その場に片膝を着き、ミランダさんの手を握る。


「ミランダ•ヨル•サズナーク。私はこの先、あなただけを愛することをここに誓う。我、リチャード•リー•スウィールと共に歩んで欲しい。結婚しよう」


「喜んで、お受け致します」


リチャードは立ち上がり、ミランダさんを抱きしめる。

私達は祝福の拍手を送る。


「キュンでーす!!」

「「「キュンでーす!!」」」

ユキに続いて、アイリスさん、アイラ、アリサも続く。


「だ、大丈夫かな。流行らないといいけど•••」



みんなが祝福ムードの中、私とラーラ達は距離を詰めて小声で話す。


「あとは、アイツらだね」

「はい。あれで隠れているつもりらしいです」

「城を出た時からこっちを見てたね」

「マリー様の言葉を借りるなら、キモいです」

ラーラまでキモいを使い熟す。


「襲ってくるよね?狙いは私かな?ミランダさんかな?」

「恐らく、マリー様かと。マリー様には力が無いと勘違いしているようですし、マリー様さえ取り込めば私達も手に入ると浅はかに考えているのでしょう」

「襲ってくるとすれば、今夜だと思われます」

ラーラ、ナーラが言う。


「レーリック王国を滅ぼしますか?」

「ゲイリーを脅し、レーリック王国から資金を巻き上げますか?」

「今すぐ、ゲイリーを殺しますか?」

ラーラ、ナーラ、サーラは物騒なことを真顔で言ってくる。


何かレーリックの国民に被害の出ない、それでいてゲイリーを罰する方法はないかな?



「現代風に行こうよ」

ユキが何か企んでいるような不適な笑みを浮かべながら言ってきた。




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