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第139話 マリーのカースト





上空にいた小柄な魔族は、魔王ドレインの隣に着地すると、不愉快そうにこちらを睨んできた。




「エストか。助かったぜ」


「ドレイン、あいつは何者なのですか?」


「さあな」




二人で話していると、エストと呼ばれた魔族の後ろに違う魔族が4人降り立ってきた。


その魔族達を見た瞬間、私の体から黒いオーラが溢れ出す。

魔族がキャサリン、ドレミ、ファソラ、シドを抱えていたためだ。





「な、何だこのオーラは!!」


「本当に、あいつは一体何者なんです?いいですか、その人質を絶対に離さないように。人質がいれば手を出せないはずですから」


「わ、分かりました、エスト魔王様!!」





部下の発言ではっきりしたが、小柄な青い顔をした魔族が魔王国エストアリスタの魔王エスト。


二人の魔王が手を組んで、キャサリンとフシアナ、他の魔王を襲ったということだ。




どちらにしろ、まずはキャサリン達を救出するのが先決だ。

『探知スキル』を見る限り、4人共気を失っているだけのようだ。






私は悪神の力を解放した。


一気に黒と金色の神気が放たれ、私の体を包み込み、髪が金色に変化し、右目が青色、左目が赤色のオッドアイに変わる。






「お、おい、また変化しやがったぞ!!」


「まったく、何が何やら•••」




2人の魔王は実力者なだけあり、今の私の力を感じる度量はあるようだ。





『貴様達。なぜ、魔王が魔王を襲う?』


「へっ!!気に入らねーからだよ」


「失礼ながら、魔族でないあなたには関係ないかと思いますが」




エストは冷静に答えると、キャサリンを抱えている部下に指示を出す。

部下は頷くと、キャサリンを地面に落とし、首元に剣を向けた。





「あなたは強そうですが、この状況では我々が有利でしょう」


「はんっ!!人質なんてなくても、最強の魔王が揃ってんだ。覚悟しやがれ!!」




私は2人の会話には耳を傾けず、心の中を探っていた。

前に会った悪神の眩耀神様も、ユーティフル様、シンも相手の心が読めるなら、私にもできるはずだ。



意識を2人の魔王に向けると、今思っていることはもちろん、様々な感情や憎悪が頭の中に広がる。





『そうか。私の所為だったのか』



「あん!?いかれちまったのか!?」



『私が作ったアミューズメント施設やお店、チョコレートの取引、それが不愉快で襲ったと』



「な、何で分かるんだ!!」


「ドレイン、黙っていなさい」




脳筋なドレインの前に、知的を装っているエストが出て静止させる。




『知的ぶってるけど、キャサリン達が可愛いから攫ったんだね。ただのムッツリ野郎か』



「き、貴様!!言わせておけば!!カースト上位の私に弄んでもらえるのだ、底辺は喜んで股を開けばいいのだ!!」









カースト•••





底辺•••






私の過去の記憶が蘇る。












まだ小学生だった時



男子達はドッジボールやカード遊びに夢中


仲の良さに違いはあれど、誰かれ構わず集まったメンバーで一緒に遊ぶ






しかし、女子は違った





女子は精神的な成長が早く、その頃から人に対して優劣をつけ、一緒に行動するメンバーを選定していた







「榎本さん。今日から私達と一緒にお昼を食べましょう」



『えっ?私、マナミと食べる約束してるから•••。マナミも一緒でいいなら』




私に話しかけてきたリサは、小学生とは思えない醜悪な顔に変わっていった。








カースト制、知らないのかな?


上位のリサさんの誘いを断るなんて•••


しかも、マナミって底辺だよね?






周りからそんな囁き声が聞こえて来る。






「もういいです。やっぱり、底辺は底辺なのね」




リサはそう言い放つと、取り巻き達と席に戻って行く。







その日の昼から、私は1人になった。


マナミはリサのグループで昼食をとり、他のグループは誰も私を誘ってくれなかった。





一緒に食べよう





そう話しかけても、みんな何かに怯えるような目になり、肯定も否定もしない。





今考えても信じられないが、こんな出来事が本当に起きていたんだ。






忘れていたのは、辛い過去に蓋をしたから、ではない。







1人になったあの時

友人が人の目を気にしたあの時




不思議と私は悲しくなかった






ただ




くだらない




そう思った






優劣で決まる友情

そんな友情なら、1人の方がいい




飾りの集団より

1人の自分がいい






そう自然と思えて、前を向けた







ただ、あれ以来、カーストや人を優劣で判断する奴らが嫌いになった。











『そう、お前達みたいな奴だよ』






ゾワッ





【大魔王の威圧】が発動した。






私の体から漆黒に包まれたオーラが溢れ出し、膨大な神力によって空間が歪み、大地が激しく揺れ出す。








私は後ろにいるヒナを見た。

魔王2人と上空に佇む1万の魔族に怯えているのか、サキュバス達を治療しながらも体は震えていた。






【ヒナ、技を借りるね】




ヒナは首を傾げるが、私の動作を見ると納得したように右手の親指を立てた。



私は手を前に突き出し、三角形を作ると、魔力を宿して一気に放つ。






【カースト】





小さな三角形はそのままの大きさを維持して、魔族達には恐らく見えないだろう速度で進む。





【カースト】

【カースト】

【カースト】





4発放ったカーストは、キャサリンに剣を向けていた魔族と、ドレミ、ファソラ、シドを抱えていた魔族の首を消し去った。



同時に、私は超スピードで4人の所まで行き、強引に抱き抱えて元の場所に戻った。






「な、何が起こったんだ!!」


「分かるはずないでしょう。なぜ、部下が死に、サキュバスがあいつの元へ」




魔王達には私の一連の動きが見えておらず、あからさまに狼狽え始めた。




「こうなれば、全員攻撃です。さすがのあなたも1万もの魔族を相手にできないでしょう?」





エストは無気味に笑うと、右手を高々と上げ、一気に振り下ろした。




その合図の瞬間、上空にいた1万の魔族がこちらに向かって一斉に動き始めた。





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