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第133話 ヒナ•カースト





「ヒナ!!ヒナ!!」



私が見守る中、魔法の練習をしていたヒナが突如苦しみ出した。

その場に両膝をついて、体は震え、額からは大量の汗を掻き、頭を抱えている。




「ヒナ!!私のこと分かる!?マリーだよ!!」



呼び掛けにもヒナは反応せず、何かを呟いている。





カースト•••

カースト•••

カースト•••

カースト•••





「カースト?」




ヒナは呟きながら先ほどより激しく体を震わせる。






ガサッ



その時、タイミング悪く茂みの奥から魔物が10体現れた。



「タイガーフィアス(A)。こんな時に•••」




タイガーフィアスは、1列で隊列を組んでこちらに進んでくる。

木々が鬱蒼とし、狭い道幅しかないため今は1列で隊列を組んでいるが、私とヒナがいる場所は開けている。


開けた場所に出た瞬間、きっと、一斉に取り囲んで攻めてくるだろう。



大した相手ではないが、ヒナもいるし、1列でいる今がチャンスなのは間違いない。





「ヒナ、辛いかもしれないけど、少しの間だけここから動かないでね」





カースト•••

カースト•••

カースト•••

カースト•••





ヒナはまだ同じ言葉を呟いている。

カーストって、あのカースト?


私は考えつつ右手に魔力を込める。








「お母様ーーーーーー!!」




私が魔法を放とうとした瞬間、ヒナが叫び、その場に立ち上がった。

ヒナの体からは黄金色の魔力が溢れ出し、全身を覆っている。





「ゆ、許さない!!」




ヒナはタイガーフィアスに向けて、両手の指で三角形を作った。






『ヒナ•カースト』






ヒナが唱えた瞬間、手で作られた小さな三角から数十メートルの大きさに拡大した三角の光の魔力が放たれた。


三角の光は、体調3メートルはあるタイガーフィアスを次々と塵に変えていき、あっという間に10体全てを消し去った。





同時にヒナはその場に倒れた。

気を失っている。




『探知スキル』を使って確認すると、MPが0に近い状態だった。

急激な魔力消費、もしくはレベルアップによって気を失ったのかもしれない。





▪️ヒナ

Lv:9 → Lv:44

HP:150 → HP:865

MP:4(550)→ MP:4(2,662)







私はヒナを抱き上げると、『転移スキル』でガーネットのユキに転移した。


扉の前に転移すると、直ぐに状況を察したユキが扉を開けてくれる。




「お帰りなさい、マリーちゃ•••」


「マリー様、お帰りな•••」




リビングにいたアイリスさんとラーラが話しかけてくるが、ヒナをお姫様抱っこしている状態を見て言葉を止める。


私は極力揺らさないよう2階にある私の寝室に一直線に向かった。



寝室に着くとヒナをベッドに寝かせ、地球の文明をフルに使う。

家に備え付けられていた救急箱から体温計を取り出し熱を測り、少し体温が高いと分かると『熱冷ましシート』を額に貼る。



基本的には急激な魔力消費、レベルアップが原因だろうから、一先ずはこれで大丈夫だろう。



私は大きな息を一つ吐くと、ベッドの横に椅子を持ってきて座った。


寝室の扉の隙間から、アイリスさんとラーラ、幼女姿のユキとサクラがこちらを覗いている。





「もう大丈夫」


「よかったわ。何があったか分からないけれど、ヒナちゃんがグッタリとして運ばれてるんですもの心配したわよ」



アイリスさんの言葉に、ラーラとユキが激しく頷いて同意すると、サクラも「ピー」と儚げに鳴いた。






「何があったのじゃ?」


「マリー、一体どうしたのよ?」



出掛けていたユーティフル様とシンも何かを察知したのかタイミングよく帰って来た。



私は先程の出来事をみんなに説明した。

もちろん、仕事中のナーラ、サーラ、アイラ、アリサにも戻り次第、説明する。





「それはきっと、過去を思い出したのね」


「そうじゃのー」



シンとユーティフル様は、悲しげな表情を浮かべる。





ヒナは神々に【愛されし者】



ユーティフル様もシンもヒナの事が気になり、レコード操作ができる悪神の眩耀神様に過去の事を聞いたそうだ。



ヒナが過去で経験したのは、イオセシルが実の母親であるヒミリナを馬車ごと崖に突き落としたこと、それをヒナ自身が見ていたという壮絶且つ悲壮なものだった。





イオセシルは、既に私の手によって殺されている。


神のお告げを貰っていたイオセシルは、二度と生を受けること、転生することはない。




それでもまだ苛立ちが収まらない。




第三者の私がこんなに感情が昂っているのだから、当事者のヒナはもっと辛いよね。





私は眠るヒナな頭を優しく撫でる。




「お、お母様•••」



ヒナは意識を失ったまま呟くと、瞳からは涙が溢れた。



私は今にも自分の目から溢れそうな涙を堪え、ヒナの頭を優しく撫で続けた。







しばらくしてヒナの涙は止まり、可愛いらしい寝息が始まった。


私はみんなにヒナのことをお願いすると、1階のキッチンに向かった。

目覚め時のために、美味しい物を作ろう。



キッチンに立つと、自然とダイニングテーブルが目に入る。




ヒナを初めて家に連れてきた時、痩せ細った体で、ここで卵粥を食べて、それから、泣きながらポテトチップスを食べたんだよね。





それまで、草とか、スープを食べて生きて来たヒナ•••





この家に来てから、本当に食いしん坊になったね。





先程堪えたはずなのに、私の目から涙が溢れる。





私は涙を拭うと、ヒナの大好物をたくさん作った。







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