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第131話 ヒナ•ヒール




神々との飲み会から数日、私は執務の落ち着いたヒナを連れ出し、ガーネットの街から少し離れた森に来ていた。


ヒナな執務と言うのは、ガーネットの街の領主、アイリスさんの手伝いだ。

主な内容は親書の返事を書くことだが、最近では財務面も手伝っているらしい。


アイリスさん曰く、ヒナの年齢でここまで理解力が高いのは、きちんとした教育を受けていたか、以前、どこかで同じような業務を行なっていた可能性が高いと言うことだった。




因みに、ヒナの年齢だが、本人も把握していなかったため、見た目から過去の話から判断して10〜12歳だと推察している。


それと、過去の話については、物心ついた時に父親は既に他界していたことは憶えているが、母親のことは憶えていないらしい。


憶えていないというよりは、思い出そうとすると激しい頭痛に襲われるそうだ。



身長140センチ程のこの小さな体は、どんな過去を生きてきたのだろう。






「ま、マリー、ど、どうした?」



私の視線に気づき、ヒナが首を傾げる。

思わず考え込み、ヒナのその可愛いお顔を凝視してしまっていた。



「何でもないよ。それでは、魔法の訓練を始めようか」


「う、うん」




私は『探知スキル』を使って、改めてヒナのステータスを確認する。





▪️ヒナ

Lv:9

HP:150

MP:550





以前確認した通り、やはりMPが存在している。

MPは魔法を発動する際のエネルギーのようなもので、この世界の人にはMPが無い。


MPがあるヒナは、魔法が使えると言うことだ。




「ヒナは聖属性の魔法が使えるんだよね。回復と攻撃、1つづつは憶えたいよね」


「ま、マリーみたいに、ま、魔法、使えるの?


「きっと、使えるよー」


「う、うれしい」



ヒナは笑顔で私の手を握ってくる。




うん

天使や


この子、天使や




「ど、どうやる?」

「う〜ん。なんかこう、体に魔力を集めて•••」




私は気付いてしまった•••

魔法が発動する原理が分からないことを•••



私のイメージでは、魔法の発動は感情に左右されると思っている。


しかし、昔のことを思い出し、苛立ちのまま攻撃魔法を発動する、そんなことをヒナに教えていいのだろうか?




ユーティフル様もシンも、魔法を練習したのは数億年前で憶えていないと言っていたし、どうしたものか•••







「た、助けてくれぇぇぇーー」

「ビックウルフ(C)よーー!!」



考えていると、森の奥から男女の冒険者と思われる2人が5匹程のビックウルフ(C)に追いかけられ、こちらに向かって走ってくるのが見えた。





アタミ(極小)





私は右手の5本指から魔法の光線を放つと、ビックウルフ5匹の頭部を貫いた。





「す、すごい•••」


「はぁはぁはぁ、た、助かったーー」

「あ、ありがとうございま•••」



女性冒険者が私を見て固まった。

目には涙が溜まり、今にも流れそうになっている。


その状況に男性冒険者も何かに気づいたように驚愕の顔をして、首を静かに左右に振っている。




「ま、マリー•アントワネット様、ですよね?」

「あ、あなたが大聖女様の•••」


「は、はい•••」



2人の冒険者は手を取り、憚らずにその場で泣き始めた。



「まさか、ご本人様に会えるなんて•••」


「ああ、一生の思い出だ•••」




泣きながら話す2人を見ていると、女性の足から血が流れているのに気づいた。



「怪我してるじゃない」


「え、ええ、ビックウルフの爪で•••。けど、マリー様に会えたのですから、この位の怪我なんてことありません」


「駄目だよ。女の子なんだし。そうだ、ヒナ」



私はヒナを近くに呼び、後ろから抱き締めるような体勢で手を取り、自身の手に魔法を流した。



「あ、温かい•••」


「いい?これが魔法。魔法は感情が大事なの。この人を治したいって、心から思ってみて」


「う、うん」


「感情が形になった時、自然と自分だけの魔法になって発動されるから」




ヒナの手に魔力が流れているのを感じた。


綺麗な魔力•••

私の手に流れ込む魔力を感じてそう思った。





「ヒナ•ヒール」



ヒナが唱えると、優しい光が手から溢れ出し、女性の足を包み込んだ。

光が収まると、傷口は綺麗に塞がり、傷跡も残っていなかった。




「ヒナー、成功だよーー!!」


「う、うん」


「傷が•••」

「す、凄い•••」



女性はヒナの手を握り、頭を下げてきた。



「ありがとうございます」


「あ、う、う、うん」



ヒナは顔を真っ赤にしながら返事をする。


初めて自分の魔法で誰かを助けた瞬間、きっと一生忘れないだろうな。


私はヒナの頭を優しく撫でた。





落ち着いてから2人の冒険者に話を聞いたところ、ガーネットにある『マリー•ランド』に向かう途中にビックウルフに襲われたということだった。


私は安全にガーネットまで行けるよう『結界スキル』を2人にかけ、道中のおやつ用にシュークリームを渡し、お別れをした。




握手やらサインやらいっぱい求められたけど、久々に温かい気持ちになったよ。





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