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第142話 フローレンス








『フローレンス、準備はよいか?』





私のことだろうか?

顔を含めて体半分が鱗のようになっている男がこちらを見ながら言ってくる。



私の視点が下を向き、直ぐに正面に戻ったことから、相槌をしたようだ。


男は頷くと、真っ直ぐに歩き始め、私は後を追う。




人の手が一切、入っていない原生林を進み続けると、川に辿り着いた。


川幅は1メートル程で、川底が見えるほど水が澄んでいる。



魚だろうか?

鱗のない30センチ程の白い生物が何匹も泳いでいて、男はその生物に向けて石槍を投げ込んだ。




石槍は見事に生物に突き刺さると、男は石槍を掲げて誇らしげにこちらを見た。




『やったぞ、フローレンス!!』





私は男に向かって拍手をし、讃えた。
















拍手が終わると私の視界は歪み始め、男の姿が消えて、場面が切り替わった。








『フローレンス、何ぼんやりしてるの?』





1人の女性が私の顔を覗き込んでいる。

女性の後ろには、男性もいて、優しく微笑んでいるように見えた。



なぜ男性の顔がはっきり見えないのか、それは辺りに溢れる光が眩しく、私は細目でしか視界を確保できずにいた。




やがて目が慣れてきた視界には、今までに見たこともない景色が飛び込んできた。



空まで届きそうなほど高い塔があり、それは白い輝きを放ち、辺りに光を与えている。

塔の周辺には高低様々な建物があり、白い光を受けて輝いていた。



建物の間には道路があるが、材質は一切分からず、仄かに発光している。

道路といっても車等は走っておらず、人も歩いていない。





ここはどこだろう・・・



はっきり分かるのは、今いる異世界でも、地球でもないこと・・・


地球よりも遥かに文明が進んでいるということ・・・






『フローレンス、行くわよ』





女性の言葉を受け、私が一歩前に進んだ時、激しい地響きが起こり、煌びやかに輝いていた塔と建物が空中に放り出された。



地震によって倒壊したのではなく、塔や建物は空中に浮き、一気に私の視界から無くなったのだ。




同時に私の体も空中に投げ出されると、体が引き裂かれるような感覚と共に視界が黒くなった。















再び場面が切り替わった。








『フローレンス、もはやこれまでだ』




皮膚がドラゴンのような鱗で覆われ、顔の一部だけが人のような肌色を露出している白髪の男がいた。






『地底湖も枯れ、民も死んだ。もう、儂とフローレンスの2人だけになって・・・』




男は突然足元がおぼつかなくなり、受け身を取る事なくその場に倒れ込んだ。


目は見開いたままだが、生気がなく、どうやら亡くなったらしい。





私の視界が滲み始める。

フローレンスが泣いているのだ。





それから体感では数時間だろうか、視界が地面に近づき、ゆっくりと消えて行く。


まるで瞼を閉じていっているかのように視点が狭まっていき、先程亡くなった男を見ながら完全に視界が黒くなった。





フローレンスも亡くなったのだ・・・










・・・様





マリー・・・








マリー様








誰かに呼ばれる声がして、目を開けた。

目を開けた先には、フローレンスの顔と、その後ろには見慣れた天井があった。





フローレンスはガラスの世界の向こう側、東の大陸にあるヴェランデゥリング王国の王女。



赤龍のターラと一緒にガラスの世界で保護し、今はガーネットにある神盤の警備をお願いしている。






「マリー様。大丈夫ですか?大分、魘されてましたが・・・」


「あ、うん。大丈夫だよ。それより、どうしてフローレンスがここにいるの?」


「がーーーん」




ユキから教えて貰ったのであろう、人があからさまにがっかりした時の効果音を口にすると、悲しげな表情を浮かべた。





「マリー様が、マリー様が、普段頑張ってくれているからと、新作のてぃらみす、なるものをご馳走してくれると言ったのではないですか」


「あっ!!そうだった」






魔王国ブレイスワイトでの復興を終え、昨日ガーネットに戻ってきた時に約束していたのを忘れていた。





「戻られたばかりでお疲れならば、またの機会でも構いませんよ」


「大丈夫だよ。ティラミスはちゃんと作ってあるから。下に行って食べよう」



「はい!!」





フローレンスが元気よく返事をしたところでセーラー服に着替えると、自室から1階のリビングに向かった。



1階に降りるあと、リビングにあるソファーに急に神様のユーティフル様とシンが現れる。

2人の顔に笑みはなく、いつもの甘い香りに誘われて登場したのではないことは容易に想像がついた。






「マリー、ちょうどよかった。実は、信じられないことが起こったのだ」




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