第130話 本当に久々な幸福度ランキング発表
シンプリースト共和国の陰謀を食い止めたその日の深夜、久々となる神々との飲み会を開催することになった。
今となっては私も神なんだけど、小さなことは気にしない。
メンバーは、ユーティフル様、シン、ユキ、私の4人だ。
他のみんなは夕飯にご馳走を振る舞ってあげたので、今頃大人しく寝てるはず。
「それでは、乾杯なのじゃー」
「「「かんぱーい」」」
ユーティフル様がビール片手に乾杯の宣言をし、他の3人が続く。
ユーティフル様、シン、ユキは物凄い勢いでビールジョッキを空にすると、自らお代わりを注いでいる。
普段からここにいる私以外のメンバーとラーラ達やアイリスさんはビールをたくさん飲むため、リビングに200ℓのビールタンクを常設することにした。
もちろん、『地球物品創生スキル』で200ℓタンクが仕舞える冷蔵庫も用意。
いつでも冷え冷えのビールが飲めると、みんな喜んでおりますよ。
ええ
それはもう、大層
私が蘇った時より喜んでいるんじゃないかと思うほどに•••
「それで、今日は何か話があるんでしょ?」
ユキが新作おつまみの『肉豆腐』を食べながらシンの方を見る。
「そうなのよ。随分、久々になってしまったけれど」
シンはそこまで話すと、空中にモニターを表示させた。
《Z5062星》
幸福度第106,217位(前回)
↓
幸福度第90,075位(16,142位UP)
「おめでとうー。世界の幸福度ランキング、ランクアップよー」
モニターにランキングを表示させ、シンが拍手しながら言う。
「おおー、なかなか良い上がりだのー」
「う〜ん」
ユーティフル様の言葉に、ユキが首を傾げながら唸っている。
「幼女よ、どうしたのじゃ?」
「いやー、なんか、上がりが少ない様な気がして•••」
「そうかのー?」
「この大陸の治安、大分良くなってるし、魔王国とも仲良くやってるしさー」
私はこの大陸の全ての国を訪れて何かをした訳ではないが、アルビオルのヘロニモの件は、間接的に多くの国が救われたと聞いたし、魔王国2カ国の件を考えると、確かにユキの言う通り上がり幅が少ない気もしてしまう。
「文明レベルの差も大きいでしょうけど、別大陸の影響もあるかもしれないわね」
シンは泡と液体が半分に注がれた、要は注ぐのに失敗したビールジョッキを持ちながら言った。
「フローレンスが住んでたヴェランデゥリング王国とかってこと?」
「そうよ。まだ足を踏み入れてない大陸にはそれなりの人口があるから、どうしてもね」
「別大陸か•••」
シンとユキの会話を聞いて、私は自然と言葉にしていた。
「あのガラスの世界って、かなりの距離続いてるよね?」
「そうね。数百キロはあるわね」
「悪神の障壁って、数百キロ持つかな?」
「大丈夫だと思うけど、悪神様になったことがないから何とも分からないわね」
「そうじゃのー」
最近、フローレンスのことを考える機会が増えている。
本人は僅か数日でこの大陸の言葉を憶え、毎日、神盤警備の仕事を真面目にやってくれていて、稼いだお金で楽しそうに買い物をしている。
ただ、ふとした時、寂しそうな顔をする。
故郷にいる家族達のことを思い出しているのだと思う。
フローレンスにとって、何が1番いいのだろうか。
ヴェランデゥリング王国に帰す、もしくはヴェランデゥリング大陸は生物が住むには厳しい環境のため、この大陸か別の大陸に移住させる。
どちらにしても、肝になるのが『ガラスの世界』だ。
悪神といっても不死な訳ではなく、人間同様死ぬ時は死ぬ。
『ガラスの世界』に耐えられなかった時、私は死ぬことになる。
どこまで耐えられるのか実験することもできないし、難しい問題だ。
「あれだけの自然現象だから止め方も分からんの」
「アセルピシアが現れると止まることは分かっているんだけどね」
「まあー、現時点では難しそうね」
3人は少し離れたビールタンクの所で列を作りながら、私に聞こえるように少し大きな声で言う。
「そう言えば、ヒナちゃんのことなんだけど」
先頭で戻ってきたシンが席に座るとヒナを話題にしてきた。
「ヒナがどうかしたの?」
「あの子、シンプリースト共和国の生まれよ」
「えっ!?」
「前世までで相当な徳を積んでいて、今世では聖女になる予定だったのよ」
「そうなの?」
ヒナは《愛されし者》のスキルを持ち、この世界で、私以外で唯一、MPを持っている存在。
そのことが気になって、眩耀神様に確認したそうだ。
「もしかして、私と出会った所為でレコードが変わっちゃったの?」
「いいえ。ヒナちゃんは複数レコード持ちだったのよ。《神のお告げ》のイオセシルとは違って、良い意味でね」
「選択次第で未来が変わる的な?」
いつの間にかビールを注いで戻ってきたユキが横から聞いてくる。
「ええ。簡単な話、神候補ね」
「もしかして、《愛されし者》って、神に愛されてるって意味?」
「正解なのじゃ」
ユーティフル様も戻ってきて、笑顔でテヘペロをしながら答える。
うん
相変わらず酷い顔だ
「ねー、マリー。ヒナちゃんに魔法を教えてあげてくれない?」
シンは少し真面目な顔になり、私に言ってきた。




