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第132話 ヒナの過去






▷▷▷▷ヒナ◁◁◁◁







私の名前はヒナ。



バスタードという元Bランクパーティーから理不尽に追放された時、マリーに助けてもらった。



私には【愛されし者】というスキルがあり、対象者のステータスを2倍にする代わりに、一時的に声を失う。


一時的なので声は戻るが、代償として普段の話し方は辿々しくなってしまう。




「ま、マリー、今日も、練習に付き合ってくれて、ありがと」


「全然。可愛いヒナと一緒にいれるなんて最高のご褒美だよ」




辿々しく話す私に、マリーは最後まで話を聞いてくれて、優しい笑顔を向けてくれる。

そんなマリーが、私は大好き。



今日も魔法の練習をするため、ガーネットの近隣にある森に来ている。



マリーは、魔法を発動するには感情が大事だと教えてくれた。

昨日、この森に来た際、怪我をした冒険者を見て、私は無意識に『助けたい』と思った。



すると、手から温かい光が溢れ出して、頭の中に『ヒナ•ヒール』の言葉が浮かんだ。


頭に浮かんだままの言葉を唱えると、温かい光が私から冒険者の女性に移動した。




生まれて初めて、魔法を発動して誰かを助けた瞬間。



きっと、一生忘れないと思う。





あれから回復魔法はいつでも発動できるようになった。



今、練習しているのは攻撃魔法。



どうしても発動の感情が分からず、一度も成功していない。




マリーが攻撃魔法を発動する際の感情を聞いたら、過去の辛い出来事を思い出して、それを形にすると言っていた。




それを聞いて、私も過去を思い出そうするけど、その瞬間に激しい頭痛が襲いかかる。



これは昔からだ。



お父様は、私が生まれた時には亡くなっていたのを覚えている。

私はお母様に育てられたのだけど、詳しく思い出そうとすると頭痛がするのだ。



過去を思い出したい気持ちと、攻撃魔法を覚えてマリーに喜んでもらいたい気持ちが私の中に押し寄せる。






何か、方法はないかな•••





頭痛


治す


ヒール





そうだ!!

頭痛がした瞬間に『ヒナ•ヒール』をすれば痛みが無くなるのでは??



私はマリーが見守ってくれている中、過去に退行し、お母様の事を思い出す。





ズキーーーーン





いつも通り、頭が割れそうな程の鋭い痛みが襲いかかる。





『ヒナ•ヒール』





痛みに耐えながら自分自身にヒールを掛けると、温かな心地よい気持ちが広がり、徐々に痛みが消えていった。






痛みが完全に消えた瞬間、記憶に蓋をしていた重たい扉が開いたように一気に場面が切り替わった。











「ヒナ、いつもお手伝いありがとう」


「うん!!」



綺麗な手で私の頭を優しく撫でてくれる。




「ヒミリナ神官長。こちらの書類の確認もお願いします」


「分かったわ」







ヒミリナ•••



お母様の名前だ•••


私のお母様だ•••








場面が瞬時に切り割った。



場面は、シンプリースト共和国内の貧しい村に向かう途中の馬車の中だった。





「ヒミリナめ。女の癖に生意気だ」

「イオセシル様?」

「タスク、神のお告げだ。ヒミリナは神官長に相応しくない。始末する」

「な、本気ですか!?」


「本気だよ。神のお告げがそう言ってるんだ。殺せと」

「は、はい•••」


「カースト最上位、トップは僕ちんでなければ。あのクソアマではない!!」




私は馬車の荷車部分にあった木箱でその会話を聞いていた。

移動の休憩中、お母様とかくれんぼをしていて、たまたま木箱に隠れたんだ。



隠れた後に男2人が入ってきて会話を始めた。



恐怖から身体中が震えていた。




「少し先に崖がある。あそこにある馬車をヒミリナに追突させて落とせ」

「•••、しかし•••、やはり」



ドガッ



「僕ちん役立たずは嫌いだよ。もういい。僕ちんがやる」



男が馬車から出て行く。





止めなきゃ



止めなきゃ





私は震える体を無理矢理動かし、木箱から出た。

馬車に残っていた男は殴られたのか、気を失っている。




急いで馬車の外に出る。





男が馬車に繋がれている馬にナイフを突き刺す。




痛みで我を忘れた馬は荷車ごとお母様に追突した。


お母様は追突され、流血をしながらも逃げようともがくが、荷車部分に巻き込まれ、そのまま崖下へ落ちた。






私はその場で力無く両膝をついた。








「お母様ーーーーーー!!」








次に目を覚ました瞬間、私は知らない場所にいた。


今思えば、あの男に捨てられたのだろう。






記憶を失った私は彷徨い続け、バスタードと出会ったんだ•••





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