第146話 これから
東大陸を訪れてから数週間が経っていた。
私はガーネット街で慌ただしい日々を送っていた。
『マリー・アントワネット!!世界は楽しいなー!!』
そう言いながら私の横を超スピードで駆け抜けて行くフローレンス。
正確には見た目がフローレンス、中身は創造神に1番近い存在。
東大陸から戻ってくる際、今まで通りフローレンスとして過ごそうと話を合わせた。
しかし、以前の状態はフローレンスを主とした存在だったらしく、今は完全に創造神ベースとなっているため、明らかに別人となっている。
因みに、隠蔽スキルの類か分からないが、神様のユーティリティ様やシンにも存在は悟られていない。
自分達が消し去ろうとしていた存在が悪神ではなく、創造神だと知ったらどうなってしまうのだろうか・・・。
『マリー・アントワネット!!また1人、盗賊を撃破したよ!!』
フローレンスは、ガーネットの街の中と周辺数十キロの範囲を周回し、悪人を捕まえ続けている。
お陰でここ数週間、犯罪による怪我や拉致等は発生していない。
『ひゃーはっはっ!!マリー・アントワネット!!万引犯を捕まえたぞ』
高らかに笑いながら、再び目の前で超スピードで通過して行くが、タイミング悪く私の横にラーラ、ナーラ、サーラが来た所で3人は呆気に取られていた。
「マリー様。フローレンスは、あんな性格でしたでしょうか?」
「神盤管理をしていた時は、もう少しお淑やかだったような・・・」
「ひゃーはっはっ・・・、などと笑いませんでしたよね?やはり、辛さを我慢してるのでしょうか」
3人はフローレンスを慮っているように、悲しげな瞳を浮かべた。
東大陸に向かった目的は、ヴェランデゥリング王国にいるはずだったフローレンスの父と母、多くの民を救うことだった。
だが、実際には遥か昔に滅びていた国であり、私にはどうすることもできなかった。
みんなには、ヴェランデゥリング王国の民は既に亡くなっていたとだけ、話をした。
「きっと、フローレンスは寂しさを我慢してるはずたがら、色々と相手をしてあげてね」
「「「分かりました」」」
数百億年も1人でいたのだから、寂しさを我慢していたのは嘘ではないよね。
「それで、準備はできたの?」
「はい。準備が完了し、みんながお待ちです」
「なら、行こうか」
ラーラの言葉を聞き、私はガーネットの外に建てられているマリー・ランドへ向かった。
服装は4人とも、安定のセーラー服だ。
マリー・ランドはあれから拡張され、新たに魔王国ブレイスワイトと同じアミューズメント施設を用意した。
それと、魔王国ブレイスワイトに嫉妬したフシアナを宥めるため、魔王国ヴィニシウス
に『マリーラ・ティラミス』のお店を開店させた。
魔王国ヴィニシウスが、史上初めて人間国と提携したラムズデール王国•エルネニーには、チョコレートやコーヒーがあるため、私の新作『ティラミス』を作るのに都合がよかったのだ。
フシアナも泣いて喜んでいたし。
そんなこともあり、ここ数週間忙しくしていたのだが、1番、私を慌ただしくさせていた理由がこれだ。
今日、貸切となっているマリー・ランドの門をイーラとターラが開けてくれると、そこには人間国、魔王国の錚々たる面々が拍手をして私を迎え入れてくれる。
最初に迎えてくれたのは、ラミリア王国の王女であるメレディスさん、国王のメイズさん、王妃のシャーロットさん、ギルドマスターのマーニャさん、ギルドラウンジのリルさんとララさん。
続けて、アントワネット国のルミナーラさんとルルミーラさん、スウィール王国のリチャードとサズナーク王国のミランダさん夫婦が笑顔を見せてくれる。
その後ろには、レーリック王国の新たな国王アルテタ、女王ミーシャ、母親のルトアさんと騎士団長のエメリが拍手を送ってくれている。
少し歩みを進めると、ラムズデール王国を代表として来てくれたエルネニーの領主リースさんと婚約者のエミールさんの姿もあった。
そして、私にかわいく駆け寄って来るのは、シントプリースト共和国の代表となっているヒナだ。
ヒナの横には、いつの間にか仲良くなっていたミアもいる。
私は2人の頭を撫でると、先に進んだ。
進んだ先には、魔王国ヴィニシウスの魔王フシアナと魔王国ブレイスワイトの魔王キャサリンがいる。
横には、サキュバスのドレミ、ファソラ、シドが泣きながら拍手をしていた。
この人でできた通路の最後にいたのは、ガーネットの街で一緒に住んでいる領主のアイリスさん、娘のアイラ、元冒険者のアリサ、ギルドマスターのレキシーさん。
少し離れた所に神様のユーティフル様とシンがいて、一際目立つのが、家のままマリー・ランドまで移動してきて、奥に鎮座しているユキだ。
ユキは家中の明かりを器用に操り、私を祝福してくれている。
メレディスさんが入口から私の方まで走って来ると、いつものように腕を絡ませてマリー・ランドの象徴でもある私の歴史館の前に誘導する。
歴史館の前に着くと、ラーラ、ナーラ、サーラを横一列に整列させ、私に一歩前に出るよう手招きをされる。
一歩前に出ると、メレディスさんは真剣な表情に変わり、書面を取り出して読み上げ始めた。
「西大陸の魔王国2カ国の推薦と、東大陸7カ国の推薦を集めたことにより、ここにマリー・アントワネット、ラーラ、ナーラ、サーラの4名に対し、冒険者ギルドランクSSの称号を授ける」
いつの間にか横で待機していたギルドマスターのレキシーさんが箱からプラチナでできたギルドカードを取り出すと、メレディスさんに渡した。
メレディスさんは、私とラーラ達にそれぞれプラチナカードを授与する。
そうなのだ。
私が忙しかった理由は、このSSランクの進呈会の準備。
通常、ラミリア王国の王都でやるべきなのだが、各国の代表がガーネットでと要望をあげたために準備をするはめになったのだ。
ただでさえ、人間国と魔王国の調整も大変だったのに、もてなす為のアミューズメント施設建設やパーティー料理の準備、他にも『転移スキル』での送迎など、やることがたくさんあった。
それでも、今、笑顔で拍手してくれている人達の顔を一人一人見ると、おもてなしが足りないのではないかと思えてしまう。
転移して右も左も分からなかった私を優しく迎えてくれた人達。
死んでしまった時は悲しかった・・・
お父さん、お母さんに会えないのは辛かった・・・
だけど、今なら言える。
私は、とっても幸せだ・・・
この幸せを、この世界の人にも感じてもらいたい。
だから、これからも幸福度ランキングを上げるために頑張らないとな。
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歳を取らない姉妹
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