第140話 魔王国の消失
上空にいた1万の魔族がこちらに向かって一斉に動き始めた。
私は両手を上にあげると、魔力を込め始める。
すると、数十メートル上空に大きな三角形の光が出来上がり、なおも広がり続ける。
やがて三角形の光は、1キロ以上の大きさに広がり、上空にいた魔族は地上への道を絶たれた。
それでも魔族達は強引に三角形の光に体当たりを図るが、光に触れた瞬間、消し炭と変わる。
「どうすりゃいいんだ!!」
「回り込むか!?」
「時間がかかり過ぎる!!」
道を絶たれた魔族達が上空で右往左往し、狼狽した様子で口論を始めた。
【カースト】
手を掲げたままそう唱えると、特大の三角形の光が上空に進み出す。
「お、おい、結界じゃなかったのか!?」
「上ってきやがるぞー!!」
三角形の光は速度を上げると、上空にいた魔族1万人と雲を消し去った。
「エスト、ありゃバケモンだぞ」
「ちっ、見れば分かりますよ。とんでもない奴を敵に回したものです」
「どうすりゃいいんだ!?」
「あれだけの攻撃をしたのです。奴とて疲れているでしょう。こちらにも勝機はあるはずです」
「なるぼど。じゃ、早速•••、なっ、なんだ!!」
「大地が揺れて••」
エストとドレインは大地の激しい揺れに立っていることができず、その場に倒れ込む。
大地が揺れているのは、私が先程とは比にならない魔力を込め始めたからだ。
私は目の前にこの大陸の端まで届くほどの三角形の光を作る。
「おい、ありえねーだろ!!」
「このままでは、我々の国が•••」
エストとドレインは自国への攻撃を防ごうと先端が竜の顔になった槍を構えると、獄炎と獄氷の息吹を目の前の光に向かって放った。
しかし、どちらの息吹も光に触れた瞬間、エストとドレインに向かって跳ね返される。
「ちっ。飛んで躱しますよ」
「くそが!!」
2人は上空に逃れると、獄炎と獄氷の息吹は大地にぶつかり、大きな爆発の後、相殺される形で消失した。
「おい、バケモノ。一旦、引いてやるから攻撃を止めやがれ!!」
「ドレイン、何を言って!?」
「うるせぇ!!このままじゃ国がやられちまう。国には家族がいんだよ!!」
「それは私とて同じ•••」
私は上空に佇む2人を見て微笑む。
【今の私には、慈悲も倫理もない】
【家族だろうと、女だろうと、子供だろうと関係ない】
私の感情のまったく伴っていない無機質な言葉を聞き、エストとドレインは言葉を失う。
【カースト】
私は静かに唱えた。
大陸を覆う特大の三角形の光が静かに動き出すと、大地を消し去りながら進み始める。
魔王国の大地の西側に位置する魔王国ドレインリスタンと魔王国エストアリスタ。
光はこの2国を消し去るため、進み続ける。
上空に佇んでいたことで攻撃に当たらずに済んだエストとドレインが私に向かって肉弾戦を仕掛けて来た。
「くそが!!殺してやるぜぇ!!」
「このバケモノさえ殺せれば、光は消えるはずです!!」
2人は槍を使って同時に攻撃をしてくるが、私はそれを難なく躱し、手刀で槍を真っ二つに切った。
槍を失った2人は、今度は自分より長い剣をどこからか取り出すと、私に切り掛かってくるが同じように躱すと剣を真っ二つに折る。
「くそ、あたらねー!!」
「まずいですよ。光があんなに先まで進んでいます」
三角形の光は大地を消し去りながら、遥か先まで進んでいた。
二つの魔王国が滅びるのは時間の問題だった。
【最期くらい、一緒に逝かせてあげようか】
私はそう冷たく言うと、回し蹴りでドレイン
の首を刎ね、胴体部分を聖魔法を付与した炎で焼き尽くす。
「き、貴様!!」
叫ぶエストの背後に超スピードで移動すると右手を一閃して首を刎ね、同じように胴体部分を焼く。
「何しやがる!!」
「ば、バケモノめ!!気安く触れるな」
流石は魔王と言うべきか、首だけになっても話続けている。
私は首を拾うと、超スピードで上空を移動し三角形の光を追いかけ、ちょうど二つの魔王国が見える位置で止まった。
【あなた達の国、見える?】
「嘘だろ•••」
「や、止めろ•••。止めて、ください」
【嫌だ】
光に消されて行く自国を見下ろし、戦意を失くした2人の魔王の首を地上に向けて落とした。
2人の首はタイミングよくきた光に触れると呆気なく消え、同時に魔王国ドレインリスタンと魔王国エストアリスタも大地ごと綺麗に消えた。
最後に今回の件で犠牲になった魔族、人間に祈りを捧げる。
これで、徳を積んだ者であれば、次のレコードは最良のものになるはずだ。
【ふう】
私は上空に佇んだまま大きく息を吐くと、ヒナ達が待つ魔王国ブレイスワイトへ戻った。
★★★★ ★★★★作者より★★★★ ★★★★
最近、マリーのお話があまり書けていなくてごめんなさい。
マリーのお話は私にとって大切な作品ですので、時間がかかっても最後まで書いていきます。
『太っちょ勇者』にマリーの作品に登場している人物も出ていますので、まだ読んでいないようでしたら、こちらを読みながら気ままに待っていただけると嬉しいです。




