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第143話 消えた生命反応






「フローレンスもおるのか。酷かも知れぬがいつかは伝えることだ。ちょうど良いのかもしれんのー」




ユーティフル様は険しい表情のまま私とフローレンスを見るとそう言った。





「何があったんですか?」



私はソファーに座りながらユーティフル様に聞いた。

フローレンスも強張った表情のまま私の隣に座る。






「実はね、マリー。あなたが魔王国2カ国を大陸ごと消し去ったでしょ?それで、マリーが消し去る際に放った光の攻撃がこの星の裏側まで届いたのよ」



「ま、まさか・・・、もしかして、私」





シンの言葉に額から汗が流れる。

要は、私の攻撃が星の裏側まで威力を失わずに東の大陸まで届いたということだ。



東の大陸へは、ガラスの世界を渡るしかなかったのだが、この星も地球同様、円形だとすれば西側を行けば東の大陸に着くのは当たり前かもしれない。





「マリー、先に言っておくと、ヴェランデゥリング王国、言い方的には、東の大陸自体は無事よ」



「大陸自体は??」



「そうなのじゃ。大陸に衝突する前に攻撃は消失したからのー」



「ん??なら、ヴェランデゥリング王国も無事なんでしょ?」



「それなんだがのー」





ユーティフル様とシンは顔を見合わせると、軽く息を吐いてから話し始めてくれた。





「ないのじゃ」


「ないって?」



「生命反応がじゃ」


「生命・・・、反応・・・」




この言葉に反応したのは、私ではなくフローレンスだった。

ヴェランデゥリング王国の王女であり、多くの民、父である国王、母である王妃もきっといたはずだ。


以前話していた時は、生物が暮らすにはあまりにも環境が酷いからという理由で、皆で地下で暮らしていると話していた。





「元々、東の大陸はガラスが降ったり、大気が不安定で人に適した環境ではなく、更に時空が乱れていたの」


「妾達も神界での情報で東の大陸に生命がいることは知っておったんじゃがのー、いざ、マリーが大陸への蓋を開けてみたら、反応がなかったのじゃ」



「そ、そんな・・・」




フローレンスは体を小刻みに震わすと、涙を流した。




「大陸への蓋が開いたってことは、ヴェランデゥリング王国に行けるってことだよね?」




私の言葉にフローレンスは素早く反応し、視線をこちらに向けた。




「大陸の西側は、空まで達する険しい岩肌で覆われていたのだけれど、今は、マリーの攻撃によって東の大陸まで行けるようになっているわ」


「なら、確かめに行ってくるよ!!」


「私も連れて行って下さい!!」



「まあ、こうなるとは思っていたのじゃ」




ユーティフル様は懐からティラミスを取り出すと、一口、口に入れる。

ユーティフル様がなぜ私の新作のティラミスを持っているかは分からないが、食べているその表情からは特に東の大陸に行くことに反対はなさそうだ。





「マリー、何か嫌な予感がするの。行くにしても、気をつけるのよ」


「分かったよ。何があるか分からないし、環境も酷いんだもんね」



「それがじゃ、ガラスはまだ降っておるが、大陸自体の大気は安定しているのだ」


「マリーの攻撃の影響というか、お陰かもしれないわね」





シンも懐からティラミスを取り出すと、食べながら詳しく教えてくれた。



ヴェランデゥリング大陸は、フローレンスの話の通り、激しい気候変動に見舞われ、50度の気温だと思えば、次の日は氷点下、その次の日は嵐になったりと酷い環境だったそうだ。


それが突然、気温は20度で快晴、私が魔王国を攻撃してから数週間、ずっとその状況が続いているらしい。






「大気が安定しているならそれはそれで有難いよ」


「そうなんだけどね。何か、嫌な予感がするのよ」


「行ってみれば分かるよ。フローレンス、今日は定休日でしょ?早速だけど行ってみる?」



「はい。是非、お願いします」





フローレンスはそう言うとソファーから立ち上がり、準備を始めた。

大陸の事が、自国のことが余程心配なのだろう。


あれだけ楽しみにしていたティラミスには一切反応せず、浮き足立っているのか何度も持ち物を確認している。





「フローレンス、準備ができたなら行こうか」



「はい!!」



私はフローレンスに右手を差し出すと、しっかりと握りしめてくる。




「ユーティフル様、シン、行ってきます」



「気をつけるのじゃ」


「無事に帰ってきてね」






私は2人に手を振ると、『転移スキル』で魔王国ブレイスワイトの外れに転移した。



目の前には、数週間前まで木々や建物、魔王城まであった場所が広がっている。

今は深く大陸が抉られ、ただ荒野が続いていた。





私は悪神の力を解放した。



一気に黒と金色の神気が放たれ、私の体を包み込んだ。

金色の髪と、右目が青色、左目が赤色のオッドアイが現れる。





フローレンスの手を握ったまま浮遊すると、荒野を見下ろしながら超スピードで飛行を開始した。



元は空まで岩が連なっていた場所らしいが、私の攻撃によってどこまで進んでも綺麗に岩が無くなっており、円滑に飛行することができた。





飛行を始めて数時間後、フローレンスが私の手を強く握り締めてきた。


眼下には荒野が広がっているが、私の攻撃によってできたものではない場所だと直ぐに分かった。




見たこともない材質で作られた建物の残骸や、何かが引き抜かれたような大きな穴が空いていたのだ。






「フローレンス、ここがヴェランデゥリング王国なの?」




私は空中で止まると、隣にいるフローレンスに視線を向けた。





だが、フローレンスを見た私は、驚嘆のあまり目を見開き、声を失ってしまった・・・




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